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第12話
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セレーナとの約束を守るべく、毎日必死に動き回っていたオクト。
状況を打開するほどの大きな情報は、そんなある日突然にもたらされた。
「そ、それは本当か…?間違いないか?」
「はい、間違いありません…。僕はずっと国境で警備の任務にあたっていたのですが、エリス様と思わしき人物が複数の兵士を伴って隣国へと渡っていくところを目撃しました…」
今日オクトが当たっていたのは、すでに現場を退いた元兵隊たちだった。
数多くの元兵隊たちから話を聞く中で、エリスの事を知るものはこれまで誰もいなかったものの、ついにエリスに関する話を知るものにたどり着くことに成功したのだった。
「その時のエリスはどんな様子だった?何か変わったところはなかったか?」
「そうですね…。変わったというか、なにかすごく楽しそうではありましたね…。まるで向こうに行くことを、ずっと楽しみにしていたかのような…」
「……」
どうしてこの情報をいまだシュノードはつかんでいないのか、それはおそらくエリスが自分の国から出ていくようなことを想定していなかったからだろうと、オクトは分析する。
「(エリスはきっと自分の事を好きでいてくれている、シュノードは心の中にそう思い続けていたはず。だからこそ大規模捜索の範囲は王宮周辺におかれることとなり、国境のあたりで働く兵たちへの聞き込みは行われなかったのだろう。らしいといえばらしいが、抜けているといえば抜けているな…)」
それはオクトが個人的に抱いた所感であったが、おそらく現実もまたそれに即していた。
話をする兵も、そのような印象を抱いていたためだ。
「もしかしたら、ですけど、エリス様はシュノード様から逃げるために出ていったのではないか、なんて思ったりします。…本当に関係が円満だったなら、わざわざ隣国まで消えていく理由がないことと思いますし…」
「なぁ、エリスはその時どの方向に向かっていった?」
「確か…。隣国の王宮がある方向にまっすぐ向かわれたと思います」
「王宮、ねぇ……」
実はこの時、オクトの元にはある噂が持ち込まれていた。
…エリスが、隣国の王と血縁関係にある、というにわかには信じられない噂が…。
――――
「なに?他にも知っている者が?」
「僕も聞きましたよ。だってこのあたりじゃ有名な話だったですし…」
オクトはかつて国境付近で働いていた者たちに順に話を聞いて回った。
その結果、また新たな話が出てきた。
「エリス様、最初は第二王子であるお兄様とけんかをしてこっちに来たらしいですよ?しかしそのままではすぐに素性がバレてしまうから、当時この国の国王だったラーベン様から取り計らいをもらい、別人としてこの国で生きていくことにしたのだとか…。しかも国王様は自分の息子であるシュノード様とエリス様の関係を推し進めていて、二人が惹かれあうことになったのはある意味必然だったと…」
「あぁ、その話は俺も聞いたことがありますよ。しかし、当の本人には噂さえ聞かされていなかったらしいです。…まぁ、シュノード様の性格を考えれば言えないのも無理はないかと思いますけどね…」
…ひとつ、またひとつとシュノードとエリスにおける情報が明らかになっていく。
オクトは確かに進みつつある自分の状況に自信を持ちながら、セレーナとの約束を果たすべく次の計画をその脳裏に思い浮かべるのだった。
状況を打開するほどの大きな情報は、そんなある日突然にもたらされた。
「そ、それは本当か…?間違いないか?」
「はい、間違いありません…。僕はずっと国境で警備の任務にあたっていたのですが、エリス様と思わしき人物が複数の兵士を伴って隣国へと渡っていくところを目撃しました…」
今日オクトが当たっていたのは、すでに現場を退いた元兵隊たちだった。
数多くの元兵隊たちから話を聞く中で、エリスの事を知るものはこれまで誰もいなかったものの、ついにエリスに関する話を知るものにたどり着くことに成功したのだった。
「その時のエリスはどんな様子だった?何か変わったところはなかったか?」
「そうですね…。変わったというか、なにかすごく楽しそうではありましたね…。まるで向こうに行くことを、ずっと楽しみにしていたかのような…」
「……」
どうしてこの情報をいまだシュノードはつかんでいないのか、それはおそらくエリスが自分の国から出ていくようなことを想定していなかったからだろうと、オクトは分析する。
「(エリスはきっと自分の事を好きでいてくれている、シュノードは心の中にそう思い続けていたはず。だからこそ大規模捜索の範囲は王宮周辺におかれることとなり、国境のあたりで働く兵たちへの聞き込みは行われなかったのだろう。らしいといえばらしいが、抜けているといえば抜けているな…)」
それはオクトが個人的に抱いた所感であったが、おそらく現実もまたそれに即していた。
話をする兵も、そのような印象を抱いていたためだ。
「もしかしたら、ですけど、エリス様はシュノード様から逃げるために出ていったのではないか、なんて思ったりします。…本当に関係が円満だったなら、わざわざ隣国まで消えていく理由がないことと思いますし…」
「なぁ、エリスはその時どの方向に向かっていった?」
「確か…。隣国の王宮がある方向にまっすぐ向かわれたと思います」
「王宮、ねぇ……」
実はこの時、オクトの元にはある噂が持ち込まれていた。
…エリスが、隣国の王と血縁関係にある、というにわかには信じられない噂が…。
――――
「なに?他にも知っている者が?」
「僕も聞きましたよ。だってこのあたりじゃ有名な話だったですし…」
オクトはかつて国境付近で働いていた者たちに順に話を聞いて回った。
その結果、また新たな話が出てきた。
「エリス様、最初は第二王子であるお兄様とけんかをしてこっちに来たらしいですよ?しかしそのままではすぐに素性がバレてしまうから、当時この国の国王だったラーベン様から取り計らいをもらい、別人としてこの国で生きていくことにしたのだとか…。しかも国王様は自分の息子であるシュノード様とエリス様の関係を推し進めていて、二人が惹かれあうことになったのはある意味必然だったと…」
「あぁ、その話は俺も聞いたことがありますよ。しかし、当の本人には噂さえ聞かされていなかったらしいです。…まぁ、シュノード様の性格を考えれば言えないのも無理はないかと思いますけどね…」
…ひとつ、またひとつとシュノードとエリスにおける情報が明らかになっていく。
オクトは確かに進みつつある自分の状況に自信を持ちながら、セレーナとの約束を果たすべく次の計画をその脳裏に思い浮かべるのだった。
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