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第7話
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ーージャック王室長視点ーー
帳簿のサインが、いまだに脳裏に焼き付いて離れない。怪しげな会計の担当者として、確かに奴のサインがあった。今の財政部で俺が最も信頼する、シャルクのサインが…
「…!」
休憩室から出てきたシャルクの姿を確認し、後をつける。…この段階でシャルクを直接問いただす事は、俺にはできなかった。…理由はシャルクを信頼したい気持ちが半分、まだ証拠が薄いことが半分だ。
しらばく尾行を続けてはみたものの、特に怪しい点はない。シャルクが交わす会話もほぼ聞こえてはいるが、これといって不自然な点は見られない。
「…やっぱり、何かの間違いか…?」
そう考えたその時、俺は警戒を強める。…分かりやすいほどに、シャルクの動きが変わったからだ。何度も何度も周囲を見回し、辺り一帯をキョロキョロしている。…俺の尾行に、感づいたのだろうか…?
「…よし」
シャルクは小さい声でそう言い、速足で駆け出す。俺は気づかれないように細心の注意を払いながら、後を追った。
「…あそこは…確か保管庫か?」
シャルクの後を追い行き着いた先は、王宮の端にある小さな保管庫であった。はっきり言ってここは不要になった書類などの置き場で、訪れる者などまあいない。ゆえにシャルクがどうしてここに来る必要があるのか、怪しさ満点だった。
シャルクが書庫に入っ手行ったのを確認し、物音を立てないよう細心の注意を払いながら、後に続く。
しばらく奥に進んだところで、再びシャルクが周囲を見回す。さらにしばらくキョロキョロした後、本棚の奥側に隠されていた一冊の本を取り出し、何やらそこに何かを記入している。…さすがにここからだと、その内容までは見えないか…
仕事が終わったのか、元あった位置に本を隠すシャルク。俺はその本の位置を確認した後、静かに保管庫を後にする。外で待ち伏せをし、シャルクが保管庫立ち去ったのを確認してから再び保管庫に足を踏み入れる。足早に保管庫の奥へと向かい、先ほど確認した位置に急ぐ。
「…確か、この辺りだったはず…!」
例の本を隠すためか、妙に入り組んでいる。しかしそれゆえに、怪しい箇所は浮彫だ。…その本が保管されていると思われる場所だけ、妙に防御が固いのだから。
「…!」
奥に手を伸ばし、それらしきが手に当たる。俺はさっそく手元に引き出し、表紙を確認する。そこにあった信じられない物に、俺の言葉は途切れ途切れになる。
「…!、そ、そんなばかな…!」
俺は疲れなど忘れその足で、本を片手にミリアの元へと走った。
帳簿のサインが、いまだに脳裏に焼き付いて離れない。怪しげな会計の担当者として、確かに奴のサインがあった。今の財政部で俺が最も信頼する、シャルクのサインが…
「…!」
休憩室から出てきたシャルクの姿を確認し、後をつける。…この段階でシャルクを直接問いただす事は、俺にはできなかった。…理由はシャルクを信頼したい気持ちが半分、まだ証拠が薄いことが半分だ。
しらばく尾行を続けてはみたものの、特に怪しい点はない。シャルクが交わす会話もほぼ聞こえてはいるが、これといって不自然な点は見られない。
「…やっぱり、何かの間違いか…?」
そう考えたその時、俺は警戒を強める。…分かりやすいほどに、シャルクの動きが変わったからだ。何度も何度も周囲を見回し、辺り一帯をキョロキョロしている。…俺の尾行に、感づいたのだろうか…?
「…よし」
シャルクは小さい声でそう言い、速足で駆け出す。俺は気づかれないように細心の注意を払いながら、後を追った。
「…あそこは…確か保管庫か?」
シャルクの後を追い行き着いた先は、王宮の端にある小さな保管庫であった。はっきり言ってここは不要になった書類などの置き場で、訪れる者などまあいない。ゆえにシャルクがどうしてここに来る必要があるのか、怪しさ満点だった。
シャルクが書庫に入っ手行ったのを確認し、物音を立てないよう細心の注意を払いながら、後に続く。
しばらく奥に進んだところで、再びシャルクが周囲を見回す。さらにしばらくキョロキョロした後、本棚の奥側に隠されていた一冊の本を取り出し、何やらそこに何かを記入している。…さすがにここからだと、その内容までは見えないか…
仕事が終わったのか、元あった位置に本を隠すシャルク。俺はその本の位置を確認した後、静かに保管庫を後にする。外で待ち伏せをし、シャルクが保管庫立ち去ったのを確認してから再び保管庫に足を踏み入れる。足早に保管庫の奥へと向かい、先ほど確認した位置に急ぐ。
「…確か、この辺りだったはず…!」
例の本を隠すためか、妙に入り組んでいる。しかしそれゆえに、怪しい箇所は浮彫だ。…その本が保管されていると思われる場所だけ、妙に防御が固いのだから。
「…!」
奥に手を伸ばし、それらしきが手に当たる。俺はさっそく手元に引き出し、表紙を確認する。そこにあった信じられない物に、俺の言葉は途切れ途切れになる。
「…!、そ、そんなばかな…!」
俺は疲れなど忘れその足で、本を片手にミリアの元へと走った。
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