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第5話
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「改めて申し上げます。私はこの婚約破棄、受け入れることはできません」
私はそう公爵に告げ、そのまま部屋を後にする。彼から言葉での返事はなかったものの、殺意と悔しさに満ちたあの表情が、返事の代わりだった。私は自分でも信じられないほど痛快な思いに心躍らせながら、もう1人の部屋へ向かう。真に宣戦布告を告げなければならない相手は、もう1人の方なのだから。
私は廊下を歩きながら、改めて自分自身を冷静に分析することとした。自分でも、どうしてあんな強気な行動ができたのか、分からないからだ。私は昔から内気な性格で、口喧嘩だってからっきしだった。戦うことはおろか、つい数時間前まで、ここから逃げ出したいとばかり考えていた。そんな私が公爵にあんな風に言い返す事ができたのは、どうしてなんだろうか…?公爵に婚約破棄を告げられた途端、身体中から力が湧き上がる感覚があった。頭の回転も早くなって、以前の私と本当に別人のよう。
…そこまで考えた時、私はある可能性をひらめいた。もしかしたら、今の私こそが本当の私なんじゃないだろうか、と。
相手の機嫌を損ねないよう常に気を遣って、そのためには自分の想いや感情を押し殺して生きてきた。自分が理不尽な扱いを受けようとも、私一人がその運命を受け入れるだけで周りの人々が幸せになれるのなら、それでもかまわないとさえ思ってきた。どんな形でも、私に役割があると思えるだけでうれしかったから…
けれど、今の私は違う。あれほど公爵に強く当たったからか、今までの弱気な自分はすっかり鳴りを潜めている。せっかくこうして生きているのだから、私だって自分のために生きたい。幸せになりたい。理不尽な事を言われたなら、それと同じ思いを相手にも返してやりたい。
ならば、私のやることは決まっている。私が受けてきた苦しみを、きっちり公爵にお返しして差し上げなければ。そしてその後はエリーゼだ。彼女に痛めつけられてきたのは私だけじゃない。周辺貴族はもとより、なによりもシガー伯爵とその令嬢の仇を、私は打たなければならない。
私は改めて戦う決意をし、エリーゼの部屋の扉の前に立つ。ノックをして彼女からの返事を確認し、足を踏み入れた。いざ、宣戦布告の時だ。
私はそう公爵に告げ、そのまま部屋を後にする。彼から言葉での返事はなかったものの、殺意と悔しさに満ちたあの表情が、返事の代わりだった。私は自分でも信じられないほど痛快な思いに心躍らせながら、もう1人の部屋へ向かう。真に宣戦布告を告げなければならない相手は、もう1人の方なのだから。
私は廊下を歩きながら、改めて自分自身を冷静に分析することとした。自分でも、どうしてあんな強気な行動ができたのか、分からないからだ。私は昔から内気な性格で、口喧嘩だってからっきしだった。戦うことはおろか、つい数時間前まで、ここから逃げ出したいとばかり考えていた。そんな私が公爵にあんな風に言い返す事ができたのは、どうしてなんだろうか…?公爵に婚約破棄を告げられた途端、身体中から力が湧き上がる感覚があった。頭の回転も早くなって、以前の私と本当に別人のよう。
…そこまで考えた時、私はある可能性をひらめいた。もしかしたら、今の私こそが本当の私なんじゃないだろうか、と。
相手の機嫌を損ねないよう常に気を遣って、そのためには自分の想いや感情を押し殺して生きてきた。自分が理不尽な扱いを受けようとも、私一人がその運命を受け入れるだけで周りの人々が幸せになれるのなら、それでもかまわないとさえ思ってきた。どんな形でも、私に役割があると思えるだけでうれしかったから…
けれど、今の私は違う。あれほど公爵に強く当たったからか、今までの弱気な自分はすっかり鳴りを潜めている。せっかくこうして生きているのだから、私だって自分のために生きたい。幸せになりたい。理不尽な事を言われたなら、それと同じ思いを相手にも返してやりたい。
ならば、私のやることは決まっている。私が受けてきた苦しみを、きっちり公爵にお返しして差し上げなければ。そしてその後はエリーゼだ。彼女に痛めつけられてきたのは私だけじゃない。周辺貴族はもとより、なによりもシガー伯爵とその令嬢の仇を、私は打たなければならない。
私は改めて戦う決意をし、エリーゼの部屋の扉の前に立つ。ノックをして彼女からの返事を確認し、足を踏み入れた。いざ、宣戦布告の時だ。
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