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第23話
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「こ、皇帝…!?!?」
「そ、そんなまさか…」
ついさっきまで高圧的だった二人が、蛇に睨まれた蛙のように震えて固まってしまっている。長い間一緒に過ごしてきたけれど、こんな二人を見るのは初めてであったので、かなり新鮮な気持ちだった。
「ち、父親が皇帝という事は…あなたは…」
恐る恐る、といった口調で、エリーゼがシュルツに言葉を投げる。彼はもはや二人を憐れむような表情で、しかし毅然とした表情をもって、その言葉にこたえた。
「私は帝国皇帝たる父、クリティウスの息子です。すなわち、」
「世間で言うところの、皇太子だな。胸元に輝く赤いブローチこそ、帝国皇太子たる証拠」
ジルクさんもまた、毅然とした表情で二人に向けそう言った。
「…!?!?!?!?」
それを聞いた途端、それまで固まっていたエリーゼがシュルツの前へと歩み寄る。ジルクさんが一瞬間に入ろうとしたが、それをシュルツは手で制止した。
「皇太子さまぁ♡あんな女なんかより、私を選んでは下さいませんかぁ♡」
…私は目をそらし、その地獄のような光景を見ないように努める。恥ずかしくはないのか、この女は…。この場にいるだけで吐き出してしまいそうなほど気持ちの悪い声で、シュルツに言い寄るエリーゼ。彼の右腕に抱き着き、その豊満な胸を腕に押し付けている。
「…君を選んだら、君は私に何をしてくれるというのだい?」
「うふふ。あんな女のような貧相なお体では、お若い皇太子さまは満足できませんでしょう?私を選んでいただけたら、この私の体の全てを皇太子さまにささげますわぁ♡」
「ほぅ、なるほど。それはなかなか魅力的な提案ですね」
「そうでございましょう?皇太子さまが望まれるなら、どのような行為であっても私は受け入れられますわぁ♡」
その下品なエリーゼの言葉と行為の前に、吐き気を催した私はもう立ち去ってしまおうかとも考えた時、シュルツが低い声でエリーゼに告げた。
「さて……もう、満足ですか?」
「!?!?」
どこか様子が変わったシュルツの姿の前に、エリーゼは凍り付く。そんな彼女に対し、シュルツは低い口調で言葉を続ける。
「…こんなことで、私の気が変わるとでも?…あなたの下品さがうつってしまうので、離れて頂けませんかね?」
「っ!?!?!?」
私は顔を上げ、二人の表情を見る。シュルツは心の底から汚いものを見るような表情を、エリーゼは全く現実が受け入れられないような表情を、それぞれ浮かべていた。エリーゼの後ろでは公爵もまた、彼女と同じ表情を浮かべていた。そんな皆の表情を見て、ジルクさんが口を開く。
「…ソフィアのから聞いてはいたが、まさかここまでとは…」
それに返答するように、シュルツが続く。
「…全くだ。元婚約者ではあっても、お二人はかつてソフィアと家族だった仲。だからこそ良い関係を築けるのではないかと期待していたが…本当に残念だ」
「っ!?!?」
「っ!?!?」
弾丸で体を貫かれたような、そんな表情を浮かべる二人。…まあ無理もない。きっと二人はこれまで、手に入らなかったものなんてひとつもなかったのだろうから。
エリーゼはプルプルと体を震わせながら、低い声で言った。
「…ああそうですか。皇太子さまのお気持ちはよく分かりました。…私を選ばなかった事、後から後悔しても知りませんわよ?」
エリーゼはそう吐き捨て、公爵を連れて屋敷から逃げるように飛び出ていった。彼女が一体何を企んでいるのかはわからないけれど、このまま黙って引き下がるような女じゃない事はよく知っている。私はこれまでの経験から、どこか妙な胸騒ぎを感じていた。
けれど今だけは、悔しい顔で逃げ出していった2人の姿を痛快に感じずにはいられなかった♪
「そ、そんなまさか…」
ついさっきまで高圧的だった二人が、蛇に睨まれた蛙のように震えて固まってしまっている。長い間一緒に過ごしてきたけれど、こんな二人を見るのは初めてであったので、かなり新鮮な気持ちだった。
「ち、父親が皇帝という事は…あなたは…」
恐る恐る、といった口調で、エリーゼがシュルツに言葉を投げる。彼はもはや二人を憐れむような表情で、しかし毅然とした表情をもって、その言葉にこたえた。
「私は帝国皇帝たる父、クリティウスの息子です。すなわち、」
「世間で言うところの、皇太子だな。胸元に輝く赤いブローチこそ、帝国皇太子たる証拠」
ジルクさんもまた、毅然とした表情で二人に向けそう言った。
「…!?!?!?!?」
それを聞いた途端、それまで固まっていたエリーゼがシュルツの前へと歩み寄る。ジルクさんが一瞬間に入ろうとしたが、それをシュルツは手で制止した。
「皇太子さまぁ♡あんな女なんかより、私を選んでは下さいませんかぁ♡」
…私は目をそらし、その地獄のような光景を見ないように努める。恥ずかしくはないのか、この女は…。この場にいるだけで吐き出してしまいそうなほど気持ちの悪い声で、シュルツに言い寄るエリーゼ。彼の右腕に抱き着き、その豊満な胸を腕に押し付けている。
「…君を選んだら、君は私に何をしてくれるというのだい?」
「うふふ。あんな女のような貧相なお体では、お若い皇太子さまは満足できませんでしょう?私を選んでいただけたら、この私の体の全てを皇太子さまにささげますわぁ♡」
「ほぅ、なるほど。それはなかなか魅力的な提案ですね」
「そうでございましょう?皇太子さまが望まれるなら、どのような行為であっても私は受け入れられますわぁ♡」
その下品なエリーゼの言葉と行為の前に、吐き気を催した私はもう立ち去ってしまおうかとも考えた時、シュルツが低い声でエリーゼに告げた。
「さて……もう、満足ですか?」
「!?!?」
どこか様子が変わったシュルツの姿の前に、エリーゼは凍り付く。そんな彼女に対し、シュルツは低い口調で言葉を続ける。
「…こんなことで、私の気が変わるとでも?…あなたの下品さがうつってしまうので、離れて頂けませんかね?」
「っ!?!?!?」
私は顔を上げ、二人の表情を見る。シュルツは心の底から汚いものを見るような表情を、エリーゼは全く現実が受け入れられないような表情を、それぞれ浮かべていた。エリーゼの後ろでは公爵もまた、彼女と同じ表情を浮かべていた。そんな皆の表情を見て、ジルクさんが口を開く。
「…ソフィアのから聞いてはいたが、まさかここまでとは…」
それに返答するように、シュルツが続く。
「…全くだ。元婚約者ではあっても、お二人はかつてソフィアと家族だった仲。だからこそ良い関係を築けるのではないかと期待していたが…本当に残念だ」
「っ!?!?」
「っ!?!?」
弾丸で体を貫かれたような、そんな表情を浮かべる二人。…まあ無理もない。きっと二人はこれまで、手に入らなかったものなんてひとつもなかったのだろうから。
エリーゼはプルプルと体を震わせながら、低い声で言った。
「…ああそうですか。皇太子さまのお気持ちはよく分かりました。…私を選ばなかった事、後から後悔しても知りませんわよ?」
エリーゼはそう吐き捨て、公爵を連れて屋敷から逃げるように飛び出ていった。彼女が一体何を企んでいるのかはわからないけれど、このまま黙って引き下がるような女じゃない事はよく知っている。私はこれまでの経験から、どこか妙な胸騒ぎを感じていた。
けれど今だけは、悔しい顔で逃げ出していった2人の姿を痛快に感じずにはいられなかった♪
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