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第40話
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「このパン、かなりおいしい…!正直シチュエーションは複雑だけれど、味は嘘をつかないみたい…!」
「…お前、この状況でよく食事を楽しめるな…。まぁ別になんでもいいんだが…」
囚われの身であるメリアは、提供されたパンとスープを口にすると、非常にうれしそうな表情を浮かべながらそう感想を言葉にした。
一般的な感性なら、誘拐され半監禁状態にあるこの状況ならあまり味など感じられなさそうなものではあるものの、どこか達観している様子のメリアにおいては一般的な感性など関係ないのか、彼女はこの状況もあまり気にしてはいないように見受けられる。
「やれやれ…まぁもう何日かの辛抱だ。確かタイラント様とフューゲルの対決は明日だったはず。そこでタイラント様が勝利をおさめ、フューゲルが約束通り身を引いたなら、その時点でお前の事は解放だ」
見張りの男はメリアの様子にやや呆れ顔を浮かべるものの、解放までの詳細な流れをはっきりとメリアに告げる。
しかし、メリアは今になってもなお彼らの行動の理由が理解できていない様子で…。
「でも、フューゲル様が負けるとはやっぱり思えないのですけれど…。それに、一体どうしてこんなことを??あれからいろいろ考えてみたのですけれど、やっぱり私を連れ去っていい事なんか何もないように思えてならないのですが…」
メリアはとぼけている様子を見せず、本心から不思議そうな表情を浮かべてそう言葉を発した。
それを聞いた男は言葉を返すこともえきへきとしている様子だったものの、静かな口調でこう言葉をつぶやいた。
「…まぁ、いいんじゃないか。ここから出た後、フューゲルにでも聞いてみれば良いじゃないか。なんでタイラント様に負けたのかって」
「負け?もう結果が出てるんですか?」
「いやだから……お前がここに居るからフューゲルの奴は本気を出せないだろう?だからタイラント様が勝つことになって、その結果お前はここから解放されるんだよ」
「ちょっとわからないですね…。私にはやっぱりフューゲル様が負けるところが想像できません…」
「もういいよ……あ、食べ終わったら食器そこに置いといてくれ、あとで回収する…」
「ありがとうございます」
男はそう会話を切り上げると、そのままその場から立ち上がり、メリアの前から姿を消していった。
一人その場に残される形となったメリアは、そのまま部屋の天井をボーっと見つめ、心の中で自分の考えをつぶやき始める。
「(王宮は今頃どうなってるのかな…。私が心配した通り、崩壊しそうになってなかったらいいのだけれど…。ハイデル様はあれからなにをしているんだろう?アリッサ様との関係はうまく行ってるのかな?)」
二人の関係の詳細はあまりメリアの耳には届いていなかったため、メリアにしてみればこれほど気になることはなかった。
「(もしもこのままタイラント様がハイデル様の元を離れて行ったら、その代わりにフューゲル様が王宮に入ることになるのかな?フューゲル様なら崩壊する王宮の事を助けてあげられるだろうし、みんなが助かるならそれが一番いいのかな…?)」
ハイデルは婚約破棄の場において、メリアからの警告に耳を貸さなかった。
ゆえに今、メリアが警告した通りの事が現実に起こっているのだが、あくまでハイデルはメリアの事を王宮に呼び戻したり、関係を戻したりしようとは考えていなかった。
それは彼のプライドが許さなかったためである。
「(そうなったらアリッサ様は一体何をしたいんだろう?フューゲル様の事を相当気に入っている様子だったけど、あれって彼の事を男性として愛しているように見えてならないんだよね…。ハイデル様と結ばれたばかりだけれど、もしかして自分の逆ハーレムを作るための婚約だったって事なのかな…?さすがに、考えすぎかな…?)」
自らを追放した張本人であるアリッサの事も、メリアは比較的冷静に見ていた。
王宮の人間にはこのような冷静さがなにより求められるのだが、皮肉なものである…。
するとその時、先ほどまでメリアのもとにいた男が遠くで大きな声を上げた。
「誰だ!!!そこにいるのは誰だ!!!!出て来い………うわぁぁぁ!!!!」
「(な、なになに!?!?)」
突然に何が起こったのか、反拘束状態のメリアは遠くで起こった光景を目にすることができない。
しかし、明らかに何かが起こっている。
男の叫び声は明らかにそれを物語っている。
…一歩、また一歩、何者かがメリアのもとに近づく。
これまでここに居た誰とも違うその足音に、メリアは自身の心臓の鼓動をやや強くする。
そしてその者は、自身の姿をゆっくりとメリアの前に現した。
「…お前、この状況でよく食事を楽しめるな…。まぁ別になんでもいいんだが…」
囚われの身であるメリアは、提供されたパンとスープを口にすると、非常にうれしそうな表情を浮かべながらそう感想を言葉にした。
一般的な感性なら、誘拐され半監禁状態にあるこの状況ならあまり味など感じられなさそうなものではあるものの、どこか達観している様子のメリアにおいては一般的な感性など関係ないのか、彼女はこの状況もあまり気にしてはいないように見受けられる。
「やれやれ…まぁもう何日かの辛抱だ。確かタイラント様とフューゲルの対決は明日だったはず。そこでタイラント様が勝利をおさめ、フューゲルが約束通り身を引いたなら、その時点でお前の事は解放だ」
見張りの男はメリアの様子にやや呆れ顔を浮かべるものの、解放までの詳細な流れをはっきりとメリアに告げる。
しかし、メリアは今になってもなお彼らの行動の理由が理解できていない様子で…。
「でも、フューゲル様が負けるとはやっぱり思えないのですけれど…。それに、一体どうしてこんなことを??あれからいろいろ考えてみたのですけれど、やっぱり私を連れ去っていい事なんか何もないように思えてならないのですが…」
メリアはとぼけている様子を見せず、本心から不思議そうな表情を浮かべてそう言葉を発した。
それを聞いた男は言葉を返すこともえきへきとしている様子だったものの、静かな口調でこう言葉をつぶやいた。
「…まぁ、いいんじゃないか。ここから出た後、フューゲルにでも聞いてみれば良いじゃないか。なんでタイラント様に負けたのかって」
「負け?もう結果が出てるんですか?」
「いやだから……お前がここに居るからフューゲルの奴は本気を出せないだろう?だからタイラント様が勝つことになって、その結果お前はここから解放されるんだよ」
「ちょっとわからないですね…。私にはやっぱりフューゲル様が負けるところが想像できません…」
「もういいよ……あ、食べ終わったら食器そこに置いといてくれ、あとで回収する…」
「ありがとうございます」
男はそう会話を切り上げると、そのままその場から立ち上がり、メリアの前から姿を消していった。
一人その場に残される形となったメリアは、そのまま部屋の天井をボーっと見つめ、心の中で自分の考えをつぶやき始める。
「(王宮は今頃どうなってるのかな…。私が心配した通り、崩壊しそうになってなかったらいいのだけれど…。ハイデル様はあれからなにをしているんだろう?アリッサ様との関係はうまく行ってるのかな?)」
二人の関係の詳細はあまりメリアの耳には届いていなかったため、メリアにしてみればこれほど気になることはなかった。
「(もしもこのままタイラント様がハイデル様の元を離れて行ったら、その代わりにフューゲル様が王宮に入ることになるのかな?フューゲル様なら崩壊する王宮の事を助けてあげられるだろうし、みんなが助かるならそれが一番いいのかな…?)」
ハイデルは婚約破棄の場において、メリアからの警告に耳を貸さなかった。
ゆえに今、メリアが警告した通りの事が現実に起こっているのだが、あくまでハイデルはメリアの事を王宮に呼び戻したり、関係を戻したりしようとは考えていなかった。
それは彼のプライドが許さなかったためである。
「(そうなったらアリッサ様は一体何をしたいんだろう?フューゲル様の事を相当気に入っている様子だったけど、あれって彼の事を男性として愛しているように見えてならないんだよね…。ハイデル様と結ばれたばかりだけれど、もしかして自分の逆ハーレムを作るための婚約だったって事なのかな…?さすがに、考えすぎかな…?)」
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するとその時、先ほどまでメリアのもとにいた男が遠くで大きな声を上げた。
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…一歩、また一歩、何者かがメリアのもとに近づく。
これまでここに居た誰とも違うその足音に、メリアは自身の心臓の鼓動をやや強くする。
そしてその者は、自身の姿をゆっくりとメリアの前に現した。
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