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第8話

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ーー国王陛下視点ーー

「リルア!!よくやってくれた!!君にその椅子を託したのは大正解だったな!」

 リルアを指名したのはジャックだったな…全く奴はさすがとしか言えぬ…!

「あ、ありがたきお言葉…」

 数週間ほど前、シャルクなる男が私に話してきたことはどうやら本当だったらしい。私が命令していたことは何も進んでおらず、それどころか王国は周辺国や民営の組織に借金をしているという始末であった。全く呆れて言葉も出ぬわ。あいつらには王国の人間として働くというプライドがないのか…
 しかしそれらの問題を、このリルアが全て解決してくれたのだ。リルアが提出してきた王宮財政報告書によれば、リルアの打ち立てた斬新な改革によって王宮の借金は消滅し、滞っていた私の命令もすべて再開されているとのことだ。いやいや、優秀な人間というものはいるものだなと実感させられる。私ほどではないが。

「リルアがこれほど頑張ってくれているのだ!私も負けてはおれん!ますます政策に力を入れなければな!」

「…と、申しますと?」

「話を聞くに、隣国のスフィーリア王国の王宮には、最新鋭のプラネタリウム施設があるそうではないか!ここにもそれを作るのだ!」

「そ、それはまたどうして…」

「ふふふ。さすがのリルアにも私の考えはまだ見抜けぬか。考えてもみよ?プラネタリウムは女性貴族のあこがれという話ではないか!ここにそれを置けば、その者たちを皆喜ばせられるであろう!」

 そうすればそれを口実に、さらなる側室をここへと呼べるという事だ…ぐふふ。

「そ、そのような深きお考えがあったとは…ははは…」

 リルアが少し笑っているのは、私のあまりの見分の深さに自嘲の意味が込められているからであろう。案ずることはない。そなたは私ほどではないにしろ、優秀な人間であるぞ。

「リルアよ、おぬしさえよければ、私の側室に迎えてやっても構わぬぞ?」

 …よく見ればこのリルアという女、良い体をしている…

「お、お言葉は大変ありがたいのですが、私には王国を死守するという使命がございますゆえ…」

 ふんっ。真面目な女だ。

「…そうか。まあ気が変わったらいつでも申し出るがよい。ではリルアよ、これからも頼むぞ」

「は、はいっ…」

 立ち去るとき、どこか震えているような気がしたが…私に対する緊張からか。全くかわいい女め。

「さ、て、と♪」

 リルアが財政的余裕を作ってくれたおかげで、欲しいものがさらに手に入りそうだ。隣国の美しい女性全員に宝石でも送るか?いや皆を招くことができる美しい施設の建造が先か…?

「ぐふ、ぐふふ♪」

 私の明るさしかない未来の前に、笑いが止まらなかった。
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