家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。

新野乃花(大舟)

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第16話

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「レベッカ、本当に大丈夫?」
「大丈夫です!私いろいろあって、家事得意なので!」

自信満々に胸を張る私の姿を見て、ラクス様はやや心配そうな表情を浮かべる。
私がついこの間まで、全身ボロボロの状態でベッドに横たわっていたのだから、心配されるのも無理もないのかもしれないけれど、私は一刻も早くラクス様に恩返しをしたい気持ちでいっぱいだった。
そして最後にはラクス様も、私の思いを受け止めてくれた。

「わかった、君の気持ちは素直に受け取ることにするよ。それじゃあ君の世話係は……エリカにお願いしようか」
「」

…その名前を聞いて、私は自分でも顔が引きつるのがわかる…。
私は決してエリカさんの事が嫌いとか苦手とかそう言うわけじゃないけれど、二人でうまくやっていける自信があんまり…。

「…レベッカ?やっぱりやめとくか?」
「い、いえ!!全然大丈夫です!!」

これだけお世話になっているのに、私がわがままを言うわけになんて行かない。
任せてもらえる以上は、うまくやっていくしかないのだ。
私は自分の心にそう言い聞かせ、エリカさんのもとに向かうのだった。

――――

「きょ、今日からお世話になります!よろしくお願いします!」
「はぁ…。なんで私が…」

私の姿を見て、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべるエリカさん。
でも、それくらいの事は想定内だから気にしない!
こんなことでいちいち気がめいっていたら、侯爵様への恩返しなんてできないんだから!

「ま、まずはなにから始めればいいですか??」
「はぁ…。まずは掃除の事から教えるから、ついてきて」

エリカさんはそう言うと、私と目線を合わせることなく歩き出し始めた。
私は彼女に置いて行かれないよう、その後ろをぴったりついて追いかけていく。
…その間、私も彼女も全く言葉を交わすことは必ず、やっぱり嫌われてるのだろうかという思いが沸き上がってくる…。
でも、気にしないと決めたのだから今は頑張るしかない…!

「それじゃあ説明を始めるから、よく聞きなさいな」
「はい!」

目的の場所まで到着すると、エリカさんはぶっきらぼうな様子で機械的に説明を始めた。
今までやってきたやり方とはもちろんすべてが異なっているから、全部を新しく覚えることはなかなか大変…。
だけれど、私にも仕事の一端を任せてもらえることがうれしいという気持ちの方が勝っていた。

「わかった?説明したらもういいわよね」

さらーっと一連の流れを一度だけ説明し終わると、エリカさんは掃除用具を私に渡して少し距離の離れた位置にたたずんだ。
教えたことがきちんとできるかどうかを、その位置から観察するつもりなのだろう。
少し緊張する思いもあるけれど、見てもらえるというのならありがたかった。
後から何か言われるよりも、今この場で確認してもらえる方が間違いのないことだからだ。
私は彼女から説明を受けた通りに道具を準備し、言われた通りの手技で清掃に取り掛かったのだった。

――――

「…」

黙々と掃除を行う私の姿を後ろから見つめながら、エリカさんはやや不思議そうな表情を浮かべていた。
何か思うところがあったのだろうか??私は特に何か間違えたりはしていないはずだけれど…。

「…い、一度しか説明してないのによくそこまで…」

ぼそっと、彼女は一言そうつぶやいた。
…なんだ、そんなことを疑問に思っていたんだ。

「一度でも説明していただけたら十分ですよ!私が前いたところなんて、一度の説明もなしにやらなきゃいけないことがほとんどだったので!」
「???」

私の言葉を聞いて、エリカさんはぽかーんとした反応を見せる。
…まるで私の言ったことが本当だとは信じられないような様子だ。
けれど、それがまぎれもない私の過去。
お父様の所にいた時はそれが当たり前で、説明なんてされるほうが珍しかった。
…ていうよりも、そんなことが一度だってあっただろうかというレベル…。

「…じゃ、じゃあ次の説明を始めるわよ。ついてきなさい」
「はい!」

きりっとした口調でそう言うエリカさんだけれど、まだどこかさっきの驚きを隠せていない様子。
私はそんな彼女の後ろを再びついて歩いていくのだった。

――――

そして、エリカから仕事を教わるレベッカの事を遠目に見守る者の姿が…。

「……………」
「…なに見てるんですか、父上?」
「っ!?」
「レベッカの事が心配だから、壁ごしに彼女の姿を観察ですか?」
「ち、違う!!たまたまそこに彼女がいただけだ!人聞きの悪いことを言わんでくれ!誤解される!」
「はぁ…。心配なら直接話に行けばいいものを…」
「こ、この後私は会議があるからな!もう行くぞ!」
「やれやれ…」

どたどたと大きな足音をたてて、レベルクは立ち去っていった。
その後ろ姿を見つめながら、ラクスはどこかうれしそうなため息をつくのだった。
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