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第93話
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「もう遅い……!」
体を震わせながらそう言葉を発するライオネル。…もう遅いとは、どういう意味なのか。アーロンがライオネルに対して問いかけた。
「…ライオネル様、それはどういうことですか?…まさかとは思いますが、もうすでにラルク様の身に危険が及んでいるなんてことはないでしょうね…」
「っ!?!?」
アーロンの言葉を聞いて、シャルナはその心をドキッと震わせる…。
「ほ、本当なのですか、ライオネル様…?う、うそですよね?ラ、ラルク様は…ご無事なのですよね…?」
シャルナは震える口調でそう言葉を発した。ラルクの無事を心から願う彼女であったものの、ライオネルの口から返された言葉はそれを否定するものだった…。
「…もうすでに、あの男を抹殺するべく、私の息のかかった騎士を送った…。今頃はもう、その計画を遂行している頃だろう…」
――――
それは、さかのぼること数日前。ライオネルがカタリーナ家に対して手紙を送った時の出来事だった。
「…ラルクを抹殺することでシャルナの心を痛めつけ、弱ったところを我がクライムの婚約者とする。どうだ?完璧な計画だろう?」
「さすがは上級伯爵様…♪。ラルクとて、まさか騎士である私に消されることになろうとは思ってもいないことでしょう…♪」
ライオネルの部屋では、二人の男が会話をしていた。一方はもちろんライオネル、そしてもう一方は騎士団所属の騎士、トレイクだった。
二人はかねてから近しい存在にあり、ライオネルは度々トレイクから騎士団内部の情報を買い取っていた。過去に伯爵家が騎士団と親密な関係を築くことができたのも、この二人の暗躍によるところが大きかった。
「いやはやしかし、まさかこれほどのお金を積んでいただけるとは思ってもいませんでしたよ…。何の力も持たない男を一人処分するだけでこれだけもらえるのなら、いっそのことライオネル様に雇っていただきましょうかね♪」
「そうなるかどうかは、お前の働き次第というものだな♪」
「はっ。頑張ります」
そう、ライオネルはトレイクという騎士に裏金を渡し、ラルクの事を秘密裏に抹殺するよう仕向けていたのだった…。度重なる女遊びやギャンブルで負債を抱えていたトレイクはすんなりその申し出を受け入れ、今回もまた二人の協力関係は成立したのだった…。
――――
「な、なんてことを……!?」
「そ、そんな……!?」
その話をライオネルから打ち明けられたアーロンとシャルナは絶句し、言葉を失ってしまう。が、それをすんなりと受け入れる二人ではなかった。
「そ、そんな話私は信じません!!ラルク様は絶対に生きています!!ラルク様は……ラルク様はそんな簡単に私の前からいなくなられたりしません!!」
動揺こそしながらも、力強くそう言葉を発するシャルナ。それを受けてアーロンもまた、彼女に続いた。
「そ、そうだそうだ!ラルク殿は魔獣の大軍をたった一人で壊滅させたという伝説さえお持ちの方だ!!たとえ相手が騎士であろうと、この私の見込んだラルク殿がそんな簡単に負けることなどあるはずがない!!」
勢いをつけてライオネルに言葉を返す二人だったものの、ライオネルは静かな口調で二人に反論した。
「…お前たちだって本当は分かっているんだろう?この私が嘘をつくはずはないと。上級伯爵であるこの私がさし向けた刺客が、仕事を失敗などするはずがないと。それを認めたくないから、そんな大声をだして気持ちをごまかしているのだろう?」
「そんなことはありません!我々は心の底からそう確信しています!」
互いにすさまじい殺気を放ちながら、自分たちの考えをぶつけ合う。そこに付け入る隙は一切なく、まさに大きな権力を有する者同士にふさわしい光景と言えた。
…そしてそんな二人のもとに、カタリーナ家の使用人が足早に一つの知らせを持ち込んできた…。
「…き、緊急の知らせですアーロン様!騎士の城で、なにやら騒ぎがあったと知らせが…」
「っ!?!?」
…もたらされた知らせを聞いて、アーロンは背筋がさーっと冷たくなっていく感覚を覚える…。しかも知らせはそれにとどまらず…。
「…さらに話によれば、ラルク様が一人の騎士に剣を向けられ、城の中は大変なことになったと…」
「……」
…もたらされたたった一つの知らせ。しかしアーロンはそれによって先ほどまでの勢いを完全に失ってしまい、何か言葉を返すこともなくただただ立ち尽くしていた…。
そしてその横では、話を聞いていたシャルナが崩れるようにその場に倒れこみ、震える口調で言葉を漏らした。
「そ、そんな……わ、私がわがままを言ったから……。ラルク様、ラルク……様……」
…シャルナは体を震わせながら、その両目に涙をあふれさせる。その涙は頬を伝って床に落ち、一滴、また一滴と床を染めていく。
「…ごめんなさい……ごめんなさい……ラルク…様……ごめんなさい……」
…部屋の雰囲気は完全にシリアスに包まれ、ライオネルの主張が正しかったものと受け入れざるを得ないものになっていた。
…しかし、知らせをもたらした使用人の話はまだ途中だったようだが…。
「え、えっと…知らせによれば、結果はラルク様の圧…」
「そ、そうだそうだ!お前たちが早くからクライムとの婚約を受け入れていれば、こんなことにはならずに済んだじゃないか!ラルクを殺したのはお前たちの方じゃないか!!」
「(あらあら、あの男死んじゃったのね。まぁ食事会で私に恥をかかせるような存在価値のない男だったし、いっそ清々するわ♪)」
泣き崩れるシャルナ、その場で悔しそうに奥歯をかみしめるアーロン、そして勝利を確信するライオネルと、どこか上機嫌な様子のレリア。異様な光景が繰り広げられる中で、使用人はもう一度追加の知らせを口にした。
「え、えっと……行われた戦闘の結果は、ラルク様の圧勝だったそうで……」
「「……!?!?!?!?!?!?!??!?」」
体を震わせながらそう言葉を発するライオネル。…もう遅いとは、どういう意味なのか。アーロンがライオネルに対して問いかけた。
「…ライオネル様、それはどういうことですか?…まさかとは思いますが、もうすでにラルク様の身に危険が及んでいるなんてことはないでしょうね…」
「っ!?!?」
アーロンの言葉を聞いて、シャルナはその心をドキッと震わせる…。
「ほ、本当なのですか、ライオネル様…?う、うそですよね?ラ、ラルク様は…ご無事なのですよね…?」
シャルナは震える口調でそう言葉を発した。ラルクの無事を心から願う彼女であったものの、ライオネルの口から返された言葉はそれを否定するものだった…。
「…もうすでに、あの男を抹殺するべく、私の息のかかった騎士を送った…。今頃はもう、その計画を遂行している頃だろう…」
――――
それは、さかのぼること数日前。ライオネルがカタリーナ家に対して手紙を送った時の出来事だった。
「…ラルクを抹殺することでシャルナの心を痛めつけ、弱ったところを我がクライムの婚約者とする。どうだ?完璧な計画だろう?」
「さすがは上級伯爵様…♪。ラルクとて、まさか騎士である私に消されることになろうとは思ってもいないことでしょう…♪」
ライオネルの部屋では、二人の男が会話をしていた。一方はもちろんライオネル、そしてもう一方は騎士団所属の騎士、トレイクだった。
二人はかねてから近しい存在にあり、ライオネルは度々トレイクから騎士団内部の情報を買い取っていた。過去に伯爵家が騎士団と親密な関係を築くことができたのも、この二人の暗躍によるところが大きかった。
「いやはやしかし、まさかこれほどのお金を積んでいただけるとは思ってもいませんでしたよ…。何の力も持たない男を一人処分するだけでこれだけもらえるのなら、いっそのことライオネル様に雇っていただきましょうかね♪」
「そうなるかどうかは、お前の働き次第というものだな♪」
「はっ。頑張ります」
そう、ライオネルはトレイクという騎士に裏金を渡し、ラルクの事を秘密裏に抹殺するよう仕向けていたのだった…。度重なる女遊びやギャンブルで負債を抱えていたトレイクはすんなりその申し出を受け入れ、今回もまた二人の協力関係は成立したのだった…。
――――
「な、なんてことを……!?」
「そ、そんな……!?」
その話をライオネルから打ち明けられたアーロンとシャルナは絶句し、言葉を失ってしまう。が、それをすんなりと受け入れる二人ではなかった。
「そ、そんな話私は信じません!!ラルク様は絶対に生きています!!ラルク様は……ラルク様はそんな簡単に私の前からいなくなられたりしません!!」
動揺こそしながらも、力強くそう言葉を発するシャルナ。それを受けてアーロンもまた、彼女に続いた。
「そ、そうだそうだ!ラルク殿は魔獣の大軍をたった一人で壊滅させたという伝説さえお持ちの方だ!!たとえ相手が騎士であろうと、この私の見込んだラルク殿がそんな簡単に負けることなどあるはずがない!!」
勢いをつけてライオネルに言葉を返す二人だったものの、ライオネルは静かな口調で二人に反論した。
「…お前たちだって本当は分かっているんだろう?この私が嘘をつくはずはないと。上級伯爵であるこの私がさし向けた刺客が、仕事を失敗などするはずがないと。それを認めたくないから、そんな大声をだして気持ちをごまかしているのだろう?」
「そんなことはありません!我々は心の底からそう確信しています!」
互いにすさまじい殺気を放ちながら、自分たちの考えをぶつけ合う。そこに付け入る隙は一切なく、まさに大きな権力を有する者同士にふさわしい光景と言えた。
…そしてそんな二人のもとに、カタリーナ家の使用人が足早に一つの知らせを持ち込んできた…。
「…き、緊急の知らせですアーロン様!騎士の城で、なにやら騒ぎがあったと知らせが…」
「っ!?!?」
…もたらされた知らせを聞いて、アーロンは背筋がさーっと冷たくなっていく感覚を覚える…。しかも知らせはそれにとどまらず…。
「…さらに話によれば、ラルク様が一人の騎士に剣を向けられ、城の中は大変なことになったと…」
「……」
…もたらされたたった一つの知らせ。しかしアーロンはそれによって先ほどまでの勢いを完全に失ってしまい、何か言葉を返すこともなくただただ立ち尽くしていた…。
そしてその横では、話を聞いていたシャルナが崩れるようにその場に倒れこみ、震える口調で言葉を漏らした。
「そ、そんな……わ、私がわがままを言ったから……。ラルク様、ラルク……様……」
…シャルナは体を震わせながら、その両目に涙をあふれさせる。その涙は頬を伝って床に落ち、一滴、また一滴と床を染めていく。
「…ごめんなさい……ごめんなさい……ラルク…様……ごめんなさい……」
…部屋の雰囲気は完全にシリアスに包まれ、ライオネルの主張が正しかったものと受け入れざるを得ないものになっていた。
…しかし、知らせをもたらした使用人の話はまだ途中だったようだが…。
「え、えっと…知らせによれば、結果はラルク様の圧…」
「そ、そうだそうだ!お前たちが早くからクライムとの婚約を受け入れていれば、こんなことにはならずに済んだじゃないか!ラルクを殺したのはお前たちの方じゃないか!!」
「(あらあら、あの男死んじゃったのね。まぁ食事会で私に恥をかかせるような存在価値のない男だったし、いっそ清々するわ♪)」
泣き崩れるシャルナ、その場で悔しそうに奥歯をかみしめるアーロン、そして勝利を確信するライオネルと、どこか上機嫌な様子のレリア。異様な光景が繰り広げられる中で、使用人はもう一度追加の知らせを口にした。
「え、えっと……行われた戦闘の結果は、ラルク様の圧勝だったそうで……」
「「……!?!?!?!?!?!?!??!?」」
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