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第23話
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クリフォードとフューゲルの二人はそろってハイデルの方に視線を移し、無言で彼の言葉を待った。
そんな二人に対し、ハイデルはやや低い口調でこう言葉を放った。
「王族の人間との婚約を破棄されたものは、その後誰とも婚約を果たしてはならないルールだ。それは相手がだれであろうとも関係はない」
「「っ!?」」
ハイデルの口から発せられたその言葉を聞き、二人はともに心から驚いたような表情を浮かべる。
…それもそのはず、勤勉で博識な二人からしても、そんなルールなどこれまで一度も聞いたことがないためだ。
ハイデルに対し、最初に抗議の声を上げたのはクリフォードの方だった。
「どういうことだハイデル第二王子!?そんなルールは聞いたことがないぞ!?」
「無論だ。このルールが成立したのはつい先日の事だからな」
「!?」
突然に告げられても到底理解しがたい内容のその言葉。
ハイデルはそこに一切のうしろめたさなど感じさせることなく、堂々とした口調でそう言って見せた。
「この私が直々に調印を行ったルールだ。ゆえにたとえお前たちが相手であろうとも例外ではない。このルールに縛られない者と言えば、私よりも上位の権限を持つ人物であるシュラフ国王か、エルク第一王子くらいだろう。まぁもっとも、その二人がメリアのために名乗りを上げることなど、ここが夢も中でもない限りはありえない事であろうが」
「「……」」
うっすらとした笑みを浮かべながらそう言葉を放つハイデルに対し、二人は互いに言葉をい淀んでいる様子。
そんな二人の姿を見てか、それまで自分の席に控えていたアリッサが席から立ち上がり、ハイデルに続く形で言葉を放った。
「もう十分でしょう二人とも。いい加減に目を覚ましなさい?メリアにどうたらしこまれたのかは知らないけれど、あなた方二人が言い争うほどの魅力を持つ女では決してないでしょう?ハイデル様がわざわざここまでしたのだから、その思いにきちんと答えてもらわないと困るわよ?」
「そうだぞ二人とも。君ら二人はこの私が直々に将来を期待している男たちなのだ。そんな二人が、まさかこんなろくでもない女を奪い合っているなど、恥ずかしくて他の者に話すこともできない。僕に対する忠誠心があるなら、僕のイメージが下がるようなことは避けてもらいたいものだ」
アリッサに背中を押されるような形でそう言葉を発したハイデルだったものの、その言葉は彼が期待した通りには働かず、むしろ二人の心を自分の元から遠ざけることとなっていることに彼自身は気づいていない様子…。
「(メリアの事をろくでもない女、などと…。騎士の長としては当然第二王子に絶対忠誠ではあるものの、こればかりは受け入れ難い言葉だな…)」
「(僕の未来に期待しているとのお言葉、もちろんうれしく思います。ですが、僕の未来はメリアの存在があってこそなのですよ、ハイデル様…)」
互いに心の中につぶやいた言葉、それは紛れもないメリアに対する思いのものであった。
その後、二人はハイデルに対して言葉を返すことはせず、二人だけの世界にその意識を向けていく…。
ここでも最初に言葉を発したのはクリフォードの方だった。
「いずれ必ず婚約はするものの、別にその形にこだわる必要はない。俺はいつまでもメリアの隣に立ち、ともに生きていくだけの事。フューゲル、そこにお前の席はない。いずれ開かれる婚約式典の場においては席を設けてやってもいいが、それまでは邪魔だ」
「おっと、それはこちらのセリフですね。すでに僕が描くの未来ページにはメリアの存在がはっきりと描かれているのです。むしろそこにいないのはクリフォード騎士長、あなたの方ですよ。僕は事を穏便に済ませたいので、あなたとこうして直接対峙することを望んではいません。ここは僕のために身を引いていただけるとありがたいのですが?」
「なんだ、言いたいことがあるなら言えばいいじゃないか。男は直接対峙してなんぼだろう。若いくせに達観してるんだな」
「それはお互い様かと思いますが…。まぁいいでしょう。それならこの書類を見てください」
「…??」
フューゲルはクリフォードに対してそう言うと、自身の懐から一枚の紙を取り出した。
「あなたがメリアを不当に監禁していることを認める正式な書類です」
「…どこでそんなものを?お前まさか…」
「なんですか?まるで僕がこざかしい事でもしているかのような表情ですね。でもこれはれっきとした公的な書類ですよ?ここにきちんと、第二王子夫人であらせられるアリッサ様の調印がありますからね」
「……」
「なっ!?!?」
フューゲルが資料を提示した相手はクリフォードであったが、その事実にもっとも驚きを見せていたのはアリッサであった。
「ちょっとフューゲル様!!それはメリアの事を糾弾するために依頼したものだって言ってたじゃない!」
アリッサはすぐにフューゲルに対して抗議の声を上げるものの、当のフューゲルは素知らぬ顔でこう言葉を返す。
「言ってませんよそんなことは一言も。勘違いされては困ります」
「い、言ってなくってもそうだって思うような態度をとってたじゃない!その書類を使ってメリア、ひいてはクリフォード様の事を攻撃するんだって!そうやって二人の間で私の事を奪い合うんだって!」
「ちょっと待てアリッサ!それはどういう事だ!僕は何も聞いていないぞ!」
「ハイデル様は黙っていてください!今私はフューゲル様と話をしているんです!」
もはやあまり周りが見えていない様子のアリッサ…。
ある意味でこの場は彼女を中心とし、状況はさらに混沌を極めていくこととなるのだった…。
そんな二人に対し、ハイデルはやや低い口調でこう言葉を放った。
「王族の人間との婚約を破棄されたものは、その後誰とも婚約を果たしてはならないルールだ。それは相手がだれであろうとも関係はない」
「「っ!?」」
ハイデルの口から発せられたその言葉を聞き、二人はともに心から驚いたような表情を浮かべる。
…それもそのはず、勤勉で博識な二人からしても、そんなルールなどこれまで一度も聞いたことがないためだ。
ハイデルに対し、最初に抗議の声を上げたのはクリフォードの方だった。
「どういうことだハイデル第二王子!?そんなルールは聞いたことがないぞ!?」
「無論だ。このルールが成立したのはつい先日の事だからな」
「!?」
突然に告げられても到底理解しがたい内容のその言葉。
ハイデルはそこに一切のうしろめたさなど感じさせることなく、堂々とした口調でそう言って見せた。
「この私が直々に調印を行ったルールだ。ゆえにたとえお前たちが相手であろうとも例外ではない。このルールに縛られない者と言えば、私よりも上位の権限を持つ人物であるシュラフ国王か、エルク第一王子くらいだろう。まぁもっとも、その二人がメリアのために名乗りを上げることなど、ここが夢も中でもない限りはありえない事であろうが」
「「……」」
うっすらとした笑みを浮かべながらそう言葉を放つハイデルに対し、二人は互いに言葉をい淀んでいる様子。
そんな二人の姿を見てか、それまで自分の席に控えていたアリッサが席から立ち上がり、ハイデルに続く形で言葉を放った。
「もう十分でしょう二人とも。いい加減に目を覚ましなさい?メリアにどうたらしこまれたのかは知らないけれど、あなた方二人が言い争うほどの魅力を持つ女では決してないでしょう?ハイデル様がわざわざここまでしたのだから、その思いにきちんと答えてもらわないと困るわよ?」
「そうだぞ二人とも。君ら二人はこの私が直々に将来を期待している男たちなのだ。そんな二人が、まさかこんなろくでもない女を奪い合っているなど、恥ずかしくて他の者に話すこともできない。僕に対する忠誠心があるなら、僕のイメージが下がるようなことは避けてもらいたいものだ」
アリッサに背中を押されるような形でそう言葉を発したハイデルだったものの、その言葉は彼が期待した通りには働かず、むしろ二人の心を自分の元から遠ざけることとなっていることに彼自身は気づいていない様子…。
「(メリアの事をろくでもない女、などと…。騎士の長としては当然第二王子に絶対忠誠ではあるものの、こればかりは受け入れ難い言葉だな…)」
「(僕の未来に期待しているとのお言葉、もちろんうれしく思います。ですが、僕の未来はメリアの存在があってこそなのですよ、ハイデル様…)」
互いに心の中につぶやいた言葉、それは紛れもないメリアに対する思いのものであった。
その後、二人はハイデルに対して言葉を返すことはせず、二人だけの世界にその意識を向けていく…。
ここでも最初に言葉を発したのはクリフォードの方だった。
「いずれ必ず婚約はするものの、別にその形にこだわる必要はない。俺はいつまでもメリアの隣に立ち、ともに生きていくだけの事。フューゲル、そこにお前の席はない。いずれ開かれる婚約式典の場においては席を設けてやってもいいが、それまでは邪魔だ」
「おっと、それはこちらのセリフですね。すでに僕が描くの未来ページにはメリアの存在がはっきりと描かれているのです。むしろそこにいないのはクリフォード騎士長、あなたの方ですよ。僕は事を穏便に済ませたいので、あなたとこうして直接対峙することを望んではいません。ここは僕のために身を引いていただけるとありがたいのですが?」
「なんだ、言いたいことがあるなら言えばいいじゃないか。男は直接対峙してなんぼだろう。若いくせに達観してるんだな」
「それはお互い様かと思いますが…。まぁいいでしょう。それならこの書類を見てください」
「…??」
フューゲルはクリフォードに対してそう言うと、自身の懐から一枚の紙を取り出した。
「あなたがメリアを不当に監禁していることを認める正式な書類です」
「…どこでそんなものを?お前まさか…」
「なんですか?まるで僕がこざかしい事でもしているかのような表情ですね。でもこれはれっきとした公的な書類ですよ?ここにきちんと、第二王子夫人であらせられるアリッサ様の調印がありますからね」
「……」
「なっ!?!?」
フューゲルが資料を提示した相手はクリフォードであったが、その事実にもっとも驚きを見せていたのはアリッサであった。
「ちょっとフューゲル様!!それはメリアの事を糾弾するために依頼したものだって言ってたじゃない!」
アリッサはすぐにフューゲルに対して抗議の声を上げるものの、当のフューゲルは素知らぬ顔でこう言葉を返す。
「言ってませんよそんなことは一言も。勘違いされては困ります」
「い、言ってなくってもそうだって思うような態度をとってたじゃない!その書類を使ってメリア、ひいてはクリフォード様の事を攻撃するんだって!そうやって二人の間で私の事を奪い合うんだって!」
「ちょっと待てアリッサ!それはどういう事だ!僕は何も聞いていないぞ!」
「ハイデル様は黙っていてください!今私はフューゲル様と話をしているんです!」
もはやあまり周りが見えていない様子のアリッサ…。
ある意味でこの場は彼女を中心とし、状況はさらに混沌を極めていくこととなるのだった…。
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