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第57話
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「話は決した。ハイデル、アリッサ、お前たち二人はそろってこの第二王宮から立ち去ってもらうこととする。異論があれば聞き入れるが、何か言いたいことがあるか?」
「「……」」
状況は完全に決着してしまっていた。
もはや彼ら二人にエルクに反論するだけの勇気や根拠があるはずもなく、味方をしてくれる者がいるわけでもなかった。
「まぁ、今まで好き勝手なことをやってきたんだ。もう十分楽しんだだろう?」
「エ、エルクお兄様……」
ハイデルは完全に憔悴《しょうすい》しきった表情を浮かべ、エルクの方に視線を返す。
そこにもはや第二王子に執着するだけの気力は一切感じられず、彼はただ黙って兄からの言葉を受け入れる覚悟を示していた。
「アリッサ、君とハイデルは婚約破棄なき関係を誓い合っているのだろう?だったらこれから先も君たち二人は一緒にいるべきだろう?俺はなにか間違ったことを言っているか?」
「そ、それは……」
それは、ハイデルの事をつなぎとめる切り札としてアリッサが発した言葉。
しかしそれが今や、彼女とハイデルを縛る呪いの言葉のように性質を変えていた。
もっとも、その誓いが交わされたことは事実であるため、そこに偽りはなにもないのだが…。
「心配はいらない。ハイデル、お前は婚約式典の場で言っていたじゃないか。アリッサと自分は、真実の愛によって結ばれた関係なのだと。第二王子としての立場は今日をもって失うこととなるわけだが、お前には真実の愛が残るのだろう?ならそれで十分だとは思わないか?」
「は、はい…。お、おっしゃる通りです……」
かつて自分の発した言葉たちが、今になってそのまま跳ね返ってくる。
まさにブーメランと呼ぶべきこれらの光景に、この場にいる者たちも感嘆に似た声を上げる。
「エルク様、弟相手でも容赦ないなぁ…。きつい言葉連発だ」
「まぁ、仕方ないだろう。結局全部ハイデル様とアリッサ様のまいた種なんだから…」
「そりゃあハイデル様が頭があがらないわけだよなぁ。今まであらゆる人たちを見下し続けてきたハイデル様だが、エルク様と国王様にだけは何にも言えてなかったもんなぁ…」
第二王子がその座を下ろされるという決定的瞬間を目撃することができたからか、なかなかそれまでにないようなテンションになっている様子の貴族家の者たち。
しかし、すでにハイデルは自分たちの上に立つ存在ではないため、敬称を使う必要は一切ないのだが、それでも呼び方を変えられないのは貴族家のさがなのか、こだわりなのか…。
「ハイデル、お前はこのままアリッサを連れて、国王様のもとに向かってもらう。お前たちと今すぐ話がしたいと、それはそれはお怒りだったぞ」
「「……」」
その言葉を聞き、二人は何も言葉を返さないながらも、その表情は完全に恐怖心に支配されていた。
…これほどまでに好き勝手をした挙句、威厳ある国王様に呼び出しを受けるということが何を意味することであるのか、二人はもうすでに察しているからだ。
「クリフォード、道中の護衛は騎士に任せる。適切な人材を選抜し、任務に当たらせてくれ」
「承知した。おい、レイ、カサル、仕事だ。行ってこい」
「りょ、了解です!」
クリフォードはこう言われることを予期していたのか、すでに数名の部下たちをすぐそばに手配していた。
クリフォードは彼らに向け速やかに指示を送ると、騎士たちはハイデルとアリッサの身を取り囲み、そのまま部屋の外へ向かって誘導していく。
「出てけ出てけ!!ざまぁみろ!!もう二度とここに帰ってくるな!!」
うつむくハイデルとアリッサに向け、どうしてか元気を取り戻した様子のタイラントが荒々しい口調でそう言葉を投げかける。
…自分はもう許された側の人間だとでも思っているのだろうか?
「おいクリフォード、そこに忘れ物があるぞ」
「あぁ、これは失礼」
「ちょ、ちょっと!!!なんでだって!!!」
その後、クリフォードはささっと部下たちに指示を送り、タイラントも身もまた速やかに部屋の外に連れ出させていった。
結果、この場からはすべての問題児が連れ出されていったこととなり、彼らの退散をもってこの場における混乱は一応の決着を見せた。
「さて、メリア。まだ話が終わっていなかったな。君の今後についてなのだが」
「はい、なんでしょうか?」
あれほどの動乱があったにもかかわらず、相変わらずけろっとした表情を浮かべているメリア。
対面するエルクは、それでこそ君だ、といいたげなうれしそうな表情を見せながら、こう言葉を続けた。
「アリッサが言っていた、ハイデルの後を自分が継ぐという計画。結局それは実現することなく消えていったわけだが、アイディアは面白いと思った。そこで、だ」
エルクはメリアの目をはっきりと見据えながら、こう言葉を告げた。
「メリア、君こそが第二王子の後を継ぎ、皇女となるのはどうだ?」
「「……」」
状況は完全に決着してしまっていた。
もはや彼ら二人にエルクに反論するだけの勇気や根拠があるはずもなく、味方をしてくれる者がいるわけでもなかった。
「まぁ、今まで好き勝手なことをやってきたんだ。もう十分楽しんだだろう?」
「エ、エルクお兄様……」
ハイデルは完全に憔悴《しょうすい》しきった表情を浮かべ、エルクの方に視線を返す。
そこにもはや第二王子に執着するだけの気力は一切感じられず、彼はただ黙って兄からの言葉を受け入れる覚悟を示していた。
「アリッサ、君とハイデルは婚約破棄なき関係を誓い合っているのだろう?だったらこれから先も君たち二人は一緒にいるべきだろう?俺はなにか間違ったことを言っているか?」
「そ、それは……」
それは、ハイデルの事をつなぎとめる切り札としてアリッサが発した言葉。
しかしそれが今や、彼女とハイデルを縛る呪いの言葉のように性質を変えていた。
もっとも、その誓いが交わされたことは事実であるため、そこに偽りはなにもないのだが…。
「心配はいらない。ハイデル、お前は婚約式典の場で言っていたじゃないか。アリッサと自分は、真実の愛によって結ばれた関係なのだと。第二王子としての立場は今日をもって失うこととなるわけだが、お前には真実の愛が残るのだろう?ならそれで十分だとは思わないか?」
「は、はい…。お、おっしゃる通りです……」
かつて自分の発した言葉たちが、今になってそのまま跳ね返ってくる。
まさにブーメランと呼ぶべきこれらの光景に、この場にいる者たちも感嘆に似た声を上げる。
「エルク様、弟相手でも容赦ないなぁ…。きつい言葉連発だ」
「まぁ、仕方ないだろう。結局全部ハイデル様とアリッサ様のまいた種なんだから…」
「そりゃあハイデル様が頭があがらないわけだよなぁ。今まであらゆる人たちを見下し続けてきたハイデル様だが、エルク様と国王様にだけは何にも言えてなかったもんなぁ…」
第二王子がその座を下ろされるという決定的瞬間を目撃することができたからか、なかなかそれまでにないようなテンションになっている様子の貴族家の者たち。
しかし、すでにハイデルは自分たちの上に立つ存在ではないため、敬称を使う必要は一切ないのだが、それでも呼び方を変えられないのは貴族家のさがなのか、こだわりなのか…。
「ハイデル、お前はこのままアリッサを連れて、国王様のもとに向かってもらう。お前たちと今すぐ話がしたいと、それはそれはお怒りだったぞ」
「「……」」
その言葉を聞き、二人は何も言葉を返さないながらも、その表情は完全に恐怖心に支配されていた。
…これほどまでに好き勝手をした挙句、威厳ある国王様に呼び出しを受けるということが何を意味することであるのか、二人はもうすでに察しているからだ。
「クリフォード、道中の護衛は騎士に任せる。適切な人材を選抜し、任務に当たらせてくれ」
「承知した。おい、レイ、カサル、仕事だ。行ってこい」
「りょ、了解です!」
クリフォードはこう言われることを予期していたのか、すでに数名の部下たちをすぐそばに手配していた。
クリフォードは彼らに向け速やかに指示を送ると、騎士たちはハイデルとアリッサの身を取り囲み、そのまま部屋の外へ向かって誘導していく。
「出てけ出てけ!!ざまぁみろ!!もう二度とここに帰ってくるな!!」
うつむくハイデルとアリッサに向け、どうしてか元気を取り戻した様子のタイラントが荒々しい口調でそう言葉を投げかける。
…自分はもう許された側の人間だとでも思っているのだろうか?
「おいクリフォード、そこに忘れ物があるぞ」
「あぁ、これは失礼」
「ちょ、ちょっと!!!なんでだって!!!」
その後、クリフォードはささっと部下たちに指示を送り、タイラントも身もまた速やかに部屋の外に連れ出させていった。
結果、この場からはすべての問題児が連れ出されていったこととなり、彼らの退散をもってこの場における混乱は一応の決着を見せた。
「さて、メリア。まだ話が終わっていなかったな。君の今後についてなのだが」
「はい、なんでしょうか?」
あれほどの動乱があったにもかかわらず、相変わらずけろっとした表情を浮かべているメリア。
対面するエルクは、それでこそ君だ、といいたげなうれしそうな表情を見せながら、こう言葉を続けた。
「アリッサが言っていた、ハイデルの後を自分が継ぐという計画。結局それは実現することなく消えていったわけだが、アイディアは面白いと思った。そこで、だ」
エルクはメリアの目をはっきりと見据えながら、こう言葉を告げた。
「メリア、君こそが第二王子の後を継ぎ、皇女となるのはどうだ?」
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