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第65話
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「…まさか、こんな形で決着を迎えることにあろうとは…」
非常に良い雰囲気で進められつつある式典の場において、会場の隅で一人寂しそうに言葉をつぶやく人物の姿があった。
今日の主役であるメリアとはかつて婚約者の関係であった、ハイデル元第二王子その人である。
「…彼女がこれほど多くのものに慕われていたとは…。これこそ、婚約破棄の場においてメリアが僕に言い放った言葉の正体と言うわけか…」
自分を婚約破棄などしない方が良い、そうしてしまえば王宮は大きな混乱に包まれ、きっと後悔することとなる。
メリアは婚約破棄を告げられたその場で、はっきりとした口調でそう言葉を返した。
「最初はただの強がりだと思っていたんだが…。まさかあれが本心から出ていた言葉だったとはね…」
その後の顛末は言うまでもない。
彼女はこの国における非常に多くの者たちから慕われており、第二王子の婚約者だったからこそ落ち着いていた彼女の争奪戦は、婚約破棄をきっかけにして開戦を迎えることとなったのだった。
「…しかも、その果てに用済みとなったこの僕の事をこうして王宮に残すなどと…。もしかしたらメリアは、最初からこうなることが分かっていたとでも言うのか…?」
「分かっていたさ」
「!?!?」
ぼそぼそと独り言をつぶやいていたハイデルのもとに、一人の男が声をかけた。
ハイデルにとっては兄に当たり、第一王子として国の頂点に君臨しているエルクその人である。
「エ、エルクお兄様…!?」
「ハイデル、逃した獲物は大きいぞ?あんなに度胸があって政治的な駆け引きに長けている女を、俺はこれまで見たことがない」
「そ、それは……」
その点は、もはやハイデルも素直に痛感しているところであった。
果たしてメリア本人が狙っているのかどうかは別にして、少なくとも彼女の思った通りに事が運ばれて行っていることは他でもない事実なのだから。
「…エルクお兄様、改めて感謝の言葉を言わせてください。僕がこうしてこの王宮に残ることができるよう、国王様に取り計らってくださったのでしょう?」
「それは俺じゃない、メリアだとも」
「しかし、その間を取り持ったのはお兄様だと…」
「だとしても、俺は間を取り持っただけ。話をしたのはメリアだとも」
「……」
エルクは軽い口調でそう言葉を発すると、机の上に置かれた料理に手を伸ばし、そのまま口に運んで平らげる。
小さな声で料理の感想を口にしながら、この状況を心から楽しんでいるような様子だった。
一方のハイデルはまだ固い様子で、いまだ少し動揺しているような様子だった。
「…僕は、やはり間違っていたようですね…。メリアがここまで大きな存在になってしまうことになろうとは…」
「あぁ、まったくだな。いったい何を間違えたらメリアよりもアリッサを選びに行くのか、俺には想像もつかない」
アリッサはすでに王宮を追われ、その立場を失っている。
そしてアリッサを選んだことの愚かさはすでにハイデルも自覚しており、その思いを隠すつもりもなかった。
「最初はかわいいと思ったのですが…。僕には人を見る目が全くなかったようです…」
「あぁ、まったくだな。俺なら絶対にそんな判断はしなかった」
エルクは軽い口調でそう言葉を発し、ハイデルに少しくぎをさす。
しかしその後、変わらぬ口調でこう言葉を続けた。
「だからこそ、お前にはこれから今までのマイナス分を取り戻してもらわなければならない。お前は腐っても元第二王子なのだ。この王宮に残って仕事をするというのなら、今度こそメリアのために動いてもらわなければならない」
「はい、分かっています…。僕に何ができるのかも今はまだわかりませんが…」
「まぁ、それはいずれ分かるだろうさ」
エルクはそう言葉を告げると、そのままハイデルの元を去っていった。
彼の向かった先には、多くの人に囲まれるメリアの姿がある。
「…メリア、一体君は…」
自分が一度は壊してしまったその光景。
それを再び見つめながら、ハイデルはその心の中に様々な思いを抱くのだった。
非常に良い雰囲気で進められつつある式典の場において、会場の隅で一人寂しそうに言葉をつぶやく人物の姿があった。
今日の主役であるメリアとはかつて婚約者の関係であった、ハイデル元第二王子その人である。
「…彼女がこれほど多くのものに慕われていたとは…。これこそ、婚約破棄の場においてメリアが僕に言い放った言葉の正体と言うわけか…」
自分を婚約破棄などしない方が良い、そうしてしまえば王宮は大きな混乱に包まれ、きっと後悔することとなる。
メリアは婚約破棄を告げられたその場で、はっきりとした口調でそう言葉を返した。
「最初はただの強がりだと思っていたんだが…。まさかあれが本心から出ていた言葉だったとはね…」
その後の顛末は言うまでもない。
彼女はこの国における非常に多くの者たちから慕われており、第二王子の婚約者だったからこそ落ち着いていた彼女の争奪戦は、婚約破棄をきっかけにして開戦を迎えることとなったのだった。
「…しかも、その果てに用済みとなったこの僕の事をこうして王宮に残すなどと…。もしかしたらメリアは、最初からこうなることが分かっていたとでも言うのか…?」
「分かっていたさ」
「!?!?」
ぼそぼそと独り言をつぶやいていたハイデルのもとに、一人の男が声をかけた。
ハイデルにとっては兄に当たり、第一王子として国の頂点に君臨しているエルクその人である。
「エ、エルクお兄様…!?」
「ハイデル、逃した獲物は大きいぞ?あんなに度胸があって政治的な駆け引きに長けている女を、俺はこれまで見たことがない」
「そ、それは……」
その点は、もはやハイデルも素直に痛感しているところであった。
果たしてメリア本人が狙っているのかどうかは別にして、少なくとも彼女の思った通りに事が運ばれて行っていることは他でもない事実なのだから。
「…エルクお兄様、改めて感謝の言葉を言わせてください。僕がこうしてこの王宮に残ることができるよう、国王様に取り計らってくださったのでしょう?」
「それは俺じゃない、メリアだとも」
「しかし、その間を取り持ったのはお兄様だと…」
「だとしても、俺は間を取り持っただけ。話をしたのはメリアだとも」
「……」
エルクは軽い口調でそう言葉を発すると、机の上に置かれた料理に手を伸ばし、そのまま口に運んで平らげる。
小さな声で料理の感想を口にしながら、この状況を心から楽しんでいるような様子だった。
一方のハイデルはまだ固い様子で、いまだ少し動揺しているような様子だった。
「…僕は、やはり間違っていたようですね…。メリアがここまで大きな存在になってしまうことになろうとは…」
「あぁ、まったくだな。いったい何を間違えたらメリアよりもアリッサを選びに行くのか、俺には想像もつかない」
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そしてアリッサを選んだことの愚かさはすでにハイデルも自覚しており、その思いを隠すつもりもなかった。
「最初はかわいいと思ったのですが…。僕には人を見る目が全くなかったようです…」
「あぁ、まったくだな。俺なら絶対にそんな判断はしなかった」
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しかしその後、変わらぬ口調でこう言葉を続けた。
「だからこそ、お前にはこれから今までのマイナス分を取り戻してもらわなければならない。お前は腐っても元第二王子なのだ。この王宮に残って仕事をするというのなら、今度こそメリアのために動いてもらわなければならない」
「はい、分かっています…。僕に何ができるのかも今はまだわかりませんが…」
「まぁ、それはいずれ分かるだろうさ」
エルクはそう言葉を告げると、そのままハイデルの元を去っていった。
彼の向かった先には、多くの人に囲まれるメリアの姿がある。
「…メリア、一体君は…」
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