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南プロシアン王国編
誤算
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「ご名答。その通り。ロマリア帝国は近々ザラメスに進撃する予定があるとそのお方は仰っていた。同盟を結んだ暁にはザラメスを我が国の領土として構わないとな。
ザラメスが我が領土となれば維持費や諸経費を差し引いても年間一億ミゼル以上の収益が見込める。それに南プロシアンとザラメスが合併すればかなり広大な国土になる。
始祖マリー様以来何百年もこの土地に押し込められていた我が民族が大陸に繰り出す絶好の機会なのだ」
「ばかな。。そんな事あり得る訳がない」
「たかが十五歳の小娘に何がわかる?これはロマリア帝国の中でもトップ級のお方との密談で確約された事なのだ。ザラメスを領土として貰い受け、帝国の保護下に入れてもらう。
その見返りとして我らはロマリア帝国にフロリアーナとルーファスの結婚と海軍力の提供、さらにタスタニアとの戦争における物資の供給にも協力する事で合意したのだ」
マルコの主張にティファが異を唱える。
「ザラメスは帝国とタスタニア、南プロシアンの間にある緩衝地帯。ここがなくなれば帝国軍は南プロシアンに軍を直接向けられる。だからザラメスはなくてはならない。少なくともこの群雄割拠の時代には」
「ティファの言う通りだ。だから始祖マリー様は産声をあげたばかりのこの国を他国の侵略から守るために自由商業都市をあの場所に築いたのだ。南プロシアンの人間なら一度は読んだ事があるであろう。始祖マリー様が残されたイシュタニア史記を。
その中に記載されている。生まれたばかりの名もないこの国をラパドールを始めとする他国の侵略から守るためにはこの国と他国の間に緩衝地帯となる地域を作らなくてはならない。と」
イシュタニアとはかつて存在した大昔の国家であるが、当時の最強国であるラパドールに攻め滅ぼされてしまった。
イシュタニア最後の王妃であったマリーは生き残った人たちとまだ未開の地であった南半島に逃げ、ここで後に南プロシアンと呼ばれる新たな国家を設立したのである。
イシュタニア史記はマリーがイシュタニアが存在した証、自分たちの生きた証として書き残した貴重な歴史書であり、南プロシアンを代々統治する者がその保有権を持ち保管している。
数十年前であるが、アルベルト一世の尽力により、その複本が国家図書館に展示されて南プロシアンの国民なら誰でも閲覧出来るようになっていた。
フロリアーナの言葉にマルコは焦りを感じていた。
彼女の言う通り、南プロシアンの国民であるマルコも一度ならず何度もイシュタニア史記を読んでいる。
しかしマルコはザラメスが始祖マリーが考案して後世の人々が緩衝地帯として作り上げた事までは読んだつもりで頭から抜け落ちていた。
「私たちがザラメスで収集している情報には帝国がザラメスに進出すると言う内容のものは現時点では見られません。帝国がザラメスとの協定を破って進出してくる可能性も十分にあるため、私たちはその動きがあればいち早く発見出来る様に多数の諜報員をザラメスに派遣しているんです。
その密約をロマリア帝国の誰と結んだのか知らないけど、ザラメスが無くなったらこの国を守る緩衝地帯が無くなってロマリア帝国が軍を直接ここへ進撃させられる道が繋るだけの話し。
ましてやフロリアーナ様をルーファスとの政略結婚に使ったところで、貰えるものだけ貰って国王のいなくなったこの国はロマリア帝国の一部として吸収される。それこそロマリア帝国の思う壺です。伯爵、あなたは見事に嵌められたのです」
「そんな。。馬鹿な。。」
「そもそもロマリア帝国がザラメスに進撃したらその足で南プロシアンにも進撃して来て占領下に置いてしまうでしょう。ザラメスだけ占領して自分たちが獲得した領土を「はいどうぞ」と南プロシアンに献上する理由がどこにありますか?
あなたが密談したという相手は最初から守る気のない絵空事の約束を並べ立ていただけです。交換条件として出した海軍力と物資の提供だって占領下に置いてしまえば自分たちの使い放題ですから」
そこまで聞き終えてマルコは肩を落とし、その場に両ひざをついて座り込んだ。
「これで私もおしまいという事か。。タスタニアを選択肢から外したのは新興国だったと言うだけではない。アルベルト一世が興味を示さなかったからだ。
だが、今にして思えば既に裏でタスタニアと手を結ぶ密約が出来ていたからあえて興味のない素振りをしていたという事だったのか。。それを見抜けなかった私のミスだ。フロリアーナの命を取らなかったのは、いくら邪魔でも長年仕えた主人を自分の手で始末するのは忍びなかったからな。
だからナサレノに任せたが、あの愚物では無理であった。タスタニアで保護されてそのまま戻って来ないならそれでも良かった。それもお前たちタスタニアの面々によって覆された。
何より領土拡大と大陸中央への進出に目が眩み、騙されているのも気がつかなかった。結局全てはわしの甘さから来たと言う訳だ」
マルコが全てを白状するとフロリアーナは絞り出すように小さな声でアレッシオに命じた。
「アレッシオ、じい。。いやマルコ伯爵を私の目の届かないところへ連れて行ってくれ」
「かしこまりました」
アレッシオの命令ですぐに兵士たちが駆けつけ、マルコ伯爵は地下牢に入れられた。
南プロシアンでは国家反逆罪は処刑の決まりとなっている。
いずれ刑に服する時が来るだろう。
ザラメスが我が領土となれば維持費や諸経費を差し引いても年間一億ミゼル以上の収益が見込める。それに南プロシアンとザラメスが合併すればかなり広大な国土になる。
始祖マリー様以来何百年もこの土地に押し込められていた我が民族が大陸に繰り出す絶好の機会なのだ」
「ばかな。。そんな事あり得る訳がない」
「たかが十五歳の小娘に何がわかる?これはロマリア帝国の中でもトップ級のお方との密談で確約された事なのだ。ザラメスを領土として貰い受け、帝国の保護下に入れてもらう。
その見返りとして我らはロマリア帝国にフロリアーナとルーファスの結婚と海軍力の提供、さらにタスタニアとの戦争における物資の供給にも協力する事で合意したのだ」
マルコの主張にティファが異を唱える。
「ザラメスは帝国とタスタニア、南プロシアンの間にある緩衝地帯。ここがなくなれば帝国軍は南プロシアンに軍を直接向けられる。だからザラメスはなくてはならない。少なくともこの群雄割拠の時代には」
「ティファの言う通りだ。だから始祖マリー様は産声をあげたばかりのこの国を他国の侵略から守るために自由商業都市をあの場所に築いたのだ。南プロシアンの人間なら一度は読んだ事があるであろう。始祖マリー様が残されたイシュタニア史記を。
その中に記載されている。生まれたばかりの名もないこの国をラパドールを始めとする他国の侵略から守るためにはこの国と他国の間に緩衝地帯となる地域を作らなくてはならない。と」
イシュタニアとはかつて存在した大昔の国家であるが、当時の最強国であるラパドールに攻め滅ぼされてしまった。
イシュタニア最後の王妃であったマリーは生き残った人たちとまだ未開の地であった南半島に逃げ、ここで後に南プロシアンと呼ばれる新たな国家を設立したのである。
イシュタニア史記はマリーがイシュタニアが存在した証、自分たちの生きた証として書き残した貴重な歴史書であり、南プロシアンを代々統治する者がその保有権を持ち保管している。
数十年前であるが、アルベルト一世の尽力により、その複本が国家図書館に展示されて南プロシアンの国民なら誰でも閲覧出来るようになっていた。
フロリアーナの言葉にマルコは焦りを感じていた。
彼女の言う通り、南プロシアンの国民であるマルコも一度ならず何度もイシュタニア史記を読んでいる。
しかしマルコはザラメスが始祖マリーが考案して後世の人々が緩衝地帯として作り上げた事までは読んだつもりで頭から抜け落ちていた。
「私たちがザラメスで収集している情報には帝国がザラメスに進出すると言う内容のものは現時点では見られません。帝国がザラメスとの協定を破って進出してくる可能性も十分にあるため、私たちはその動きがあればいち早く発見出来る様に多数の諜報員をザラメスに派遣しているんです。
その密約をロマリア帝国の誰と結んだのか知らないけど、ザラメスが無くなったらこの国を守る緩衝地帯が無くなってロマリア帝国が軍を直接ここへ進撃させられる道が繋るだけの話し。
ましてやフロリアーナ様をルーファスとの政略結婚に使ったところで、貰えるものだけ貰って国王のいなくなったこの国はロマリア帝国の一部として吸収される。それこそロマリア帝国の思う壺です。伯爵、あなたは見事に嵌められたのです」
「そんな。。馬鹿な。。」
「そもそもロマリア帝国がザラメスに進撃したらその足で南プロシアンにも進撃して来て占領下に置いてしまうでしょう。ザラメスだけ占領して自分たちが獲得した領土を「はいどうぞ」と南プロシアンに献上する理由がどこにありますか?
あなたが密談したという相手は最初から守る気のない絵空事の約束を並べ立ていただけです。交換条件として出した海軍力と物資の提供だって占領下に置いてしまえば自分たちの使い放題ですから」
そこまで聞き終えてマルコは肩を落とし、その場に両ひざをついて座り込んだ。
「これで私もおしまいという事か。。タスタニアを選択肢から外したのは新興国だったと言うだけではない。アルベルト一世が興味を示さなかったからだ。
だが、今にして思えば既に裏でタスタニアと手を結ぶ密約が出来ていたからあえて興味のない素振りをしていたという事だったのか。。それを見抜けなかった私のミスだ。フロリアーナの命を取らなかったのは、いくら邪魔でも長年仕えた主人を自分の手で始末するのは忍びなかったからな。
だからナサレノに任せたが、あの愚物では無理であった。タスタニアで保護されてそのまま戻って来ないならそれでも良かった。それもお前たちタスタニアの面々によって覆された。
何より領土拡大と大陸中央への進出に目が眩み、騙されているのも気がつかなかった。結局全てはわしの甘さから来たと言う訳だ」
マルコが全てを白状するとフロリアーナは絞り出すように小さな声でアレッシオに命じた。
「アレッシオ、じい。。いやマルコ伯爵を私の目の届かないところへ連れて行ってくれ」
「かしこまりました」
アレッシオの命令ですぐに兵士たちが駆けつけ、マルコ伯爵は地下牢に入れられた。
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