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第4話
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「皆様、本日は第二王子であらせられるハイデル様と、めでたくこれから妃となれるアリッサ様との婚約を祝う本日の式典にお越しくださいましたこと、誠に感謝申し上げます。どうぞ本日は心ゆくまで当式典をお楽しみくださいませ」
王宮の中に設けられた会場の中には、招待を受けて参列した人が数多く存在していた。
その顔触れはすさまじく、貴族家の長から騎士、政治家、投資家、研究者に至るまで、この国を動かしているといえる人物たちのほとんど全員がこの会場に姿を現していると言っても過言ではないほどであった。
そしてそんな人々に向け、司会を行う人間がそう挨拶を行った。
もっとも、主役の二人はまだその姿を現していないため、会場全体はまだ穏やかな雰囲気に包まれており、各々は主に雑談に花を咲かせて時間をつぶしている様子。
「それにしても、随分と突然の話で困ったものです。先日いきなり招待状が送られてきたかと思えば、日付は今日だというではありませんか。こちらの予定も考えてもらいたい…」
「ええ、まったくです。それでいてハイデル様の婚約式典など、今後のお付き合いを考えれば出席しないわけには参りませんからなぁ…。我々に選択肢はないに等しいわけです…」
「ハイデル様の自由奔放さにも困ったものですねぇ…。まぁハイデル様のそんな性格に我々が振り回されるのは、別に今に始まったわけではありませんが…」
…耳を澄ましてみれば、この会場のいたるところからそのような声が聞こえてくる。
ゆえにそういった思いを抱いているのは彼らだけではなく、この場において彼らと同じ思いを抱いている人はそれなりに多くいる様子。
「それに、問題なのはその婚約相手ですよ…。メリア様が婚約相手として選ばれたと聞いた時は、これでハイデル様の身勝手な性格も少しは抑えられると期待していたのに、気づいてみれば婚約者になったのは彼女ではなく、彼にとってより都合のいい存在であるアリッサ様という話ではないですか…。本当に勘弁してもらいたいですなぁ…」
「あ、僕も全く同じことを思っていましたよ。メリア様はまだお若いながらも、思ったことはストレートに口にされる性格。貴族令嬢には珍しく、どんな相手にも物怖じしない性格をされていましたから、ハイデル様の相手をするにはぴったりだと思っていたのに…」
そう会話を行う参加者の男性たちは、そろって残念そうな表情を浮かべて見せる。
それほどに彼らはメリアの事を、ハイデルの相手をするにふさわしい女性であると評価していたのだろう。
一方、アリッサに対する彼らの評価はそれはそれは冷ややかなものであった。
「婚約相手のアリッサ様、正直どう思われます?私はとてもハイデル様の相手をするにふさわしい人物ではないと思うのですが…」
「まぁ…。あまりこのような場で大きな声で言うことはできないが、私もそう思わざるを得ない…。誰がどう見たって互いに都合のいい関係でしかないだろう?周りの事など何も考えていない組み合わせで、今はうまく行っているかもしれないが、近い将来激しく衝突して争いが起こることは火を見るよりも明らかだ…」
「そうなれば我々貴族家も巻き込まれかねないぞ…。どちらの味方をするんだなどと詰め寄られたら、こんなに面倒な事はない…」
「はぁ…。めでたいはずの婚約式典であるのに、もう今から憂鬱だ…」
参加している者たちは残念そうにそう言葉を交わしながら、その場で自身の顔をガクっと伏せ、目に見えて気落ちしたような雰囲気を見せる。
ハイデルの手前、みんな表立って言う事はなかなかできないものの、彼らの中におけるメリアへの評価や期待は高かったであろうことは、そんな彼らの姿からも明らかだった。
するとその時、豪勢な衣装に身を包んだ一人の人物が彼らの前に姿を現した。
「これはこれは皆さん、こんなとこに集まって何のお話ですか?秘密のお話をされているのならぜひ私も混ぜていただきたいですねぇ」
「こ、これはこれはタイラント様…。ハイデル様の右腕だと言われるあなたにこのようなタイミングでお会いできるとは、なんとありがたいこと…」
貴族男性はその顔を引きつらせながら、現れた男性に対してそう言葉を発した。
…内心では非常に嫌そうなそんな彼の姿を見るに、現れた男性が彼らから全く快く思われていないであろうことは確かであった。
「私ごときがハイデル様の右腕などと、大げさでございますよ。私はただただハイデル様のために働いているだけの事。皆様も私のようにハイデル様に気に入られれば、より高いくらいにつくことができますよ?まずは私に恩を売ることから始めてみてはいかがかな?」
「はっはっは…。これは何とお答えすればいいのか…」
「冗談ですよ。あなたたちはごく普通の貴族家ではありませんか。どれだけ媚びを売っても、私のようにはなれませんとも♪」
「そ、そうですか…」
嫌味たらしい口調でそう言葉を発するこの人物は、ハイデルの腹心であるタイラントだ。
最も、腹心と言っても特に優れた能力や仕事ぶりを有しているというわけではなく、ただただハイデルに媚びを売って彼の機嫌を取り、その一方でハイデルに対する悪口や陰口を聞くや否やそのすべてをハイデルに報告し、相手を蹴落とし続けているだけの存在であるが…。
「もう少ししたらハイデル様とアリッサ様がここにお越しになると思いますので、それまでどうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ♪」
「ど、どうも…」
完全に相手の事を見下すような表情を浮かべながら、タイラントはそう言葉を告げた後、どこかへと姿を消していった。
貴族たちはただただ彼に対する不信感を連ね、心の中で舌打ちを行うのだった…。
王宮の中に設けられた会場の中には、招待を受けて参列した人が数多く存在していた。
その顔触れはすさまじく、貴族家の長から騎士、政治家、投資家、研究者に至るまで、この国を動かしているといえる人物たちのほとんど全員がこの会場に姿を現していると言っても過言ではないほどであった。
そしてそんな人々に向け、司会を行う人間がそう挨拶を行った。
もっとも、主役の二人はまだその姿を現していないため、会場全体はまだ穏やかな雰囲気に包まれており、各々は主に雑談に花を咲かせて時間をつぶしている様子。
「それにしても、随分と突然の話で困ったものです。先日いきなり招待状が送られてきたかと思えば、日付は今日だというではありませんか。こちらの予定も考えてもらいたい…」
「ええ、まったくです。それでいてハイデル様の婚約式典など、今後のお付き合いを考えれば出席しないわけには参りませんからなぁ…。我々に選択肢はないに等しいわけです…」
「ハイデル様の自由奔放さにも困ったものですねぇ…。まぁハイデル様のそんな性格に我々が振り回されるのは、別に今に始まったわけではありませんが…」
…耳を澄ましてみれば、この会場のいたるところからそのような声が聞こえてくる。
ゆえにそういった思いを抱いているのは彼らだけではなく、この場において彼らと同じ思いを抱いている人はそれなりに多くいる様子。
「それに、問題なのはその婚約相手ですよ…。メリア様が婚約相手として選ばれたと聞いた時は、これでハイデル様の身勝手な性格も少しは抑えられると期待していたのに、気づいてみれば婚約者になったのは彼女ではなく、彼にとってより都合のいい存在であるアリッサ様という話ではないですか…。本当に勘弁してもらいたいですなぁ…」
「あ、僕も全く同じことを思っていましたよ。メリア様はまだお若いながらも、思ったことはストレートに口にされる性格。貴族令嬢には珍しく、どんな相手にも物怖じしない性格をされていましたから、ハイデル様の相手をするにはぴったりだと思っていたのに…」
そう会話を行う参加者の男性たちは、そろって残念そうな表情を浮かべて見せる。
それほどに彼らはメリアの事を、ハイデルの相手をするにふさわしい女性であると評価していたのだろう。
一方、アリッサに対する彼らの評価はそれはそれは冷ややかなものであった。
「婚約相手のアリッサ様、正直どう思われます?私はとてもハイデル様の相手をするにふさわしい人物ではないと思うのですが…」
「まぁ…。あまりこのような場で大きな声で言うことはできないが、私もそう思わざるを得ない…。誰がどう見たって互いに都合のいい関係でしかないだろう?周りの事など何も考えていない組み合わせで、今はうまく行っているかもしれないが、近い将来激しく衝突して争いが起こることは火を見るよりも明らかだ…」
「そうなれば我々貴族家も巻き込まれかねないぞ…。どちらの味方をするんだなどと詰め寄られたら、こんなに面倒な事はない…」
「はぁ…。めでたいはずの婚約式典であるのに、もう今から憂鬱だ…」
参加している者たちは残念そうにそう言葉を交わしながら、その場で自身の顔をガクっと伏せ、目に見えて気落ちしたような雰囲気を見せる。
ハイデルの手前、みんな表立って言う事はなかなかできないものの、彼らの中におけるメリアへの評価や期待は高かったであろうことは、そんな彼らの姿からも明らかだった。
するとその時、豪勢な衣装に身を包んだ一人の人物が彼らの前に姿を現した。
「これはこれは皆さん、こんなとこに集まって何のお話ですか?秘密のお話をされているのならぜひ私も混ぜていただきたいですねぇ」
「こ、これはこれはタイラント様…。ハイデル様の右腕だと言われるあなたにこのようなタイミングでお会いできるとは、なんとありがたいこと…」
貴族男性はその顔を引きつらせながら、現れた男性に対してそう言葉を発した。
…内心では非常に嫌そうなそんな彼の姿を見るに、現れた男性が彼らから全く快く思われていないであろうことは確かであった。
「私ごときがハイデル様の右腕などと、大げさでございますよ。私はただただハイデル様のために働いているだけの事。皆様も私のようにハイデル様に気に入られれば、より高いくらいにつくことができますよ?まずは私に恩を売ることから始めてみてはいかがかな?」
「はっはっは…。これは何とお答えすればいいのか…」
「冗談ですよ。あなたたちはごく普通の貴族家ではありませんか。どれだけ媚びを売っても、私のようにはなれませんとも♪」
「そ、そうですか…」
嫌味たらしい口調でそう言葉を発するこの人物は、ハイデルの腹心であるタイラントだ。
最も、腹心と言っても特に優れた能力や仕事ぶりを有しているというわけではなく、ただただハイデルに媚びを売って彼の機嫌を取り、その一方でハイデルに対する悪口や陰口を聞くや否やそのすべてをハイデルに報告し、相手を蹴落とし続けているだけの存在であるが…。
「もう少ししたらハイデル様とアリッサ様がここにお越しになると思いますので、それまでどうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ♪」
「ど、どうも…」
完全に相手の事を見下すような表情を浮かべながら、タイラントはそう言葉を告げた後、どこかへと姿を消していった。
貴族たちはただただ彼に対する不信感を連ね、心の中で舌打ちを行うのだった…。
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