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第9話

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必死に悪役令嬢の運命から逃れようとあがくアリシラだったものの、彼女を取り巻く環境は彼女の事をバッドエンドへと導くことが仕組まれているかのように動き続けていた。

「バッドエンドなんて絶対に嫌なんだから…!なにをしてでも絶対に逃げ切ってやるんだから…!」

強くそう決意するアリシラだったものの、すでにバッドエンドは彼女のすぐそばまで近づいていた…。

――――

「ほら、やっぱり言った通りだったろ?あの貴族家は裏で絶対何かやってるって」
「なるほど、お前の言った通りだったみたいだな…」
「ここには二人の兄弟がいたが、いずれも行方不明らしいな。まぁ兄の方は誰の目にもいつか破滅するようにしか見えなかったが」
「貴族家としての後ろ盾があったからこそあこそまで調子に乗っていたんだろう?それがなくなったならそりゃこうなるに決まってるわな。権力も影響力もなにもない横柄な男になんて、誰も興味ないだろうしな」

男たちが話をしているのは、ついこの間までこの国でトップクラスの影響力を有していたとある貴族家に関するものだった。
その貴族家はかねてから行っていた不正が発覚し、永久に貴族家としての立場を剥奪されてしまったのだった。

「罰当たりな事ばっかりやってたって話だもんなぁ」
「ただ、妹の方はまだどうにかなるみたいなこと聞いたぞ?」
「ん?どういうことだ?」

この世界で言うところの盛大なざまぁをされてしまった貴族家。
そこに身を置くアリシラもまた同じ運命をたどるのが通説であるが、どうやらそうはならなかった模様。

「彼女だけは第一王子の保護を受けているらしい。どういう縁なのかはよく分からんが…」
「相当気に入っているって事か?この際一緒に切り捨てる方が後々面倒じゃないだろうに」
「第一王子様は本当に心から心酔しているのか、それとも形だけなのか…」

バッドエンドの魔の手から彼女が逃げ切れたのか、それともまだその掌の上にいるのか、それはこれから先の彼女の運命次第なのだろう。

「あぁそう言えば聞いたか?」
「なんだ?」
「その第一王子、最近一人の女の子といい関係らしいぜ?」
「いい関係?アリシラの事か?」
「違う違う。俺も見たことはないんだが、かなり純朴で可愛らしいんだと。でもよくドジをやらかすから、女性陣の間では嫌われてるらしいが…」
「…ほぅ」

アリシラが正ヒロインに勝てるのかどうか、それもまた運命の導き次第であろう…。
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