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第37話
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――フューゲルの記憶――
「今回もトップ成績でございます、フューゲル様!いやはや、まさかあなたほど優秀な頭脳をお持ちの方がこの学院から生まれるとは…!学院の長として、これ以上ない喜びでございます!」
「そうかい?まぁ学院長先生がそこまで喜んでくれるのなら僕もうれしいよ」
「この記録は、学院長室にて額縁に入れて飾らせていただきます!他の学生たちにもご利益がありそうですから!」
「どうぞご自由にー。それじゃ、僕はこの後ジレル伯爵様のご令嬢と買い物に行くことになってるから、後の事はよろしくー」
「い、行ってらっしゃいませー!」
嫌われまいと必死にこびへつらうスバル学院長の事を横目に、フューゲルは今日も意気揚々といった雰囲気で学院生活を送っていた。
テストを受ければ常にトップ成績、格闘やスポーツをさせても一流レベルの活躍、そして女性への接し方をしっかり心得ている彼にとって、この世界はイージーで仕方がなかった。
何をやってもうまく行くし、何をやっても褒められる。
当然その一方で激しい嫉妬心を向けられることも少なくないものの、今のフューゲルにしてみればそれさえも自分の実力が高いことを証明する要素の一つであるため、なんら嫌悪感などは抱いていなかった。
「(伯爵令嬢か…。前に遊んだ宝石店の看板娘はあんまり可愛くなかったからなぁ…。今回は僕の事を楽しませてくれるとありがたいんだけれど)」
他の追随を許さないほどの実力を放つフューゲルの事を、彼の周りの女性陣が放っておくはずもない。
彼のスケジュールは常に競争率の高い状態が続いており、1日彼とともに過ごすことなどこの国のトップの人間ほどの権力を行使でもしない限り不可能な事であるほどだった。
しかしそれゆえ、フューゲルはその現実を前に非常に調子に乗ってしまっていた。
「(完全に世界が僕を中心にして回ってるよなぁ。ただの生徒に過ぎない僕の機嫌を学院長先生があんなに取りに来るわけだし、その手前他の先生たちも僕には何も言ってこないし。この調子じゃ王宮に来ないかと声をかけられるのだって時間の問題だろうし、そのうち僕がこの国を牛耳ることだって起こりうるんじゃないだろうか?♪)」
ここで少しなにか失敗や挫折があればその長い鼻はおられたのかもしれないが、実際には彼が予見した通りに事が運ばれていった。
彼は間もなくしてハイデル第二王子から直接その優秀な成績を表彰されることとなり、専用の式典まで設けられることとなったのだから…。
――――
フューゲルが初めて王宮に呼ばれた時、ハイデルの婚約者はメリアであった。
ハイデルとの面会を待つ彼の前に、偶然その場を通りかかったメリアがその姿を現した。
その時、フューゲルはあろうことかこのような事をその頭の中にひらめいた。
「(もしかしたら、今の僕なら第二王子の婚約者さえもその心を奪うことができるんじゃないだろうか。今まで女性にアプローチをして失敗したことなど一度もなかったわけだし、可能性は十分ある…。別に本気で関係を築きたいわけじゃないが、僕に心をなびかせられたならこれほど面白いことはない…。これはもう、やってみるしかないな…!)」
唐突にそのような考えが思いついたフューゲルは、その勢いのままにメリアのもとに駆け寄り、彼女にこう言葉を発した。
「メリア様、ですよね?よかったら僕とお話していただけませんか?おいしいお食事など一緒にしながらではいかがでしょう?こうしてお会いできたのも、きっとなにかの運命に違いありませんから」
フューゲルは非常に得意げな表情を浮かべながら、流れるような口調でそう言葉を告げた。
そこには心の底から湧き出てくるほどの自信が見て取れ、失敗の可能性などみじんも感じさせないほどだった。
しかし、そんな彼に対してメリアは全く予想外な言葉を返した。
「えっと…。どちら様ですか?」
「…へ?」
「見ず知らずの方といきなり二人でお食事と言うのは…」
「……」
「…それでは、私はこのあと仕事がありますのでこれにて…」
「……」
メリアは淡々とそう言葉を告げると、そのままフューゲルの前から姿を消していった。
その彼女の言葉が本心から来たものなのか、それとも彼女は嘘を言ったのか、それは定かではないものの、そんなことはフューゲルにとって何の関係もなかった。
彼にとって最も重要なポイントは、生まれて初めて女性に自分の誘いを断られてしまったという事にあるのだから。
「(ま、まさか本当に僕の事を知らないと…?い、いやそんなはずがない…。そ、それじゃああえて僕の事を知らないと言ったのか…?い、いや僕と1対1で食事をするチャンスを得られるというのに、そんな嘘をつく女性がいるはずがない…。今までそんな女性は誰一人としていなかったのだから…。そ、それじゃあ一体どういうつもりであの言葉を……)」
考えれば考えるほど、フューゲルは深い深いドツボにはまっていった。
これまでにこのような経験をさせてくる女性は誰もいなかったため、彼にとってこの状況はまさに初体験だったのだ。
そしてその日以降、フューゲルの頭の中には毎日のようにメリアの事がちらくつようになっていき、その存在は日に日に強くなっていくのであった。
「今回もトップ成績でございます、フューゲル様!いやはや、まさかあなたほど優秀な頭脳をお持ちの方がこの学院から生まれるとは…!学院の長として、これ以上ない喜びでございます!」
「そうかい?まぁ学院長先生がそこまで喜んでくれるのなら僕もうれしいよ」
「この記録は、学院長室にて額縁に入れて飾らせていただきます!他の学生たちにもご利益がありそうですから!」
「どうぞご自由にー。それじゃ、僕はこの後ジレル伯爵様のご令嬢と買い物に行くことになってるから、後の事はよろしくー」
「い、行ってらっしゃいませー!」
嫌われまいと必死にこびへつらうスバル学院長の事を横目に、フューゲルは今日も意気揚々といった雰囲気で学院生活を送っていた。
テストを受ければ常にトップ成績、格闘やスポーツをさせても一流レベルの活躍、そして女性への接し方をしっかり心得ている彼にとって、この世界はイージーで仕方がなかった。
何をやってもうまく行くし、何をやっても褒められる。
当然その一方で激しい嫉妬心を向けられることも少なくないものの、今のフューゲルにしてみればそれさえも自分の実力が高いことを証明する要素の一つであるため、なんら嫌悪感などは抱いていなかった。
「(伯爵令嬢か…。前に遊んだ宝石店の看板娘はあんまり可愛くなかったからなぁ…。今回は僕の事を楽しませてくれるとありがたいんだけれど)」
他の追随を許さないほどの実力を放つフューゲルの事を、彼の周りの女性陣が放っておくはずもない。
彼のスケジュールは常に競争率の高い状態が続いており、1日彼とともに過ごすことなどこの国のトップの人間ほどの権力を行使でもしない限り不可能な事であるほどだった。
しかしそれゆえ、フューゲルはその現実を前に非常に調子に乗ってしまっていた。
「(完全に世界が僕を中心にして回ってるよなぁ。ただの生徒に過ぎない僕の機嫌を学院長先生があんなに取りに来るわけだし、その手前他の先生たちも僕には何も言ってこないし。この調子じゃ王宮に来ないかと声をかけられるのだって時間の問題だろうし、そのうち僕がこの国を牛耳ることだって起こりうるんじゃないだろうか?♪)」
ここで少しなにか失敗や挫折があればその長い鼻はおられたのかもしれないが、実際には彼が予見した通りに事が運ばれていった。
彼は間もなくしてハイデル第二王子から直接その優秀な成績を表彰されることとなり、専用の式典まで設けられることとなったのだから…。
――――
フューゲルが初めて王宮に呼ばれた時、ハイデルの婚約者はメリアであった。
ハイデルとの面会を待つ彼の前に、偶然その場を通りかかったメリアがその姿を現した。
その時、フューゲルはあろうことかこのような事をその頭の中にひらめいた。
「(もしかしたら、今の僕なら第二王子の婚約者さえもその心を奪うことができるんじゃないだろうか。今まで女性にアプローチをして失敗したことなど一度もなかったわけだし、可能性は十分ある…。別に本気で関係を築きたいわけじゃないが、僕に心をなびかせられたならこれほど面白いことはない…。これはもう、やってみるしかないな…!)」
唐突にそのような考えが思いついたフューゲルは、その勢いのままにメリアのもとに駆け寄り、彼女にこう言葉を発した。
「メリア様、ですよね?よかったら僕とお話していただけませんか?おいしいお食事など一緒にしながらではいかがでしょう?こうしてお会いできたのも、きっとなにかの運命に違いありませんから」
フューゲルは非常に得意げな表情を浮かべながら、流れるような口調でそう言葉を告げた。
そこには心の底から湧き出てくるほどの自信が見て取れ、失敗の可能性などみじんも感じさせないほどだった。
しかし、そんな彼に対してメリアは全く予想外な言葉を返した。
「えっと…。どちら様ですか?」
「…へ?」
「見ず知らずの方といきなり二人でお食事と言うのは…」
「……」
「…それでは、私はこのあと仕事がありますのでこれにて…」
「……」
メリアは淡々とそう言葉を告げると、そのままフューゲルの前から姿を消していった。
その彼女の言葉が本心から来たものなのか、それとも彼女は嘘を言ったのか、それは定かではないものの、そんなことはフューゲルにとって何の関係もなかった。
彼にとって最も重要なポイントは、生まれて初めて女性に自分の誘いを断られてしまったという事にあるのだから。
「(ま、まさか本当に僕の事を知らないと…?い、いやそんなはずがない…。そ、それじゃああえて僕の事を知らないと言ったのか…?い、いや僕と1対1で食事をするチャンスを得られるというのに、そんな嘘をつく女性がいるはずがない…。今までそんな女性は誰一人としていなかったのだから…。そ、それじゃあ一体どういうつもりであの言葉を……)」
考えれば考えるほど、フューゲルは深い深いドツボにはまっていった。
これまでにこのような経験をさせてくる女性は誰もいなかったため、彼にとってこの状況はまさに初体験だったのだ。
そしてその日以降、フューゲルの頭の中には毎日のようにメリアの事がちらくつようになっていき、その存在は日に日に強くなっていくのであった。
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