21 / 66
第21話
しおりを挟む
記念のメダルが授与される式典会場には、すでに多くの人々が押し寄せていた。
「ねぇねぇ聞いた?今までに王子様から直々に記念のメダルが授与された騎士は誰もいないんですって!クリフォード様が初めてになるらしいわよ!」
「やっぱりすごいのねぇクリフォード様…!はやく本物を見たいな…!」
「俺はメダルの方に興味があるな…!いったいどれほど美しいものなんだ?」
集まった人々は各々の言葉を口にして、式典の開始を待ち望んでいた。
するとその会場のVIP席ともいえる場所に、一人の人物が姿を現した。
「(さすがはクリフォード様…。ただ記念品を授与されるだけでこんなにも人が集まるだなんて、これはもうハイデル様よりも数段人気なのではないかしら?私がハイデル様の婚約者でなかったら、こんな特等席から彼の姿を見ることはできなかったかもしれないわね。そういう点ではハイデル様に感謝しないと…♪)」
そこに現れたのは、ハイデルの婚約者であるアリッサであった。
彼女の機嫌を取り戻すためだけに計画されたこの式典ではあるものの、今の段階ではその目的をきちんと達成しているように見て取れる。
「(そうだわ!式典前にクリフォード様の事をねぎらう言葉をかけに行かないと!彼はハイデル様がここに招待して、私はそんな彼の婚約者なのだから、当然こういうのも仕事のうちよね!)」
アリッサは頭の中にそう考えを浮かべた後、すぐにクリフォードの元を目指して場所を移動しようと席を立った。
しかしそれと同時に式典が始まることとなってしまい、やむなく彼女はクリフォードへの事前挨拶を断念することとしたのだった…。
――――
式典そのものは非常にスムーズに行われていった。
というのも、この式典の内容はハイデルが一枚のメダルをクリフォードに渡すのみなのだから、当然と言えば当然である。
「クリフォード。騎士としての君の素晴らしい働きぶりをここに認め、勲章としてのメダルをここに授与することとする」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!
金色に輝く美しいメダルがハイデルの手によりクリフォードの右胸に装着され、それと同時に会場から大きな拍手が沸き上がる。
そして同時に、会場中からクリフォードを称える声が無数に沸き起こったものの、当のクリフォードは非常に冷静な表情を浮かべたまま、感謝の意を示した。
「ありがとうございます」
クリフォードはまずハイデルに対してそう言葉を返したのち、そのまま視線だけアリッサの方に向けると、ハイデルから相談された通りにこう言葉を続けた。
「これからもハイデル様のため、そしてアリッサ様のため、騎士団を率いる長としてこの身を捧げ続け、全霊で使命を果たすことを誓います」
「(あらまぁ、クリフォード様ったら私の方を見ちゃってそんなことを…♪)」
「(うむうむ、それでいいのだクリフォード!)」
クリフォードははっきりとした口調でそう言葉を発し、確かなメッセージをアリッサに対して届けた。
クリフォードから視線を向けられたアリッサは分かりやすくその機嫌を良くし、ハイデルが完全に狙った通りの流れで式典は終わりを迎えるかのように思われた…。
「ハイデル様、事前にお伝えしていた通り、俺からみんなに言っておきたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「あぁ、構わないぞ。この場を好きに使うといい」
「ありがとうございます、それでは…」
クリフォードは壇上中央に立ったまま、自身の体の向きをハイデルから会場の人々の方向に向ける。
すると同時に、それまで会場のそばで控えさせていたメリアに手で合図を送り、自分の元まで来るようメッセージを送った。
「(…???)」
メリアは素直にその合図に従い、クリフォードの隣まで姿を現したものの、会場に集まった人々は当然、ハイデルやアリッサまでもいったい何を言うつもりなのかと大きな関心を向ける。
その場にいる全員といってもいい人々からの視線を一心に集めた後、クリフォードは非常に堂々とした口調でこう言葉を発して見せた。
「ハイデル様、そしてアリッサ様のために騎士として精進することをここに誓いましたが、俺にはもう一人、この身を賭して守らなければならない存在ができました。俺はここにいるメリアの事を、婚約者として迎え入れることを心に決めましたので」
「「はぁっ!?!?!?!」」
…何の前触れもなく、唐突に爆弾発言を繰り出したクリフォード。
その内容に驚いた人物はハイデルやアリッサを含めたこの場にいる全員であっただろうが、そこにはメリア本人も含まれていた。
「ク、クリフォード様!?い、いったいどういう…!?」
「いいから。黙って俺の言う事を聞いておけ」
「い、言え実は私はまだ…」
「いいから」
メリアはあることをクリフォードに説明したかった様子であったものの、クリフォードはそんな彼女の事を制してその口を封じた。
するとその時、会場にいた一人の男性がクリフォードに対してこう声を上げた。
「いくら騎士の長でもそれは認められないですよ、クリフォード様」
「ねぇねぇ聞いた?今までに王子様から直々に記念のメダルが授与された騎士は誰もいないんですって!クリフォード様が初めてになるらしいわよ!」
「やっぱりすごいのねぇクリフォード様…!はやく本物を見たいな…!」
「俺はメダルの方に興味があるな…!いったいどれほど美しいものなんだ?」
集まった人々は各々の言葉を口にして、式典の開始を待ち望んでいた。
するとその会場のVIP席ともいえる場所に、一人の人物が姿を現した。
「(さすがはクリフォード様…。ただ記念品を授与されるだけでこんなにも人が集まるだなんて、これはもうハイデル様よりも数段人気なのではないかしら?私がハイデル様の婚約者でなかったら、こんな特等席から彼の姿を見ることはできなかったかもしれないわね。そういう点ではハイデル様に感謝しないと…♪)」
そこに現れたのは、ハイデルの婚約者であるアリッサであった。
彼女の機嫌を取り戻すためだけに計画されたこの式典ではあるものの、今の段階ではその目的をきちんと達成しているように見て取れる。
「(そうだわ!式典前にクリフォード様の事をねぎらう言葉をかけに行かないと!彼はハイデル様がここに招待して、私はそんな彼の婚約者なのだから、当然こういうのも仕事のうちよね!)」
アリッサは頭の中にそう考えを浮かべた後、すぐにクリフォードの元を目指して場所を移動しようと席を立った。
しかしそれと同時に式典が始まることとなってしまい、やむなく彼女はクリフォードへの事前挨拶を断念することとしたのだった…。
――――
式典そのものは非常にスムーズに行われていった。
というのも、この式典の内容はハイデルが一枚のメダルをクリフォードに渡すのみなのだから、当然と言えば当然である。
「クリフォード。騎士としての君の素晴らしい働きぶりをここに認め、勲章としてのメダルをここに授与することとする」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!
金色に輝く美しいメダルがハイデルの手によりクリフォードの右胸に装着され、それと同時に会場から大きな拍手が沸き上がる。
そして同時に、会場中からクリフォードを称える声が無数に沸き起こったものの、当のクリフォードは非常に冷静な表情を浮かべたまま、感謝の意を示した。
「ありがとうございます」
クリフォードはまずハイデルに対してそう言葉を返したのち、そのまま視線だけアリッサの方に向けると、ハイデルから相談された通りにこう言葉を続けた。
「これからもハイデル様のため、そしてアリッサ様のため、騎士団を率いる長としてこの身を捧げ続け、全霊で使命を果たすことを誓います」
「(あらまぁ、クリフォード様ったら私の方を見ちゃってそんなことを…♪)」
「(うむうむ、それでいいのだクリフォード!)」
クリフォードははっきりとした口調でそう言葉を発し、確かなメッセージをアリッサに対して届けた。
クリフォードから視線を向けられたアリッサは分かりやすくその機嫌を良くし、ハイデルが完全に狙った通りの流れで式典は終わりを迎えるかのように思われた…。
「ハイデル様、事前にお伝えしていた通り、俺からみんなに言っておきたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「あぁ、構わないぞ。この場を好きに使うといい」
「ありがとうございます、それでは…」
クリフォードは壇上中央に立ったまま、自身の体の向きをハイデルから会場の人々の方向に向ける。
すると同時に、それまで会場のそばで控えさせていたメリアに手で合図を送り、自分の元まで来るようメッセージを送った。
「(…???)」
メリアは素直にその合図に従い、クリフォードの隣まで姿を現したものの、会場に集まった人々は当然、ハイデルやアリッサまでもいったい何を言うつもりなのかと大きな関心を向ける。
その場にいる全員といってもいい人々からの視線を一心に集めた後、クリフォードは非常に堂々とした口調でこう言葉を発して見せた。
「ハイデル様、そしてアリッサ様のために騎士として精進することをここに誓いましたが、俺にはもう一人、この身を賭して守らなければならない存在ができました。俺はここにいるメリアの事を、婚約者として迎え入れることを心に決めましたので」
「「はぁっ!?!?!?!」」
…何の前触れもなく、唐突に爆弾発言を繰り出したクリフォード。
その内容に驚いた人物はハイデルやアリッサを含めたこの場にいる全員であっただろうが、そこにはメリア本人も含まれていた。
「ク、クリフォード様!?い、いったいどういう…!?」
「いいから。黙って俺の言う事を聞いておけ」
「い、言え実は私はまだ…」
「いいから」
メリアはあることをクリフォードに説明したかった様子であったものの、クリフォードはそんな彼女の事を制してその口を封じた。
するとその時、会場にいた一人の男性がクリフォードに対してこう声を上げた。
「いくら騎士の長でもそれは認められないですよ、クリフォード様」
514
お気に入りに追加
1,200
あなたにおすすめの小説
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる