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第54話
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「ハイデル様ったら、正直ざまぁないわね…」
その時、一人の女の声が静かな会場の中でつぶやかれた。
ハイデルとは相思相愛の婚約者であったはずの、アリッサのものである。
「ハイデル様、正直今私は嬉しく思っています。私との約束をなにも守ってくれなかったあなたが、エルク様からこうして直々に天罰を与えられているんですもの。私の前ではあれほど偉そうにされていたというのに、エルク様の前では何も言い返せず…。本当にみっともないですわ」
非常に辛口な言葉を発するアリッサであるものの、その言葉はどこか自分自身の事を刺しているようにも聞き取れる…。
「どの口が言うのか…。自分だってハイデル様が劣勢になった途端に偉そうな口ぶりを浮かべているじゃないか…」
「ほら見ろ、やっぱり私の言った通りだっただろう?王宮をいさめるにふさわしいのはやっぱりアリッサ様ではなくメリア様だったのだと…」
「そんなことは貴族ならみんな分かってたことだとも。まぁもっとも、当の第二王子だけは分かってなかったみたいだけど…」
集まった貴族家の者たちはアリッサのその雰囲気を見て、ぼそぼそとそう感想を漏らす。
彼らの考えは貴族家の者たちの中では広く共通認識であり、それゆえにハイデルの事をかばって手を上げる者も存在しなかったのだった。
「…クリフォード様、見ましたかあれ?」
「あぁ。ようやく本性を現したって感じだな」
「ハイデル様…。だから私を婚約破棄するのはやめておいた方が良いですよって言ったのに…」
フューゲル、クリフォード、メリアの三人もまた、貴族たちの言葉に続いてそう言葉を漏らした。
アリッサが地雷人物であろうことはすでに気づいていたためか、今のアリッサの姿に対して驚きを見せることはなく、ただただ淡々とそれぞれの率直な思いを口にしていた。
そんな中、アリッサは今度はエルクの方へと視線を移すと、どこか甘い口調でこう言葉を発した。
「ねぇエルク様、ハイデル様を第二王子の座から下げるというご判断、この私も賛成でございます」
「ア、アリッサ…。君は…君は僕の事を思ってくれていたんじゃ…」
悲痛そうな顔を浮かべながらハイデルはそう言葉を漏らすが、もはやアリッサはハイデルに事などに構わない。
「エルク様、私はハイデル様の妃である身、ハイデル様が犯してしまった罪は私が償わなければなりません。そこで、一つお願いがあるのです」
「なんだ?」
アリッサはほんの少しの間を置き、ゆっくりと深呼吸をする。
その後、この場にいる者たちが全員絶句する言葉を発した。
「この私を、ハイデル様の後継者としていただきたいのです」
「「なっ!?!?!?!?!?」」
この予測不能な言葉の前には、さすがのハイデルやクリフォードたちも驚きの表情を隠せない。
ついさきほどまでハイデルの事を利用していたかと思えば、今度はハイデルの事を切り捨てて自分がその後の座につこうというのだから。
「エルク様、私の事を信じてください。私はハイデル様が散らかしたこの第二王宮を、必ずや綺麗にまとめ上げて見せます。私だってハイデル様の隣で毎日必死に勉強を積んできました。お役に立てる自信はあります。エルク様は非常に優秀な王子様ですから、きっとお仕事で立て込んでおられることでしょう。そんなお方に、この第二王宮の仕事まで任せるわけにはいかないというものです。エルク様、この私をハイデル様の後継者、つまり王女として席に座ることを認めていただきたいのです」
アリッサは非常に自身に満ち溢れた様子で、エルクに対してそう言葉を放った。
最後には婚約者として自分の事をかばってくれるのではないかというハイデルの期待は完全に砕け散り、一方のアリッサはすでに自分が王女であるかのような表情を浮かべている。
あまりに現実離れしたその要求の内容に、会場の一同は静まり返る。
人々の視線はそのままエルクのもとに向けられ、彼がなんと返事をするのかに注目が集まる。
…が、その時、クリフォードとフューゲルは互いに顔を見合わせてうなずきあうと、そのまま静かにどこかへと歩き始める。
「お、お二人とも、どちらに?」
小さな声でそう二人に問いかけたメリアに対し、二人は簡単な会釈をして返事をするにとどめ、どこに向かうのかは口にしなかった。
「アリッサ、君の話はよく分かった。ではこの場で、俺の判断を伝えることとしよう」
「はい、ぜひお願いいたします」
相変わらず自信に満ち溢れている様子のアリッサ。
そこにはいずれ自分がエルク第一王子の隣に立つという思惑もあるのかもしれない…。
そんなアリッサに対し、エルクはそれまでと変わらぬ非常に冷静な口調でこう言葉を返した。
その時、一人の女の声が静かな会場の中でつぶやかれた。
ハイデルとは相思相愛の婚約者であったはずの、アリッサのものである。
「ハイデル様、正直今私は嬉しく思っています。私との約束をなにも守ってくれなかったあなたが、エルク様からこうして直々に天罰を与えられているんですもの。私の前ではあれほど偉そうにされていたというのに、エルク様の前では何も言い返せず…。本当にみっともないですわ」
非常に辛口な言葉を発するアリッサであるものの、その言葉はどこか自分自身の事を刺しているようにも聞き取れる…。
「どの口が言うのか…。自分だってハイデル様が劣勢になった途端に偉そうな口ぶりを浮かべているじゃないか…」
「ほら見ろ、やっぱり私の言った通りだっただろう?王宮をいさめるにふさわしいのはやっぱりアリッサ様ではなくメリア様だったのだと…」
「そんなことは貴族ならみんな分かってたことだとも。まぁもっとも、当の第二王子だけは分かってなかったみたいだけど…」
集まった貴族家の者たちはアリッサのその雰囲気を見て、ぼそぼそとそう感想を漏らす。
彼らの考えは貴族家の者たちの中では広く共通認識であり、それゆえにハイデルの事をかばって手を上げる者も存在しなかったのだった。
「…クリフォード様、見ましたかあれ?」
「あぁ。ようやく本性を現したって感じだな」
「ハイデル様…。だから私を婚約破棄するのはやめておいた方が良いですよって言ったのに…」
フューゲル、クリフォード、メリアの三人もまた、貴族たちの言葉に続いてそう言葉を漏らした。
アリッサが地雷人物であろうことはすでに気づいていたためか、今のアリッサの姿に対して驚きを見せることはなく、ただただ淡々とそれぞれの率直な思いを口にしていた。
そんな中、アリッサは今度はエルクの方へと視線を移すと、どこか甘い口調でこう言葉を発した。
「ねぇエルク様、ハイデル様を第二王子の座から下げるというご判断、この私も賛成でございます」
「ア、アリッサ…。君は…君は僕の事を思ってくれていたんじゃ…」
悲痛そうな顔を浮かべながらハイデルはそう言葉を漏らすが、もはやアリッサはハイデルに事などに構わない。
「エルク様、私はハイデル様の妃である身、ハイデル様が犯してしまった罪は私が償わなければなりません。そこで、一つお願いがあるのです」
「なんだ?」
アリッサはほんの少しの間を置き、ゆっくりと深呼吸をする。
その後、この場にいる者たちが全員絶句する言葉を発した。
「この私を、ハイデル様の後継者としていただきたいのです」
「「なっ!?!?!?!?!?」」
この予測不能な言葉の前には、さすがのハイデルやクリフォードたちも驚きの表情を隠せない。
ついさきほどまでハイデルの事を利用していたかと思えば、今度はハイデルの事を切り捨てて自分がその後の座につこうというのだから。
「エルク様、私の事を信じてください。私はハイデル様が散らかしたこの第二王宮を、必ずや綺麗にまとめ上げて見せます。私だってハイデル様の隣で毎日必死に勉強を積んできました。お役に立てる自信はあります。エルク様は非常に優秀な王子様ですから、きっとお仕事で立て込んでおられることでしょう。そんなお方に、この第二王宮の仕事まで任せるわけにはいかないというものです。エルク様、この私をハイデル様の後継者、つまり王女として席に座ることを認めていただきたいのです」
アリッサは非常に自身に満ち溢れた様子で、エルクに対してそう言葉を放った。
最後には婚約者として自分の事をかばってくれるのではないかというハイデルの期待は完全に砕け散り、一方のアリッサはすでに自分が王女であるかのような表情を浮かべている。
あまりに現実離れしたその要求の内容に、会場の一同は静まり返る。
人々の視線はそのままエルクのもとに向けられ、彼がなんと返事をするのかに注目が集まる。
…が、その時、クリフォードとフューゲルは互いに顔を見合わせてうなずきあうと、そのまま静かにどこかへと歩き始める。
「お、お二人とも、どちらに?」
小さな声でそう二人に問いかけたメリアに対し、二人は簡単な会釈をして返事をするにとどめ、どこに向かうのかは口にしなかった。
「アリッサ、君の話はよく分かった。ではこの場で、俺の判断を伝えることとしよう」
「はい、ぜひお願いいたします」
相変わらず自信に満ち溢れている様子のアリッサ。
そこにはいずれ自分がエルク第一王子の隣に立つという思惑もあるのかもしれない…。
そんなアリッサに対し、エルクはそれまでと変わらぬ非常に冷静な口調でこう言葉を返した。
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