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第14話
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それぞれの思惑が複雑に絡み合っていく中、突然王宮内部にある知らせがもたらされた。
他でもない、エリス本人が再び姿を現したというのだ。
「ま、間違いじゃないのか!?本当にエリス様なのか!?」
「間違いない!こちらで確認した!ご本人しか知りえない情報を多数知っていたし、何より容姿も完全にエリス様そのものだ!偽物なんかじゃない!」
無論その知らせは速やかにシュノードの元まで届けられることが決定した。
しかし、部下の男たちは報告に関して一抹の不安を抱かずにはいられなかった。
「なにか妙でしかないな…。今までどこに行っていたのかという質問には答えていただけていないのだろう?今お二人を会わせてしまったら、ただでさえ不安定にあるシュノード様の状態がさらに悪化してしまうように思えてならないのだが…」
「しかし、そんなことを言っている場合でもありません。もしも報告をためらって時間が経ってしまったなら、後から何を言われるか分かったものではありません。いずれにしても、このままシュノード様にお伝えするのが一番安全で確実でしょう」
「うむ…」
シュノードの機嫌次第によっては、難しい選択を迫られることとなった部下たち。
しかしこのまま知らせずにいることの方がリスクが高いと考えた彼らは、一応そのまま正直にシュノードに対してすべてを報告することとした。
――――
「と、いうことだそうです、シュノード様…。いかがいたしましょうか?」
「聞かない」
「…はい?」
「だから、聞かないと言っている」
シュノードの反応は部下たちが想った通り、あまり良いものではなかった。
…以前の彼であったなら、間違いなく食いついてきたであろうエリスに関する情報、しかも探しに探し続けていたその身がついに見つかったというものであるにもかかわらず、シュノードは静かな反応を崩さなかった。
「もういいと言っている。本物のエリスはもう僕の隣にいるんだ。今更それ以外のエリスが出てこようが、どうでもいい」
「し、しかしシュノード様、もしもこの機を逃すとまたいつエリス様が失踪されるか分かったものでは…」
「だから聞かないと言っている!!」
その時、シュノードは非常に激しい口調でそう言葉を発した。
…別にシュノードの事を説得しているわけでもない二人にとって、これ以上シュノードにエリスを進める義理もない。
二人はそのまま素直にシュノードの言葉を受け入れ、いったん引き下がることとしたのだった。
――――
「え?本物のエリスが…?」
その知らせはすぐにセレーナの元にも届けられた。
エリスがこれまでどこで何をしていたのか、その点に関しては本人が何も言っていないため不明なままではあるが、セレーナにとって一番大事な点はそこではなかった。
「…それじゃあこれで、シュノード様が私のことを追い出してくれればいいわけね…。だって私に演じさせ続けてきたエリスの存在、その本物が見つかったのだから、私をここに置く理由はもうどこにもないはず…」
彼女は心の中で、この一連の流れはオクトによってもたされたものなのだろうと推測する。
オクトの狙っていた、自分をここから解放する計画、それは本物のエリスを見つけ出すことで私に対する執着心をとき、ある種ここから追い出させる形で私の事を救おうとしてくれたものだと思われた。
「オクト……ありがとう。あとは、シュノード様が本物のエリスの事を迎えに行くだけ…!」
それですべてが解決するはずだった。
しかし、シュノードの心の中はすでに誰にも予見できないほど複雑な状態になってしまっているのであった…。
他でもない、エリス本人が再び姿を現したというのだ。
「ま、間違いじゃないのか!?本当にエリス様なのか!?」
「間違いない!こちらで確認した!ご本人しか知りえない情報を多数知っていたし、何より容姿も完全にエリス様そのものだ!偽物なんかじゃない!」
無論その知らせは速やかにシュノードの元まで届けられることが決定した。
しかし、部下の男たちは報告に関して一抹の不安を抱かずにはいられなかった。
「なにか妙でしかないな…。今までどこに行っていたのかという質問には答えていただけていないのだろう?今お二人を会わせてしまったら、ただでさえ不安定にあるシュノード様の状態がさらに悪化してしまうように思えてならないのだが…」
「しかし、そんなことを言っている場合でもありません。もしも報告をためらって時間が経ってしまったなら、後から何を言われるか分かったものではありません。いずれにしても、このままシュノード様にお伝えするのが一番安全で確実でしょう」
「うむ…」
シュノードの機嫌次第によっては、難しい選択を迫られることとなった部下たち。
しかしこのまま知らせずにいることの方がリスクが高いと考えた彼らは、一応そのまま正直にシュノードに対してすべてを報告することとした。
――――
「と、いうことだそうです、シュノード様…。いかがいたしましょうか?」
「聞かない」
「…はい?」
「だから、聞かないと言っている」
シュノードの反応は部下たちが想った通り、あまり良いものではなかった。
…以前の彼であったなら、間違いなく食いついてきたであろうエリスに関する情報、しかも探しに探し続けていたその身がついに見つかったというものであるにもかかわらず、シュノードは静かな反応を崩さなかった。
「もういいと言っている。本物のエリスはもう僕の隣にいるんだ。今更それ以外のエリスが出てこようが、どうでもいい」
「し、しかしシュノード様、もしもこの機を逃すとまたいつエリス様が失踪されるか分かったものでは…」
「だから聞かないと言っている!!」
その時、シュノードは非常に激しい口調でそう言葉を発した。
…別にシュノードの事を説得しているわけでもない二人にとって、これ以上シュノードにエリスを進める義理もない。
二人はそのまま素直にシュノードの言葉を受け入れ、いったん引き下がることとしたのだった。
――――
「え?本物のエリスが…?」
その知らせはすぐにセレーナの元にも届けられた。
エリスがこれまでどこで何をしていたのか、その点に関しては本人が何も言っていないため不明なままではあるが、セレーナにとって一番大事な点はそこではなかった。
「…それじゃあこれで、シュノード様が私のことを追い出してくれればいいわけね…。だって私に演じさせ続けてきたエリスの存在、その本物が見つかったのだから、私をここに置く理由はもうどこにもないはず…」
彼女は心の中で、この一連の流れはオクトによってもたされたものなのだろうと推測する。
オクトの狙っていた、自分をここから解放する計画、それは本物のエリスを見つけ出すことで私に対する執着心をとき、ある種ここから追い出させる形で私の事を救おうとしてくれたものだと思われた。
「オクト……ありがとう。あとは、シュノード様が本物のエリスの事を迎えに行くだけ…!」
それですべてが解決するはずだった。
しかし、シュノードの心の中はすでに誰にも予見できないほど複雑な状態になってしまっているのであった…。
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