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第1話
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「カレン様、一通のお手紙が届いております」
「あら、手紙なんて珍しいわね…。いったい誰からかしら?」
「それが…」
執事のケルンは非常になにか言いづらそうな様子を浮かべつつ、手に持つ手紙を私に向けて差し出してくる。
私には最初その意味が分からなかったものの、手紙をしたためた主の名前が書かれた部分に目をやった瞬間、その意味を理解した。
「差出人……バルデス……」
バルデス、というのはかつて私と婚約関係にあった貴族男性だ。
私と彼はお互いが貴族家の生まれであったという事もあり、社交界やパーティーなどを通じて会う機会は婚約する以前から多く、親しい関係が続いていた。
そんなある日の事、バルデスは私の事を自身のお屋敷に呼び出した後、こう言葉を発した。
「カレン、僕が必ず君の事を幸せにして見せる。だから、僕との婚約を受け入れてほしい。君が欲しいというものは、なんだって手に入れて見せるとも」
正直なところ、私は彼に対して特別な思いを抱いていたというわけではない。
けれど、その時彼が見せてくれた真剣なまなざしとその言葉は私の胸の真ん中に突き刺さり、私はそんな彼を信じて婚約の道を選ぶことにしたのだった。
…それが、間違いの始まりとなることも知らず…。
「カレン、何度も言っているだろう。僕以外の男と話をするなと何度も言っているじゃないか」
「そ、そうは言われましても…。私にも貴族家としての付き合いがありますし、バルデス様の事をご紹介させていただくパーティーなどに参加しなければならないこともありますし…」
「言い訳をするんじゃない。僕は君にパーティーへの参加を控えるよう言っているのではない。参加したその場で、僕以外の男と話をするなと言っているんだ。君は夫人として僕の隣にいるのだろう?ならどうしてそんなことを言われないとわからないんだ?こんなものどこの誰であったって当たり前の事だろう?」
「…ごめんなさい、バルデス様…。私が不注意だったという事なのですね…」
私たちが結ばれてからというもの、バルデス様は次第にその本性を現し始めた。
そもそも、バルデス様に関するよくない噂は以前から存在していた。
非常に自分勝手な性格であるとか、相手には一途さを求めておきながら自分もすぐに他の女性に目移りするとか、はたまた浮気も当たり前に行っているとか…。
けれど、私はそんなものはただのうわさに過ぎないと思い、彼が言ってくれた言葉をそのまま受け入れることにしたのだった。
…だから、自分が納得のいかない怒られ方をしたとしても、それは全て自分の方に責任があって、バルデス様は何も間違ってはいないのだと思うことにした。
そうすることで、私たちの関係はより良いものに向かっていくと信じたからだった。
「…カレン様?大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんなさい、つい昔を思い出してボーっとしてしまったわ」
「やはりその手紙、あまり快いものではないのではありませんか?よろしければ私がこの手できちんと処分してまいりますが…」
私の事をそばでずっと支え続けてきてくれたケルン。
やはり彼には、私が心の中で思っていることなど全てお見通しな様子。
ただ、私はそこで彼に甘えるのではなく、あえてそのまま彼に向けて返事をしたためることにした。
「ここで無視したら、それを理由にしてまた向こうから何か言ってきそうでしょ?だからここできちんと叩いておかないと。彼が私にどんなことをして、その結果どんな目にあったのか。しかもそれを今だに受け入れずに、こうやって私にすり寄ってくるのがどれだけ醜い事かを、きちんと教えてあげないとね♪」
「はっはっは、さすがカレン様…。バルデス様を逆追放されたお気持ちの強さは今だ健在というわけでございますな」
「もぅ、あんまり主人をからかうものではないわよ?」
「からかってなどおりませんよ。私はただただ事実のみを申し上げているのですから」
うれしそうな雰囲気を浮かべながらケルンはそう言葉を発する。
そんな彼の雰囲気を見たら、私はますます心の中に湧き出るやる気を意識しないわけにはいかなくなっていくのだった。
「それでは、書きあがった時は私にお申し付けください。きちんとバルデス様の元まで届けられるよう、手配させていただきますので」
「ありがとう、その時はお願いするわね」
「はい。では、私はこれにて」
ケルンは上品な雰囲気でそう挨拶をすると、そのまま部屋のドアを丁寧に開閉し、私の元から姿を消していった。
一人ポツンと部屋の中に残される形となった私。
胸の中に湧き出るいろいろな言葉をそっと整理しつつ、そのまま返事の手紙をしたためにかかるのだった。
「あら、手紙なんて珍しいわね…。いったい誰からかしら?」
「それが…」
執事のケルンは非常になにか言いづらそうな様子を浮かべつつ、手に持つ手紙を私に向けて差し出してくる。
私には最初その意味が分からなかったものの、手紙をしたためた主の名前が書かれた部分に目をやった瞬間、その意味を理解した。
「差出人……バルデス……」
バルデス、というのはかつて私と婚約関係にあった貴族男性だ。
私と彼はお互いが貴族家の生まれであったという事もあり、社交界やパーティーなどを通じて会う機会は婚約する以前から多く、親しい関係が続いていた。
そんなある日の事、バルデスは私の事を自身のお屋敷に呼び出した後、こう言葉を発した。
「カレン、僕が必ず君の事を幸せにして見せる。だから、僕との婚約を受け入れてほしい。君が欲しいというものは、なんだって手に入れて見せるとも」
正直なところ、私は彼に対して特別な思いを抱いていたというわけではない。
けれど、その時彼が見せてくれた真剣なまなざしとその言葉は私の胸の真ん中に突き刺さり、私はそんな彼を信じて婚約の道を選ぶことにしたのだった。
…それが、間違いの始まりとなることも知らず…。
「カレン、何度も言っているだろう。僕以外の男と話をするなと何度も言っているじゃないか」
「そ、そうは言われましても…。私にも貴族家としての付き合いがありますし、バルデス様の事をご紹介させていただくパーティーなどに参加しなければならないこともありますし…」
「言い訳をするんじゃない。僕は君にパーティーへの参加を控えるよう言っているのではない。参加したその場で、僕以外の男と話をするなと言っているんだ。君は夫人として僕の隣にいるのだろう?ならどうしてそんなことを言われないとわからないんだ?こんなものどこの誰であったって当たり前の事だろう?」
「…ごめんなさい、バルデス様…。私が不注意だったという事なのですね…」
私たちが結ばれてからというもの、バルデス様は次第にその本性を現し始めた。
そもそも、バルデス様に関するよくない噂は以前から存在していた。
非常に自分勝手な性格であるとか、相手には一途さを求めておきながら自分もすぐに他の女性に目移りするとか、はたまた浮気も当たり前に行っているとか…。
けれど、私はそんなものはただのうわさに過ぎないと思い、彼が言ってくれた言葉をそのまま受け入れることにしたのだった。
…だから、自分が納得のいかない怒られ方をしたとしても、それは全て自分の方に責任があって、バルデス様は何も間違ってはいないのだと思うことにした。
そうすることで、私たちの関係はより良いものに向かっていくと信じたからだった。
「…カレン様?大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんなさい、つい昔を思い出してボーっとしてしまったわ」
「やはりその手紙、あまり快いものではないのではありませんか?よろしければ私がこの手できちんと処分してまいりますが…」
私の事をそばでずっと支え続けてきてくれたケルン。
やはり彼には、私が心の中で思っていることなど全てお見通しな様子。
ただ、私はそこで彼に甘えるのではなく、あえてそのまま彼に向けて返事をしたためることにした。
「ここで無視したら、それを理由にしてまた向こうから何か言ってきそうでしょ?だからここできちんと叩いておかないと。彼が私にどんなことをして、その結果どんな目にあったのか。しかもそれを今だに受け入れずに、こうやって私にすり寄ってくるのがどれだけ醜い事かを、きちんと教えてあげないとね♪」
「はっはっは、さすがカレン様…。バルデス様を逆追放されたお気持ちの強さは今だ健在というわけでございますな」
「もぅ、あんまり主人をからかうものではないわよ?」
「からかってなどおりませんよ。私はただただ事実のみを申し上げているのですから」
うれしそうな雰囲気を浮かべながらケルンはそう言葉を発する。
そんな彼の雰囲気を見たら、私はますます心の中に湧き出るやる気を意識しないわけにはいかなくなっていくのだった。
「それでは、書きあがった時は私にお申し付けください。きちんとバルデス様の元まで届けられるよう、手配させていただきますので」
「ありがとう、その時はお願いするわね」
「はい。では、私はこれにて」
ケルンは上品な雰囲気でそう挨拶をすると、そのまま部屋のドアを丁寧に開閉し、私の元から姿を消していった。
一人ポツンと部屋の中に残される形となった私。
胸の中に湧き出るいろいろな言葉をそっと整理しつつ、そのまま返事の手紙をしたためにかかるのだった。
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