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第45話
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「(な、なんでメリアがこんなところに!?閉じ込めていたはずじゃないのか!?)」
その場にいるはずのないメリアの姿を見て、タイラントは課題を進める自身の手を完全に停止させる。
目の前で起こっていることに対して理解が追い付かず、完全にフリーズしてしまっている様子だった。
「(ま、まさかメリアが自力であそこから脱出したのか…??いや、そんなはずはない…。ガードは完ぺきだったはずの上、あんなひ弱な女がたった一人でここまでたどり着けるはずがない…)」
しかし、タイラントはメリアの隣に立つ者の存在を見て瞬時に答えにたどり着く。
「(メリアと一緒に、クリフォードが…?ま、まさか…まさかあいつ、メリアを取り戻すために僕の手下たちの所に乗り込んできたのか…!?それでメリアを連れ出して、はるばるここまで来たっていうのか…!?)」
心の中で着々と動揺を大きくしていくタイラント。
それは彼のみならず、様子を見守っていたハイデル、さらには対戦相手のフューゲルまでも同じであった。
「(メ、メリア、一体何しにここまで来たのだ…!?クリフォードの奴が連れてきたのか?全くあいつらはどこまで僕の邪魔を…!どうして第二王子である僕のいう事を素直に聞けないのだ…!!)」
「(メリア…!?連れ去られてしまっていたはずじゃ…!?)」
ハイデルの方はメリアが連れ去られてしまっていた事自体知らないため、彼女がこの場に現れることの不可解さを理解できないでいた。
一方、フューゲルの方はすべての事情を理解していたため、この場にメリアが現れたことの不可解さをきちんと理解し、またクリフォードの存在からすぐにその理由を察した。
2人は互いに課題に取り掛かる手を止め、揃ってメリアやクリフォードの方に視線を移す。
そんな彼らの視線に応えるかのように、クリフォードが堂々とした雰囲気でこう言葉を発した。
「やれやれ、自分の事を大きく見せたいからといって、ちょっとばかり非道なやり方に手を染めてしまったのではないか、タイラント様?」
「っ!?」
タイラントは分かりやすく自身の体をびくっと反応させ、クリフォードの方から目を背ける。
しかしクリフォードはそんなタイラントに構わず、そのまま強い口調でこう言葉を続ける。
「フューゲルがメリアに気があるという事を知って、その上でメリアの事を一方的に誘拐し、無事に返してほしかったら自分との勝負にわざと負けろだなんて、真っ当な男ならなかなかできることじゃないよな。大したもんだぜ」
「っ!?!?!?!?!?」
その言葉を聞き、タイラントは一段と強く自身の体を震わせる。
この場にいる誰もが、タイラントがなんと言葉を返すことに注目したものの、クリフォードのその言葉に返事を返したのはハイデルだった。
「ど、どういうことだクリフォード!?それは事実なのか!?」
「事実ですよハイデル様。騎士として嘘を言ったりはしません。この俺がこの目で見たのですから」
「そ、それじゃあ……それじゃあタイラント、お前は私に一泡吹かせるために、わざわざこんな手の込んだ茶番をしたのか?」
「……!?」
「どうなんだタイラント!答えろ!」
「……!!!」
ハイデルからの叱責ともとれるほどの口調の言葉の前に、タイラントは自身の口を閉じたままだった。
…それからしばしの間、会場は重い沈黙の空気に包まれる。
この場の空気はこれからどのようになっていくのかと、誰もが心の中に不安感を抱いていく中、タイラントは絞り出すような口調でこう言葉をつぶやいた。
「…ハイデル様、全てはハイデル様のためなのです…」
「…信用できると思うのか?誰の目にもお前が自分のためにやった事のようにしか見えないが?」
「違うのです……私の真の目的は、勝負に勝利することではなかったのです。私の真の目的は、王宮の宝であるフューゲル様から、メリアの事を引き離すことにあったのです…!」
「……ほぅ」
ハイデルの言った通り、今回の一件は誰の目にもタイラントが自分のためにやった事のように思われた。
しかし、この場でとっさに放ったタイラントの言い訳は、ハイデルにとっても非常に都合のいいものであった…。
「なるほど、であればお前はフューゲル君の心をもてあそぶメリアの事が許せず、二人の関係を正すためにこのような事をやったというわけか?」
「その通りでございますハイデル様…。相談もなく勝手にこのようなことをやってしまいました事、申し訳ございません…」
「ふむ…」
タイラントはこれまでも、今回のようにハイデルを持ち上げる行いばかりを繰り返してきた。
ゆえに彼はなんの能力がなくともここまで王宮に残ることが許され、第二王子の右腕と言う立場を保証され続けてきた。
その力がここでも発揮され、ハイデルは自身の心の中でこう言葉をつぶやく。
「(…まぁ、それならそれでいいとするか。すべての原因がメリアにああるという事にできるのなら、僕にとってもこれほど都合のいいことはない。勝手なことをしでかしたタイラントに思う所はあるが、ここはひとまずこいつの話に乗っておくとするか…)」
「ハイデル様、本当に申し訳ありませんでした…。しかしどうか僕の行いを、許してはいただけませんでしょうか?」
「それならまぁ仕方ないなぁ。メリアの言動には僕も思うところがたくさんあったのだ。ゆえに今回の一件は、すべてメリアの自業自得であるという事になる。さぁ、話はこれで終わりだ」
ハイデルはさっさと話を切り上げ、結局すべてメリアのせいで起こったことだと片付けようとし始める。
…しかしこの場には、たとえハイデルの言葉であろうともそれを受け入れられない人物が二人、存在していた…。
その場にいるはずのないメリアの姿を見て、タイラントは課題を進める自身の手を完全に停止させる。
目の前で起こっていることに対して理解が追い付かず、完全にフリーズしてしまっている様子だった。
「(ま、まさかメリアが自力であそこから脱出したのか…??いや、そんなはずはない…。ガードは完ぺきだったはずの上、あんなひ弱な女がたった一人でここまでたどり着けるはずがない…)」
しかし、タイラントはメリアの隣に立つ者の存在を見て瞬時に答えにたどり着く。
「(メリアと一緒に、クリフォードが…?ま、まさか…まさかあいつ、メリアを取り戻すために僕の手下たちの所に乗り込んできたのか…!?それでメリアを連れ出して、はるばるここまで来たっていうのか…!?)」
心の中で着々と動揺を大きくしていくタイラント。
それは彼のみならず、様子を見守っていたハイデル、さらには対戦相手のフューゲルまでも同じであった。
「(メ、メリア、一体何しにここまで来たのだ…!?クリフォードの奴が連れてきたのか?全くあいつらはどこまで僕の邪魔を…!どうして第二王子である僕のいう事を素直に聞けないのだ…!!)」
「(メリア…!?連れ去られてしまっていたはずじゃ…!?)」
ハイデルの方はメリアが連れ去られてしまっていた事自体知らないため、彼女がこの場に現れることの不可解さを理解できないでいた。
一方、フューゲルの方はすべての事情を理解していたため、この場にメリアが現れたことの不可解さをきちんと理解し、またクリフォードの存在からすぐにその理由を察した。
2人は互いに課題に取り掛かる手を止め、揃ってメリアやクリフォードの方に視線を移す。
そんな彼らの視線に応えるかのように、クリフォードが堂々とした雰囲気でこう言葉を発した。
「やれやれ、自分の事を大きく見せたいからといって、ちょっとばかり非道なやり方に手を染めてしまったのではないか、タイラント様?」
「っ!?」
タイラントは分かりやすく自身の体をびくっと反応させ、クリフォードの方から目を背ける。
しかしクリフォードはそんなタイラントに構わず、そのまま強い口調でこう言葉を続ける。
「フューゲルがメリアに気があるという事を知って、その上でメリアの事を一方的に誘拐し、無事に返してほしかったら自分との勝負にわざと負けろだなんて、真っ当な男ならなかなかできることじゃないよな。大したもんだぜ」
「っ!?!?!?!?!?」
その言葉を聞き、タイラントは一段と強く自身の体を震わせる。
この場にいる誰もが、タイラントがなんと言葉を返すことに注目したものの、クリフォードのその言葉に返事を返したのはハイデルだった。
「ど、どういうことだクリフォード!?それは事実なのか!?」
「事実ですよハイデル様。騎士として嘘を言ったりはしません。この俺がこの目で見たのですから」
「そ、それじゃあ……それじゃあタイラント、お前は私に一泡吹かせるために、わざわざこんな手の込んだ茶番をしたのか?」
「……!?」
「どうなんだタイラント!答えろ!」
「……!!!」
ハイデルからの叱責ともとれるほどの口調の言葉の前に、タイラントは自身の口を閉じたままだった。
…それからしばしの間、会場は重い沈黙の空気に包まれる。
この場の空気はこれからどのようになっていくのかと、誰もが心の中に不安感を抱いていく中、タイラントは絞り出すような口調でこう言葉をつぶやいた。
「…ハイデル様、全てはハイデル様のためなのです…」
「…信用できると思うのか?誰の目にもお前が自分のためにやった事のようにしか見えないが?」
「違うのです……私の真の目的は、勝負に勝利することではなかったのです。私の真の目的は、王宮の宝であるフューゲル様から、メリアの事を引き離すことにあったのです…!」
「……ほぅ」
ハイデルの言った通り、今回の一件は誰の目にもタイラントが自分のためにやった事のように思われた。
しかし、この場でとっさに放ったタイラントの言い訳は、ハイデルにとっても非常に都合のいいものであった…。
「なるほど、であればお前はフューゲル君の心をもてあそぶメリアの事が許せず、二人の関係を正すためにこのような事をやったというわけか?」
「その通りでございますハイデル様…。相談もなく勝手にこのようなことをやってしまいました事、申し訳ございません…」
「ふむ…」
タイラントはこれまでも、今回のようにハイデルを持ち上げる行いばかりを繰り返してきた。
ゆえに彼はなんの能力がなくともここまで王宮に残ることが許され、第二王子の右腕と言う立場を保証され続けてきた。
その力がここでも発揮され、ハイデルは自身の心の中でこう言葉をつぶやく。
「(…まぁ、それならそれでいいとするか。すべての原因がメリアにああるという事にできるのなら、僕にとってもこれほど都合のいいことはない。勝手なことをしでかしたタイラントに思う所はあるが、ここはひとまずこいつの話に乗っておくとするか…)」
「ハイデル様、本当に申し訳ありませんでした…。しかしどうか僕の行いを、許してはいただけませんでしょうか?」
「それならまぁ仕方ないなぁ。メリアの言動には僕も思うところがたくさんあったのだ。ゆえに今回の一件は、すべてメリアの自業自得であるという事になる。さぁ、話はこれで終わりだ」
ハイデルはさっさと話を切り上げ、結局すべてメリアのせいで起こったことだと片付けようとし始める。
…しかしこの場には、たとえハイデルの言葉であろうともそれを受け入れられない人物が二人、存在していた…。
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