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南プロシアン王国編
最後の抵抗
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一方のフロリアーナはかつて母が使用していて、幼い頃よく遊んでいた離宮の前まで着いていた。
「母上がご健在の頃はよくここで遊んでいたっけな」
フロリアーナにとっては思い出の場所であるが、今は懐かしんでいる場合ではない。
「ナサレノ!どこにいる?私はここまで戻ってきたぞ」
フロリアーナは大声で叫んだ。
「奴は私の命と王家の指輪が目的だ。私一人でいれば必ず姿を現す」
フロリアーナは気を張り、細心の注意をしながら辺りを見て回った。
フロリアーナはタスタニアに亡命してきた時は丸腰であったが、何かあった時のために自分の身を守る剣はあったほうがいいと、シュミット国王から剣を授かっていた。
王家の娘として生まれてきた彼女であるから、幼少から乗馬や剣の修業もしてきて、自分の身を守る程度の武力は備わっている。
その声はナサレノの耳に届き、ナサレノは建物の影からフロリアーナの姿を発見した。
「タスタニアの護衛兵がいない。フロリアーナ一人か。これは俺に運が回ってきたようだ」
ナサレノはフロリアーナを油断させて近づき、短剣で刺し殺そうと企んだ。
「まともにやりあっては武芸を身につけている奴には敵わない。油断させて近寄りこの短剣で始末してやる」
アルベルト一世の側近であったナサレノは幼少よりフロリアーナが剣の修行をしているのを知っており、まともにやりあっては短剣と長剣、おまけに武芸を身につけているフロリアーナにナサレノは勝ち目がなかった。
相手を油断させて近寄り、短剣の間合いに入ったところを突き刺さすか斬りつける。
これが起死回生の逆転の一撃と作戦を立てたナサレノはフロリアーナの前に姿を現した。
「フロリアーナ様、よくぞお戻りになられました。心から歓迎致しますぞ」
突然目の前に出てきたナサレノにフロリアーナは驚くよりも不快な表情をあらわにした。
「よくそんな言葉が口から出てくるものだな」
「私は己の過ちにようやく気がついたのです。これまでの罪をお許し下さるなら、あなたに忠誠を誓い、粉骨砕身の覚悟でこの国をお守り致します」
ナサレノが薄笑いを浮かべて話すのをフロリアーナは冷ややかな目で突き放した。
「お主の忠誠など私には不要だ。言葉通り粉骨砕身して消えてくれぬか」
フロリアーナのひと言にナサレノは怒りを覚えたが辛うじて抑えた。
「これはきついお言葉。私はあなたのお父上であられる先代王アルベルト一世の忠臣であったのですぞ。一時の気の迷いがあった事は認めます。しかし私にはまだ使い道があります、どうかあなた様のお力添えをさせて下さい」
「今さら舌先三寸で命乞いしたところで、私は父上と違ってそれを許すほどの寛容さは持ち合わせていないのでな。子供の使いすら満足に出来ない人間に使い道もなかろう。下品な薄笑いを浮かべるのはそのくらいにして、そろそろ本性を表したらどうだ」
この言葉にナサレノはついに怒りをあらわにした。
「大人しくしてればつけ上がりやがって。フロリアーナ、命と王家の指輪をもらうぞ」
ナサレノはそう言うといきなり短剣で突き刺そうと突進してきた。
しかしフロリアーナはこれを予測していて、ひらりとかわすとナサレノは突きから斬りつけに切り替えてきた。
「口先だけで下手な薄笑いをしたところで、薄汚い本性は隠しきれん。その方がお主らしくていいぞ」
「やかましい」
ナサレノは短剣で二度三度と斬りかかったが、フロリアーナはそれを左右に身体を反転させながらかわしていく。
そしてフロリアーナが剣を抜いて構えると、ナサレノは内心冷や汗をかいた。
フロリアーナは一切油断していなかった。それ以前にナサレノを一切信用していないので、どんな言葉巧みに誘導しようとしても通用などするはずもなかった。
(万事休すか)
ナサレノがそう思っていたその時であった。
離宮の清掃を終えたメイドが入り口の扉を開けて外に出てきたところを二人と鉢合わせてしまったのだ。
それを見たナサレノはニヤリと笑った。
「天はまだ我を見放さなかった」
「母上がご健在の頃はよくここで遊んでいたっけな」
フロリアーナにとっては思い出の場所であるが、今は懐かしんでいる場合ではない。
「ナサレノ!どこにいる?私はここまで戻ってきたぞ」
フロリアーナは大声で叫んだ。
「奴は私の命と王家の指輪が目的だ。私一人でいれば必ず姿を現す」
フロリアーナは気を張り、細心の注意をしながら辺りを見て回った。
フロリアーナはタスタニアに亡命してきた時は丸腰であったが、何かあった時のために自分の身を守る剣はあったほうがいいと、シュミット国王から剣を授かっていた。
王家の娘として生まれてきた彼女であるから、幼少から乗馬や剣の修業もしてきて、自分の身を守る程度の武力は備わっている。
その声はナサレノの耳に届き、ナサレノは建物の影からフロリアーナの姿を発見した。
「タスタニアの護衛兵がいない。フロリアーナ一人か。これは俺に運が回ってきたようだ」
ナサレノはフロリアーナを油断させて近づき、短剣で刺し殺そうと企んだ。
「まともにやりあっては武芸を身につけている奴には敵わない。油断させて近寄りこの短剣で始末してやる」
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相手を油断させて近寄り、短剣の間合いに入ったところを突き刺さすか斬りつける。
これが起死回生の逆転の一撃と作戦を立てたナサレノはフロリアーナの前に姿を現した。
「フロリアーナ様、よくぞお戻りになられました。心から歓迎致しますぞ」
突然目の前に出てきたナサレノにフロリアーナは驚くよりも不快な表情をあらわにした。
「よくそんな言葉が口から出てくるものだな」
「私は己の過ちにようやく気がついたのです。これまでの罪をお許し下さるなら、あなたに忠誠を誓い、粉骨砕身の覚悟でこの国をお守り致します」
ナサレノが薄笑いを浮かべて話すのをフロリアーナは冷ややかな目で突き放した。
「お主の忠誠など私には不要だ。言葉通り粉骨砕身して消えてくれぬか」
フロリアーナのひと言にナサレノは怒りを覚えたが辛うじて抑えた。
「これはきついお言葉。私はあなたのお父上であられる先代王アルベルト一世の忠臣であったのですぞ。一時の気の迷いがあった事は認めます。しかし私にはまだ使い道があります、どうかあなた様のお力添えをさせて下さい」
「今さら舌先三寸で命乞いしたところで、私は父上と違ってそれを許すほどの寛容さは持ち合わせていないのでな。子供の使いすら満足に出来ない人間に使い道もなかろう。下品な薄笑いを浮かべるのはそのくらいにして、そろそろ本性を表したらどうだ」
この言葉にナサレノはついに怒りをあらわにした。
「大人しくしてればつけ上がりやがって。フロリアーナ、命と王家の指輪をもらうぞ」
ナサレノはそう言うといきなり短剣で突き刺そうと突進してきた。
しかしフロリアーナはこれを予測していて、ひらりとかわすとナサレノは突きから斬りつけに切り替えてきた。
「口先だけで下手な薄笑いをしたところで、薄汚い本性は隠しきれん。その方がお主らしくていいぞ」
「やかましい」
ナサレノは短剣で二度三度と斬りかかったが、フロリアーナはそれを左右に身体を反転させながらかわしていく。
そしてフロリアーナが剣を抜いて構えると、ナサレノは内心冷や汗をかいた。
フロリアーナは一切油断していなかった。それ以前にナサレノを一切信用していないので、どんな言葉巧みに誘導しようとしても通用などするはずもなかった。
(万事休すか)
ナサレノがそう思っていたその時であった。
離宮の清掃を終えたメイドが入り口の扉を開けて外に出てきたところを二人と鉢合わせてしまったのだ。
それを見たナサレノはニヤリと笑った。
「天はまだ我を見放さなかった」
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