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第43話
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「ようこそいらっしゃいました、ターナー様!」
全身を装飾品で着飾り、髪型はフルセット、色気をふりまくその姿は、まさにレリア完全体と呼ぶにふさわしかった。
「あぁ……お出迎えどうも……(見た目は噂通り綺麗だが、性格悪そうだなぁ…。正直俺はあまり関わりたくないタイプの女だ……)」
女を全身に出すレリアの姿に、若干引き気味のターナー…。それゆえに言葉に詰まってしまったのだが、レリアの方はそれを勘違いした様子。
「(私を目の前にして、緊張しているのかしら?若いだけあってかわいいわね♪将来有望の騎士様らしいし、このままいい雰囲気を続けられたら、私がもらっちゃおうかしら♪)」
正反対の想いを二人は抱えつつ、レリアに導かれるままにターナーは屋敷の中へと足を踏み入れるのだった。
――――
「改めまして、不在の伯爵様に代わってお相手をさせていただきます、レリアと申します」
「騎士のターナーだ…。まぁよろしく…」
レリアはあえて、自分が伯爵の婚約者であることをターナーには告げなかった。彼女が伯爵と親しい関係にあることはいろいろな人の知るところにあったものの、基本的にあまり他人に興味のないターナーはそのことを知らなかった。
ターナーが自分の事をあまり知らないと確信したレリアは、彼の心をつかむべく行動することを決意した様子。
「ターナー様、あなたのお噂は私の耳にも入っております。まだまだお若い騎士様であられながらも、熟練騎士顔負けのご活躍をされているとか!私、ぜひともあなた様に早くお会いしたいと思っておりましたの!」
「はぁ…。そうですか…」
「私個人的に、騎士様との相性はばっちりだと思っておりますの!もしも私とターナー様が結ばれたら、それはそれはみんながうらやむ関係になることは間違いない事ともいますよ?♪」
「はぁ…。そうですか…」
「…きっと伯爵様に捨てられたセイラとて、私たちの事をうらやむことになるでしょう♪」
「……セイラ??」
それまで全くレリアの言葉に関心を抱いていなかったターナーだったものの、その名前を聞いて表情を少し変えた。
「(ほらほら、やっぱり食いついてきた!どうやら騎士様たちの間でも、セイラのみじめさは話題になっているようね♪まぁ無理もないわよね~。だってあんなに笑える婚約破棄をされた女なんて他にはいないでしょうし…♪)」
「(な、なんで急にセイラの名前を……?も、もしかして僕の気持ちを見抜かれているのか!?)」
「その反応、やはりご存じなのですね?セイラも喜んでいることでしょう、あなた様のような未来ある騎士様に知られていることを」
「さ、さぁな……(喜んでいるのか!?俺に知られていることをセイラは喜んでいるのか!?)」
「だって、あんなにみっともなくてかわいげのない女なんて他にいないでしょう?私もいろんな人を今まで見てきましたけれど、彼女は圧倒的に最下位の女でしたし♪」
「………はぁ?」
セイラをけなすことを共通の話題にし、距離を縮めようと画策していたレリアだったものの…。
「ターナー様だってそう思われるでしょう??せっかく伯爵夫人になれるチャンスだったというのに、魅力がなさ過ぎて伯爵様に捨てられて、意地になって家出をしたものの結局なにも思い通り通りにはならなくて…。笑いしかおきませんわよね?♪」
「………」
「新しい婚約者を探すと言ったって、あんな女を好きになるような人間なんているはずがないのですから♪」
「……ほぅ。彼女を好きになる人間がいるはずがない、ねぇ……」
ターナーはあからさまにその態度を硬化させる。そこに違和感を感じるレリアだったものの、もう手遅れだった…
「あれほど勇敢で美しいセイラのことをそう言うとは、なかなか興味深い女だな。ここまでみっともない女が伯爵家にいようとは、思いもしなかった」
「………なんですって?」
「そりゃあそろいもそろって、自分たちが主催した食事会で大恥をかくわけだ。並の人間の神経じゃできないな」
「っ!!??」
いまだにそのことを引きずるレリアには、その言葉は受け入れがたいものだった。
「あぁそう、そんな言い方をするの、いいわよくわかった。私、あなたの騎士団の団長様と懇意にしているのよ?私が彼に泣きつけば、新人のあなたなんて簡単に追放することができるのよ?」
レリアはこれまでの態度を豹変させ、急に高圧的な口調を見せる。…が、そんなものはターナーには効かなかったようで…。
「ククク…。別に好きにすればいい。やりたいのならどうぞご自由に♪」
「まぁまぁ強がっちゃって…。後から泣きついてきても知らないわよ?♪」
「泣きつくことになるのはどっちだろうな?お前が裏で危ない生き物を扱っているって噂が、騎士団じゃちきりだぜ?」
「そ、それは間違いだわ!!魔獣の召喚は伯爵様がやってるだけで、私はなにも関わってないもの!」
「へぇ。俺は魔獣なんて一言も言っていないが?」
「っ!!??」
完全にしまった、という表情を浮かべるレリアと、勝ち誇った表情で見返すターナー。二人の間にそれ以上の会話がされることはなかった。
全身を装飾品で着飾り、髪型はフルセット、色気をふりまくその姿は、まさにレリア完全体と呼ぶにふさわしかった。
「あぁ……お出迎えどうも……(見た目は噂通り綺麗だが、性格悪そうだなぁ…。正直俺はあまり関わりたくないタイプの女だ……)」
女を全身に出すレリアの姿に、若干引き気味のターナー…。それゆえに言葉に詰まってしまったのだが、レリアの方はそれを勘違いした様子。
「(私を目の前にして、緊張しているのかしら?若いだけあってかわいいわね♪将来有望の騎士様らしいし、このままいい雰囲気を続けられたら、私がもらっちゃおうかしら♪)」
正反対の想いを二人は抱えつつ、レリアに導かれるままにターナーは屋敷の中へと足を踏み入れるのだった。
――――
「改めまして、不在の伯爵様に代わってお相手をさせていただきます、レリアと申します」
「騎士のターナーだ…。まぁよろしく…」
レリアはあえて、自分が伯爵の婚約者であることをターナーには告げなかった。彼女が伯爵と親しい関係にあることはいろいろな人の知るところにあったものの、基本的にあまり他人に興味のないターナーはそのことを知らなかった。
ターナーが自分の事をあまり知らないと確信したレリアは、彼の心をつかむべく行動することを決意した様子。
「ターナー様、あなたのお噂は私の耳にも入っております。まだまだお若い騎士様であられながらも、熟練騎士顔負けのご活躍をされているとか!私、ぜひともあなた様に早くお会いしたいと思っておりましたの!」
「はぁ…。そうですか…」
「私個人的に、騎士様との相性はばっちりだと思っておりますの!もしも私とターナー様が結ばれたら、それはそれはみんながうらやむ関係になることは間違いない事ともいますよ?♪」
「はぁ…。そうですか…」
「…きっと伯爵様に捨てられたセイラとて、私たちの事をうらやむことになるでしょう♪」
「……セイラ??」
それまで全くレリアの言葉に関心を抱いていなかったターナーだったものの、その名前を聞いて表情を少し変えた。
「(ほらほら、やっぱり食いついてきた!どうやら騎士様たちの間でも、セイラのみじめさは話題になっているようね♪まぁ無理もないわよね~。だってあんなに笑える婚約破棄をされた女なんて他にはいないでしょうし…♪)」
「(な、なんで急にセイラの名前を……?も、もしかして僕の気持ちを見抜かれているのか!?)」
「その反応、やはりご存じなのですね?セイラも喜んでいることでしょう、あなた様のような未来ある騎士様に知られていることを」
「さ、さぁな……(喜んでいるのか!?俺に知られていることをセイラは喜んでいるのか!?)」
「だって、あんなにみっともなくてかわいげのない女なんて他にいないでしょう?私もいろんな人を今まで見てきましたけれど、彼女は圧倒的に最下位の女でしたし♪」
「………はぁ?」
セイラをけなすことを共通の話題にし、距離を縮めようと画策していたレリアだったものの…。
「ターナー様だってそう思われるでしょう??せっかく伯爵夫人になれるチャンスだったというのに、魅力がなさ過ぎて伯爵様に捨てられて、意地になって家出をしたものの結局なにも思い通り通りにはならなくて…。笑いしかおきませんわよね?♪」
「………」
「新しい婚約者を探すと言ったって、あんな女を好きになるような人間なんているはずがないのですから♪」
「……ほぅ。彼女を好きになる人間がいるはずがない、ねぇ……」
ターナーはあからさまにその態度を硬化させる。そこに違和感を感じるレリアだったものの、もう手遅れだった…
「あれほど勇敢で美しいセイラのことをそう言うとは、なかなか興味深い女だな。ここまでみっともない女が伯爵家にいようとは、思いもしなかった」
「………なんですって?」
「そりゃあそろいもそろって、自分たちが主催した食事会で大恥をかくわけだ。並の人間の神経じゃできないな」
「っ!!??」
いまだにそのことを引きずるレリアには、その言葉は受け入れがたいものだった。
「あぁそう、そんな言い方をするの、いいわよくわかった。私、あなたの騎士団の団長様と懇意にしているのよ?私が彼に泣きつけば、新人のあなたなんて簡単に追放することができるのよ?」
レリアはこれまでの態度を豹変させ、急に高圧的な口調を見せる。…が、そんなものはターナーには効かなかったようで…。
「ククク…。別に好きにすればいい。やりたいのならどうぞご自由に♪」
「まぁまぁ強がっちゃって…。後から泣きついてきても知らないわよ?♪」
「泣きつくことになるのはどっちだろうな?お前が裏で危ない生き物を扱っているって噂が、騎士団じゃちきりだぜ?」
「そ、それは間違いだわ!!魔獣の召喚は伯爵様がやってるだけで、私はなにも関わってないもの!」
「へぇ。俺は魔獣なんて一言も言っていないが?」
「っ!!??」
完全にしまった、という表情を浮かべるレリアと、勝ち誇った表情で見返すターナー。二人の間にそれ以上の会話がされることはなかった。
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