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第16話

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「さて、これで僕とエリスの関係が完璧なものとなるはず…!!」

邪魔者と判断したエリスの事を追い返したことで、うきうきな様子を見せているシュノード。
しかしもうすでに、彼が理想とした王宮の姿は崩れつつあった…。

「…エリス?どこにったエリス?」

普段ならセレーナがいるその場所には、まだ誰の姿もなかった。
彼女がこれまでに約束の時間を過ぎることなど一度たりともなかったため、シュノードはその心の中に妙な違和感を感じる。
…しかし、その違和感はすぐに不安感へと変わっていった。

「…エリスが、いない…?」

その場だけではない。
彼女がこの場にいることを証明するものが、軒並みなくなってしまっているのだ。
彼女の靴、彼女の衣装、彼女の部屋に至るまで、一瞬のうちにすべてが消え失せてしまっているのだ。

「…ど、どういうことだ?」

全く現状が飲み込めない様子のシュノード。
そんな彼のもとに、1人の男が姿を現した。
他でもない、この状況を作り出した張本人であるオクトである。

「シュノード様、お久しぶりです」
「お前は…。確か、伯爵の家の…」
「シュノード様、あなたにお知らせしなければならないことがあります」
「けっ。何度言われようと考えを改めるつもりはない。もう僕はエリスとの縁を切ると決めたのだ。これ以上誰に何を言われようとも…」
「あぁ、そうでしたか。シュノード様もすでにご承知の事でしたか」
「…?」
「エリスはもすでにここにはいません。僕の屋敷で一緒に暮らすこととなりましたからね。そしてそれと同時に、これまであなたに忠誠を誓っていた人々もあなたから離れることを決めたそうです。なんでも、隣国に生まれた王族令嬢の存在をそうだと見抜けず、みすみす自分や周りの情報を口にしてしまうような王子には、ついていけないと」
「……は、はぁ?」

オクトの言っていることが理解できない様子のシュノード。
しかしオクトはそんなシュノードに気を遣うことなく、そのまま自身の言葉を続けていく。

「ゆえに、あなたはもうここでひとりぼっちなのです。まぁ無理もありません、いなくなった好きな女性の事をほかの女性に演じさせるなど、到底理解できる言動ではありませんからね。自分の家族が同じ状況になったなら、全力で正気に戻らせるよう努めることでしょう」
「……」
「ここにいる人々も、あなたに同じことをしていた。しかしあなたはそれを拒絶し、結局彼らの思いを受け止めることをしなかった。そんな男に、人の上に立つ資格はない事でしょう」
「お前……あまり度が過ぎたことを言うなら、この場で処刑を命じてやっても…」
「それはできませんよ。あなたはもう全権を凍結されているのですから」
「は、はぁ!?」

オクトはまるで死刑でも宣告するかのように、淡々とした口調で言葉を続ける。

「お気づきではないようですが…。今回の一件はすでに、国王様の耳にも履いているのです。シュノード様が勝手なことをやってしまったがために、王宮全体をゆるがす事態に発展してしまっているということも…」
「ま、まさか……そんな……」

想像だにしていなかった人物の登場を耳にして、途端にその表情を凍り付かせるシュノード…。
国王の耳にまでこの状況が届けられている今、もはや彼にここから逆転するだけの方法があるはずもなかった。

…ゆえに、シュノードに対してエリスが最後に発した言葉がそのまま現実になる形となったのだった。
しかしその一方、エリスの方もまたただでは終われない状況に追い詰められつつあるということに、本人はまだ気づいていなかった…。
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