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第32話
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フューゲルとタイラントが直接対決を行うという知らせは、間もなくフューゲル本人の元にも届けられた。
フューゲルはその旨が記載されたハイデルからの手紙を使用人から受け取ると、じっくりとその内容に目を通していく。
「なになに…。「王宮にて、未来の第二王子を支えるにふさわしい人物を決定するイベントを行う。フューゲル君、ぜひとも全力でタイラントに立ち向かってくれたまえ。もしも君が優秀な成績を残したのなら、その時は君とメリアをともに王宮に迎え入れ、二人の婚約を正式に認めようではないか。私は第二王子として、嘘は言わない。約束しよう」と…」
フューゲルがその手紙を読み上げた時、彼の隣にはメリアがたたずんでいた。
ゆえにその内容は彼女の耳にも入ることになり、メリアは素直にこうリアクションをした。
「ハイデル様が私の婚約を素直に認めてくださるとはあまり思えませんから、きっとなにか裏があるのでしょうけど…。フューゲル様、どうなさるのですか?」
やや不安そうな表情を浮かべるメリアに対し、フューゲルはどこか楽しそうな表情を浮かべながらこう言葉を返した。
「なんでも構わないよ。僕とメリアの関係をハイデル様が直々に認めてくれると言ってくださっているんだ。こんな最高のチャンスを逃す手はないよ!さっそくハイデル様に返事を書かないと…!」
フューゲルはそう言うと、早速紙とペンを用意してそのままハイデルへの返事を書き始める。
メリアが口にした通り、一方的なハイデルからの言葉の裏にはなにか別の意図があると考えるのが普通ではあるものの、フューゲルの頭の中にこのイベントにおけるリスクなどかけらも存在していなかった。
なぜなら彼はすでに、相手がだれであろうとも自分の勝利を確信していたためだ。
「このイベントで結果を出すだけで、クリフォード様にも先手を打てるという事になる。メリアと婚約することが叶うなら、僕はどんな課題だってクリアして見せるとも」
「(フューゲル様、相変わらず気が早いなぁ…。それにしても、一緒に王宮に入るってどういう意味なんだろう…?もしもフューゲル様がタイラントさんに勝っちゃったら、私また王宮に戻ることになるのかな…?私は別にそれでも気にしないけど、それを知ったアリッサ様なんかは相当怒りそうだけど…。ハイデル様はそのあたりまで考えておらるんだろうか…?)」
このような特異な状況にあっても自分の心配でなく、王宮側の心配をし始めるメリア。
やはり彼女も彼女で並の神経を持つ女ではなく、どこか頭のねじが一つ抜けているように思わずにはいられないのであった…。
――――
その一方、フューゲルとの直接対決を命じられたタイラントもまた、その準備に取り掛かっていた。
「(相手はあのフューゲル…。学生の身ではありながら、明晰《めいせき》なる頭脳と確かな実力の持ち主…。そんな男を相手に僕がまともにやりあったのでは勝てるはずがない…。しかしあの男に立ち向かうための味方を集めようとしても、フューゲルを相手取って僕に味方をしてくれるような者などいるはずがない…)」
これまでタイラントは味方を作らず、ただただハイデルの機嫌を取るのみの方法でここまで生き延びていた。
そのやり方がここにきてついに足を引っ張る出る形となったのだが、彼自身はその点にマイナスな感情を抱いてはいなかった。
「(焦るな焦るな…。無能な味方なんていくらいても邪魔なだけなんだ…。であるなら自分一人でやるほうがうんとマシなはず…。僕はここで終わるわけにはいかないのだ…。ハイデル様は完全に僕の事を追い落とそうとしているようだが、ここで僕がフューゲルに直接勝つようなことがあったなら、きっとその考えを改めてくれるはず…。つまり僕はどんな手を使ってでも、ここでフューゲルに勝たなければならないのだ…)」
タイラントは深く、深く自分の心の中でそう言葉をつぶやくと、そのまま自身の手を動かし始め、一枚の手紙を書き上げ始めるのだった…。
フューゲルはその旨が記載されたハイデルからの手紙を使用人から受け取ると、じっくりとその内容に目を通していく。
「なになに…。「王宮にて、未来の第二王子を支えるにふさわしい人物を決定するイベントを行う。フューゲル君、ぜひとも全力でタイラントに立ち向かってくれたまえ。もしも君が優秀な成績を残したのなら、その時は君とメリアをともに王宮に迎え入れ、二人の婚約を正式に認めようではないか。私は第二王子として、嘘は言わない。約束しよう」と…」
フューゲルがその手紙を読み上げた時、彼の隣にはメリアがたたずんでいた。
ゆえにその内容は彼女の耳にも入ることになり、メリアは素直にこうリアクションをした。
「ハイデル様が私の婚約を素直に認めてくださるとはあまり思えませんから、きっとなにか裏があるのでしょうけど…。フューゲル様、どうなさるのですか?」
やや不安そうな表情を浮かべるメリアに対し、フューゲルはどこか楽しそうな表情を浮かべながらこう言葉を返した。
「なんでも構わないよ。僕とメリアの関係をハイデル様が直々に認めてくれると言ってくださっているんだ。こんな最高のチャンスを逃す手はないよ!さっそくハイデル様に返事を書かないと…!」
フューゲルはそう言うと、早速紙とペンを用意してそのままハイデルへの返事を書き始める。
メリアが口にした通り、一方的なハイデルからの言葉の裏にはなにか別の意図があると考えるのが普通ではあるものの、フューゲルの頭の中にこのイベントにおけるリスクなどかけらも存在していなかった。
なぜなら彼はすでに、相手がだれであろうとも自分の勝利を確信していたためだ。
「このイベントで結果を出すだけで、クリフォード様にも先手を打てるという事になる。メリアと婚約することが叶うなら、僕はどんな課題だってクリアして見せるとも」
「(フューゲル様、相変わらず気が早いなぁ…。それにしても、一緒に王宮に入るってどういう意味なんだろう…?もしもフューゲル様がタイラントさんに勝っちゃったら、私また王宮に戻ることになるのかな…?私は別にそれでも気にしないけど、それを知ったアリッサ様なんかは相当怒りそうだけど…。ハイデル様はそのあたりまで考えておらるんだろうか…?)」
このような特異な状況にあっても自分の心配でなく、王宮側の心配をし始めるメリア。
やはり彼女も彼女で並の神経を持つ女ではなく、どこか頭のねじが一つ抜けているように思わずにはいられないのであった…。
――――
その一方、フューゲルとの直接対決を命じられたタイラントもまた、その準備に取り掛かっていた。
「(相手はあのフューゲル…。学生の身ではありながら、明晰《めいせき》なる頭脳と確かな実力の持ち主…。そんな男を相手に僕がまともにやりあったのでは勝てるはずがない…。しかしあの男に立ち向かうための味方を集めようとしても、フューゲルを相手取って僕に味方をしてくれるような者などいるはずがない…)」
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「(焦るな焦るな…。無能な味方なんていくらいても邪魔なだけなんだ…。であるなら自分一人でやるほうがうんとマシなはず…。僕はここで終わるわけにはいかないのだ…。ハイデル様は完全に僕の事を追い落とそうとしているようだが、ここで僕がフューゲルに直接勝つようなことがあったなら、きっとその考えを改めてくれるはず…。つまり僕はどんな手を使ってでも、ここでフューゲルに勝たなければならないのだ…)」
タイラントは深く、深く自分の心の中でそう言葉をつぶやくと、そのまま自身の手を動かし始め、一枚の手紙を書き上げ始めるのだった…。
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