9 / 67
第9話
しおりを挟む
「もう少し歩いたところに、馬を用意してございます」
「ありがとう、ターナー」
これで、伯爵家まで歩いて行かずに済む。彼の用意周到さには頭が上がらない。これまでも、何度も彼に助けられた。
私たちは夜道を歩きながら、改めて作戦会議を始める。これから会いに向かう、シガー伯爵についてだ。
「シガー伯爵のご令嬢、ルリア様はエリーゼ様の根回しにより、無実の罪で殺されました…。表向きは自殺となっていますが、実質的に手を下したのは公爵の手の者でしょう。おそらく原因は…」
「ええ。エリーゼがルリアさんの陰口を公爵に吹き込んだ。それを知ったルリアさんがエリーゼに抗議して、逆恨みしたエリーゼは公爵に泣きつき、逆上した公爵によって事件が引き起こされた、と」
彼は無言でうなずき、私に同意した。
「シガー伯爵もまた、公爵とエリーゼを恨んでいるはず。公爵家を失墜させるために、あらゆる情報を集めていると思うの」
「はい。私もそう思っております」
会って話してみないことにはまだはっきりはしないけれど、伯爵が何か掴んでいるのなら、私たちもまた彼の力になることができるはず。
「問題は、伯爵が私たちを信用してくださるかどうか、でございますね」
「ええ」
やはり、それが問題だ。いくら私たちが彼に協力したいと申し出ても、彼から見れば私たちは娘の仇の婚約者とその使用人だ。容易に信用してもらえるとは思えない…。
「…なにかお考えが?」
私の顔を見たターナーが、私にそう聞いた。どうやら考えが顔に出てしまっていたらしい。実は私の頭には、一つの交渉術が浮かんでいた。
「私たちの顔は伯爵も知ってる。婚約の時の周辺貴族への挨拶の時に会ったからね。公爵との婚約が無しになって、あなたと一緒に公爵を失墜させたいと言っても、信じてもらえないかもしれない」
ターナーは、その通りですといった表情だ。
「だから、1人の証人についてきてもらうの。他でもない、婚約の破棄が決まったと伯爵に納得させられるだけの人にね♪」
「そんな方、どちらに?」
ターナーがそう言ったところで、私たちは馬を待たせていた場所につき、馬に跨る。その時、私たちの馬のものではない足音が聞こえてくる。
「まさか…あれは…」
「ええ、そのまさか」
他でもない、公爵本人に証人になってもらおうじゃないか。
「ありがとう、ターナー」
これで、伯爵家まで歩いて行かずに済む。彼の用意周到さには頭が上がらない。これまでも、何度も彼に助けられた。
私たちは夜道を歩きながら、改めて作戦会議を始める。これから会いに向かう、シガー伯爵についてだ。
「シガー伯爵のご令嬢、ルリア様はエリーゼ様の根回しにより、無実の罪で殺されました…。表向きは自殺となっていますが、実質的に手を下したのは公爵の手の者でしょう。おそらく原因は…」
「ええ。エリーゼがルリアさんの陰口を公爵に吹き込んだ。それを知ったルリアさんがエリーゼに抗議して、逆恨みしたエリーゼは公爵に泣きつき、逆上した公爵によって事件が引き起こされた、と」
彼は無言でうなずき、私に同意した。
「シガー伯爵もまた、公爵とエリーゼを恨んでいるはず。公爵家を失墜させるために、あらゆる情報を集めていると思うの」
「はい。私もそう思っております」
会って話してみないことにはまだはっきりはしないけれど、伯爵が何か掴んでいるのなら、私たちもまた彼の力になることができるはず。
「問題は、伯爵が私たちを信用してくださるかどうか、でございますね」
「ええ」
やはり、それが問題だ。いくら私たちが彼に協力したいと申し出ても、彼から見れば私たちは娘の仇の婚約者とその使用人だ。容易に信用してもらえるとは思えない…。
「…なにかお考えが?」
私の顔を見たターナーが、私にそう聞いた。どうやら考えが顔に出てしまっていたらしい。実は私の頭には、一つの交渉術が浮かんでいた。
「私たちの顔は伯爵も知ってる。婚約の時の周辺貴族への挨拶の時に会ったからね。公爵との婚約が無しになって、あなたと一緒に公爵を失墜させたいと言っても、信じてもらえないかもしれない」
ターナーは、その通りですといった表情だ。
「だから、1人の証人についてきてもらうの。他でもない、婚約の破棄が決まったと伯爵に納得させられるだけの人にね♪」
「そんな方、どちらに?」
ターナーがそう言ったところで、私たちは馬を待たせていた場所につき、馬に跨る。その時、私たちの馬のものではない足音が聞こえてくる。
「まさか…あれは…」
「ええ、そのまさか」
他でもない、公爵本人に証人になってもらおうじゃないか。
106
お気に入りに追加
1,522
あなたにおすすめの小説
玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~
キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。
事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。
イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる
どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。
当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。
どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。
そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。
報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。
こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる