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第60話
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「……」
「……」
王都全体を見渡すことが出来る大きな大きな屋敷。
その中にあるきらびやかな部屋の中に、厳かな雰囲気に包まれる二人の男性があった。
一人はハイデルであり、彼は椅子に腰かけながらも自身の顔を完全に机の方に伏せ、その体を恐怖からか小刻みに震わせていた。
そして一方、そんなハイデルと相対しているのは、彼にとって実の父でありかつ、この国において絶大な影響力と権力を有している存在である、シュラフ国王であった。
「ハイデル、なにを震え上がる必要がある。お前はもうすべての責任から解放され、なにもしなくてもよくなったのだ。ならもっと喜んだらどうだ?」
「申し訳ありません…申し訳ありません…申し訳ありません…」
第二王子としての立場を退くこととなった事を暗に示すシュラフ。
低い口調でそう言葉を発するその姿は、今のハイデルにとってこの上ないほどの恐怖の対象であったことだろう。
「…お前には期待をかけ、第二王子の立場と第二王宮をそのまま譲り渡してやったというのに…。まさかこんな形で期待を裏切られてしまうとはな…」
「申し訳ありません…申し訳ありません…申し訳ありません…」
ハイデルが最も恐れていた事、それはエルクとシュラフの両方から自分の行いを叱責され、その果てにすべてを失う事であった。
ハイデルはそれだけは実現しないよう必死に立ち回ってきたのであったが、結局そうなる運命からは逃げきれなかった様子…。
「謝られてばかりでも困るな。ハイデル、きちんとお前の口から説明をしてもらわなければ何も分からない。さぁ、話してくれ。お前がやったことのすべてをな」
「申し訳ありません…申し訳ありません…申し訳ありません…」
この状況においてハイデルになにか言い訳をするだけの勇気があるはずもなく、彼は変わらず謝罪の言葉を淡々と口にすることしかできなかった。
「…まぁ良い。すでにエルクには言ってあるが、お前の処遇はこちらで決めさせてもらった。不満があるならこの場で私に言い返してほしいが、問題ないな?」
「は、はい…。どのような処分でも、僕は真摯に受け取る覚悟でいます…」
ハイデルは自身の進退についての覚悟をすでに持っていた。
第二王子としての立場を失う事はすでに決定的であり、それが実現したならもはやハイデルに第二王宮に居場所はない。
それはつまり、王宮からの永久追放となることを暗に意味していた。
「おっと、その前にアリッサに関しての報告をしておかなければな。彼女は第二王宮を混乱に陥れたことを重大な罪と認め、これまでお前によって与えられていた全権の剥奪と、この王宮からの永久追放とすることが決まった。もう彼女は二度とお前の前に姿を現すことはないだろう」
「……」
先にアリッサの処遇から告げたという事は、自分もそうなることを覚悟せよ、という国王からのメッセージなのか。
それとも、彼女がこうなのだからお前はそれ以上の罪となることを心せよ、という意味なのか。
いずれにしてもその言葉は、これまで以上にハイデルの心を鋭くえぐることとなった事に違いはなかった。
「さて、ではお前に処分を告げる。心して聞くように」
「……」
いよいよ、ハイデルにとっての最期の瞬間が訪れる。
国王からの言葉を待つまでの彼の心の中は、それはそれはいろいろな思いが複雑にうごめいていたことだろう。
もしかしたら今の状況は、彼がこれまで第二王子として経験してきたものの中で最も恐怖と言える瞬間だったかもしれない。
しかし、今のハイデルに逃げることは許されない。
全ては自分の不徳から始まった事態であり、受け入れなければならない運命なのだから。
「ハイデル、お前は第二王子の立場を退くこととし、そのまま第二王宮に仕える使用人として働いてもらう。以上」
「………え?」
非常にさっぱりとした雰囲気でそう言葉告げる国王の姿に、ハイデルはあっけにとられたような表情を浮かべる。
それもそのはず、この状況は誰がどう考えても非常に重い罰が告げられる雰囲気そのものであり、現実に国王から告げられた内容はその雰囲気とは全く合致していなかったのだから。
「……そ、それだけなのですか?ぼ、僕は王宮を永久追放されるか、そのままどこかに収容されたって文句の言えない立場なのですよ…??そ、それがどうして…どうしてこのような結果に……」
あまりに軽すぎる罰の前に、ハイデルは妙な動揺を抑えられない。
国王はそんなハイデルの姿をただ黙ってじっと見つめるのみであったが、しばらくの時間が経過した後、その口をゆっくりと開きはじめ、罰がその内容に至った詳細な理由を話し始めるのだった。
「……」
王都全体を見渡すことが出来る大きな大きな屋敷。
その中にあるきらびやかな部屋の中に、厳かな雰囲気に包まれる二人の男性があった。
一人はハイデルであり、彼は椅子に腰かけながらも自身の顔を完全に机の方に伏せ、その体を恐怖からか小刻みに震わせていた。
そして一方、そんなハイデルと相対しているのは、彼にとって実の父でありかつ、この国において絶大な影響力と権力を有している存在である、シュラフ国王であった。
「ハイデル、なにを震え上がる必要がある。お前はもうすべての責任から解放され、なにもしなくてもよくなったのだ。ならもっと喜んだらどうだ?」
「申し訳ありません…申し訳ありません…申し訳ありません…」
第二王子としての立場を退くこととなった事を暗に示すシュラフ。
低い口調でそう言葉を発するその姿は、今のハイデルにとってこの上ないほどの恐怖の対象であったことだろう。
「…お前には期待をかけ、第二王子の立場と第二王宮をそのまま譲り渡してやったというのに…。まさかこんな形で期待を裏切られてしまうとはな…」
「申し訳ありません…申し訳ありません…申し訳ありません…」
ハイデルが最も恐れていた事、それはエルクとシュラフの両方から自分の行いを叱責され、その果てにすべてを失う事であった。
ハイデルはそれだけは実現しないよう必死に立ち回ってきたのであったが、結局そうなる運命からは逃げきれなかった様子…。
「謝られてばかりでも困るな。ハイデル、きちんとお前の口から説明をしてもらわなければ何も分からない。さぁ、話してくれ。お前がやったことのすべてをな」
「申し訳ありません…申し訳ありません…申し訳ありません…」
この状況においてハイデルになにか言い訳をするだけの勇気があるはずもなく、彼は変わらず謝罪の言葉を淡々と口にすることしかできなかった。
「…まぁ良い。すでにエルクには言ってあるが、お前の処遇はこちらで決めさせてもらった。不満があるならこの場で私に言い返してほしいが、問題ないな?」
「は、はい…。どのような処分でも、僕は真摯に受け取る覚悟でいます…」
ハイデルは自身の進退についての覚悟をすでに持っていた。
第二王子としての立場を失う事はすでに決定的であり、それが実現したならもはやハイデルに第二王宮に居場所はない。
それはつまり、王宮からの永久追放となることを暗に意味していた。
「おっと、その前にアリッサに関しての報告をしておかなければな。彼女は第二王宮を混乱に陥れたことを重大な罪と認め、これまでお前によって与えられていた全権の剥奪と、この王宮からの永久追放とすることが決まった。もう彼女は二度とお前の前に姿を現すことはないだろう」
「……」
先にアリッサの処遇から告げたという事は、自分もそうなることを覚悟せよ、という国王からのメッセージなのか。
それとも、彼女がこうなのだからお前はそれ以上の罪となることを心せよ、という意味なのか。
いずれにしてもその言葉は、これまで以上にハイデルの心を鋭くえぐることとなった事に違いはなかった。
「さて、ではお前に処分を告げる。心して聞くように」
「……」
いよいよ、ハイデルにとっての最期の瞬間が訪れる。
国王からの言葉を待つまでの彼の心の中は、それはそれはいろいろな思いが複雑にうごめいていたことだろう。
もしかしたら今の状況は、彼がこれまで第二王子として経験してきたものの中で最も恐怖と言える瞬間だったかもしれない。
しかし、今のハイデルに逃げることは許されない。
全ては自分の不徳から始まった事態であり、受け入れなければならない運命なのだから。
「ハイデル、お前は第二王子の立場を退くこととし、そのまま第二王宮に仕える使用人として働いてもらう。以上」
「………え?」
非常にさっぱりとした雰囲気でそう言葉告げる国王の姿に、ハイデルはあっけにとられたような表情を浮かべる。
それもそのはず、この状況は誰がどう考えても非常に重い罰が告げられる雰囲気そのものであり、現実に国王から告げられた内容はその雰囲気とは全く合致していなかったのだから。
「……そ、それだけなのですか?ぼ、僕は王宮を永久追放されるか、そのままどこかに収容されたって文句の言えない立場なのですよ…??そ、それがどうして…どうしてこのような結果に……」
あまりに軽すぎる罰の前に、ハイデルは妙な動揺を抑えられない。
国王はそんなハイデルの姿をただ黙ってじっと見つめるのみであったが、しばらくの時間が経過した後、その口をゆっくりと開きはじめ、罰がその内容に至った詳細な理由を話し始めるのだった。
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