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第44話
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レリアとの会話を終え、伯爵家を後にするターナー。そんな彼の姿を窓越しに見つめる人物の姿があった。…伯爵家において魔獣の生成を行っている、ノドレーである。
「(あーあ…。やはり彼女に任せたのが間違いだった…。騎士様との関係をよくするどころかかえって悪化させて、しかも我々が魔獣の召喚にかかわっていると自分からばらしてしまって…。はぁ、これだから女にはこういう仕事を任せるべきじゃないんだよ…)」
ノドレーは心の中にそうつぶやくと、自室の机にむかい頭を抱える。レリアとターナーの会話が気になって仕方がなかった彼は、二人が話をする部屋の扉に自分の耳をつけ、その会話を盗み聞きしていたのだった。彼もまたレリアの自分勝手なふるまいには思うところがあり、もともと彼女にあまり期待をしていなかったとはいえ、まさかここまで最悪な結果になってしまうとは思ってもいなかった様子…。
「(こ、これからどうするか…。もしも魔獣の生成が皆の知るところになったなら、きっと伯爵様はすべての責任をこの私に押し付けて、一方的に見捨ててくることだろう…。レリアが私を助けてくれるとも到底思えない…。うぅぅ、こんなことになるなら、初めから伯爵でなくセイラに味方するべきだった…)」
かつては自分も伯爵やレリアとともにセイラの事を迫害していたというのに、自分が危ない立場になった今、そんな不都合な記憶はなくしてしまったかのようだ。
「(い、いや待てよ…?それこそが私が助かる可能性なんじゃないだろうか…?私もセイラのようにここを出て行って伯爵に反旗を翻したなら、セイラはこの私の事を仲間にしてくれるんじゃないだろうか??噂じゃ彼女には、とんでもなく強大な力を持つ男が味方をしているらしいじゃないか…。あんなに気弱だったセイラが伯爵に逆らえるほどになるというのなら、普通に考えればその相手は公爵令息か、それとも騎士様か…?やはりいっそのことセイラにつく方が賢いんじゃ…?)」
あろうことか、自分が馬鹿にするレリアと全く同じ勘違いをし始めるノドレー。彼もまたセイラ自身が成長した可能性などは全く考えず、あくまで彼女に味方をする謎の男の存在が彼女の強固な態度を形作っているに違いないと推測した。…それは裏を返せば、いまだにセイラの事を見下しているという事を意味するのだが、彼もまたレリアと同じく、セイラは自分たちより劣る人間だと思い込んでいるため、そこを改めることはないのだった。
「(何か適当に理由をつけて、伯爵の元から離れてセイラに味方をすることにしたと言えば、きっとセイラは断れないはずだ!彼女がここにいた時を思い出してみろ!言われたことを絶対に断れないような性格だったじゃないか!少し伯爵のもとから家出したからと言ったって、簡単にその性格が変わるとも思えない!そうだ!絶対にうまくいくとも!)」
あっけなく伯爵への忠誠を撤回する決意をしたノドレーは、その勢いのままに計画をねり始めた。
「(セイラに取り入るためには、やはり彼女と同じ手を使う方がいいよな…。「実は伯爵に冷遇されていて、決心して伯爵の元から家出をしてきた」とでも言えば、まぬけでお人好しなセイラならば必ず信じるだろう。そして彼女の協力を得られたなら、あとはその例の男に助けてもらうだけの話…。よし、これならいけそうだ!)」
…断られた時の可能性を全く考えないあたり、やはりノドレーセイラの事をなめきっている様子。セイラがばったばったと魔獣を倒していく様子をノドレーは知っているというのに、それがセイラ自身の力や成長だとは、やはり思いたくないようだった。
それからノドレーは、自分がここから消えた後の事を考え始める。
「(さて…。魔獣を管理するこの私が突然いなくなれば、魔獣召喚のために集めたエネルギーが暴走してどうなるかわからないが……まぁ、後の事なんてどうでもいいか…。レリアが現れる前から、伯爵には嫌な思いをさせられ続けてきたんだ。最後に少し仕返しをするくらい、なんてことはないだろう)」
自分がいなくなった後の事をそう簡単に考えるノドレーだったものの、それが彼自身にとってもとんでもない結末を迎えることになるなど、この時の彼は知る由もないのだった…。
「(あーあ…。やはり彼女に任せたのが間違いだった…。騎士様との関係をよくするどころかかえって悪化させて、しかも我々が魔獣の召喚にかかわっていると自分からばらしてしまって…。はぁ、これだから女にはこういう仕事を任せるべきじゃないんだよ…)」
ノドレーは心の中にそうつぶやくと、自室の机にむかい頭を抱える。レリアとターナーの会話が気になって仕方がなかった彼は、二人が話をする部屋の扉に自分の耳をつけ、その会話を盗み聞きしていたのだった。彼もまたレリアの自分勝手なふるまいには思うところがあり、もともと彼女にあまり期待をしていなかったとはいえ、まさかここまで最悪な結果になってしまうとは思ってもいなかった様子…。
「(こ、これからどうするか…。もしも魔獣の生成が皆の知るところになったなら、きっと伯爵様はすべての責任をこの私に押し付けて、一方的に見捨ててくることだろう…。レリアが私を助けてくれるとも到底思えない…。うぅぅ、こんなことになるなら、初めから伯爵でなくセイラに味方するべきだった…)」
かつては自分も伯爵やレリアとともにセイラの事を迫害していたというのに、自分が危ない立場になった今、そんな不都合な記憶はなくしてしまったかのようだ。
「(い、いや待てよ…?それこそが私が助かる可能性なんじゃないだろうか…?私もセイラのようにここを出て行って伯爵に反旗を翻したなら、セイラはこの私の事を仲間にしてくれるんじゃないだろうか??噂じゃ彼女には、とんでもなく強大な力を持つ男が味方をしているらしいじゃないか…。あんなに気弱だったセイラが伯爵に逆らえるほどになるというのなら、普通に考えればその相手は公爵令息か、それとも騎士様か…?やはりいっそのことセイラにつく方が賢いんじゃ…?)」
あろうことか、自分が馬鹿にするレリアと全く同じ勘違いをし始めるノドレー。彼もまたセイラ自身が成長した可能性などは全く考えず、あくまで彼女に味方をする謎の男の存在が彼女の強固な態度を形作っているに違いないと推測した。…それは裏を返せば、いまだにセイラの事を見下しているという事を意味するのだが、彼もまたレリアと同じく、セイラは自分たちより劣る人間だと思い込んでいるため、そこを改めることはないのだった。
「(何か適当に理由をつけて、伯爵の元から離れてセイラに味方をすることにしたと言えば、きっとセイラは断れないはずだ!彼女がここにいた時を思い出してみろ!言われたことを絶対に断れないような性格だったじゃないか!少し伯爵のもとから家出したからと言ったって、簡単にその性格が変わるとも思えない!そうだ!絶対にうまくいくとも!)」
あっけなく伯爵への忠誠を撤回する決意をしたノドレーは、その勢いのままに計画をねり始めた。
「(セイラに取り入るためには、やはり彼女と同じ手を使う方がいいよな…。「実は伯爵に冷遇されていて、決心して伯爵の元から家出をしてきた」とでも言えば、まぬけでお人好しなセイラならば必ず信じるだろう。そして彼女の協力を得られたなら、あとはその例の男に助けてもらうだけの話…。よし、これならいけそうだ!)」
…断られた時の可能性を全く考えないあたり、やはりノドレーセイラの事をなめきっている様子。セイラがばったばったと魔獣を倒していく様子をノドレーは知っているというのに、それがセイラ自身の力や成長だとは、やはり思いたくないようだった。
それからノドレーは、自分がここから消えた後の事を考え始める。
「(さて…。魔獣を管理するこの私が突然いなくなれば、魔獣召喚のために集めたエネルギーが暴走してどうなるかわからないが……まぁ、後の事なんてどうでもいいか…。レリアが現れる前から、伯爵には嫌な思いをさせられ続けてきたんだ。最後に少し仕返しをするくらい、なんてことはないだろう)」
自分がいなくなった後の事をそう簡単に考えるノドレーだったものの、それが彼自身にとってもとんでもない結末を迎えることになるなど、この時の彼は知る由もないのだった…。
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