ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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南プロシアン王国編

真の黒幕 前編

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ナサレノは討ち取られ、反乱軍は一人残らず確保されてアイゼレリアと宮殿にようやく落ち着いた頃、ティファが宮殿に到着し、レイラがそれを迎えた。

「ティファ、待っていたよ」

「反乱軍の制圧お疲れ様だったね。これで終わりならよかったんだけど、これからやる事は今回の中で一番きついかもね」

「そうだね。。」

ティファとレイラは顔を見合わせたが、ティファの決意した表情にレイラは「任せたよ」と声を掛けた。
反乱軍を制圧し、湧きかえる宮殿内にフロリアーナが戻ると真っ先にマルコ伯爵が声をかけて来た。

「フロリアーナ様、あらためてお帰りなさいませ。ナサレノは討ち取られ反乱軍は全て制圧しました。これで万事解決ですな」

マルコがフロリアーナに近づこうとすると、後ろからティファが声を上げた。

「お待ち下さい。まだ終わってはいません。この一連の反乱の真の黒幕が残っております」

ティファの言葉にアレッシオもヴィンセントも驚きの表情隠せなかった。

「ティファニー殿、真の黒幕とは?」

「マルコ伯爵、あなたです」

ティファの言葉にマルコの表情が一変し、アレッシオとヴィンセントは驚き、フロリアーナはぐっと拳を握りしめた。

「お待ち下さい。何故、私が黒幕なのですか?」

「そもそもナサレノ程度の小物に今回のような大きな反乱を起こせるとは思えません。私たちはおそらく影でナサレノを操っている人物がいると睨んでいました。そしてフロリアーナ様の近辺に居てフロリアーナ様の行動を一番よく知る人物はあなたしかいない。

ナサレノが手勢を率いてフロリアーナ様があなたと二人しかいない所を襲撃したのも、あらかじめ手はず通りだったんでしょ。ヴィンセントさんに無断でカルドザルス騎士団を追っ手として追跡させたのもあなた。タスタニアに亡命するようフロリアーナ様に進言したのもあなたですから」

「ティファニー殿、それだけで私を黒幕扱いするとは酷いですな。長年フロリアーナ様にお仕えした私がそのような事をする訳がございませんでしょう」

マルコは懸命にフロリアーナにたすけを求めた。
しかしフロリアーナはそれを冷ややかな目で見ていた。

「私は最初にあなたがタスタニアにフロリアーナ様を追って入国した時から怪しいと感じていました。あなたが来たのはフロリアーナ様が入国されてから三日後。仮にも一国の姫君を守る従者なら追手から逃れられたらすぐに主の後を追うはず。三日間どこで何をしていたのですか?」

「騎士団に負わされた怪我が思わしくなく、歩けなかったので治療をしていたのだ」

「あなたは怪我をしたフリをして、ザラメスに潜伏してナサレノに指示を下しながらフロリアーナ様の動きを調べていた。違いますか?」

「違う。怪我をして動けなかったのだ」

マルコは必死に弁明するが、ティファはさらに追い討ちをかける。

「あなたはヴィンセントさんがカルドザルス騎士団を率いてオルジュにいるフロリアーナ様を襲撃するのを知っていた。当然ですよね。あなたがナサレノに命じたんですから。それを避けるためにザラメスで様子見していた」

「そんな事は知らぬ」

マルコはあくまでも知らないと言い張る。

「私たちもまだ半信半疑だった。あなたはフロリアーナ様が一番頼りにしていた人ですから。でも造船を終えて南プロシアンに出撃準備が整った段階で疑心が確信に変わった。

あなたは私たちとロマリア帝国との西方戦線がどうなっているかを私やパトリシアに幾度となく聞いてきた。これから自国に戻れるか否かの戦いに向かおうとしている時に自国より他国の戦況が気になるなんておかしいですからね」

「それは。。国の戦力を二分して戦ってくれているあなたたちが心配でしたからです。それに忘れてもらっては困りますな。私はあなた達に造船の技術も提供したのですぞ」

「なるほど、私たちの身を案じてくれていたと言う訳ね。それではそう言う事にしておきましょうか」

ティファはその件は置いておいて構わないと言わんばかりの態度で話しを進めた。
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