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南プロシアン王国編
アイゼレリアの戦い 後編
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フロリアーナとマリアは離宮に向かって走っていたが、その前にも宮殿警備隊が立ちはだかった。
「フロリアーナがいたぞ」
「王家の指輪を奪い取れば一生遊んで暮らせる金が手に入る」
警備隊は金に目が眩んだ人間の集まりであった。
「愚かな」
フロリアーナは呆れていた。
父であるアルベルト一世の頃より宮殿を守る警備隊がこんな程度だったと知り失望もあった。
「私が女王になったら、宮殿警備隊はカルドザルス騎士団を任命する事にしよう。お主たちは不要だ」
「そんな事は女王になってから言え」
斬りかかってきた警備兵をマリアが逆に斬り倒した。
「フロリアーナ様、ここは私が引き受けます。フロリアーナ様はナサレノを追って下さい。後から必ず追いつきます」
「しかし相手は十人。いくらお主でも。。」
「この程度の兵士の十人や二十人。私一人で十分でございます。私を信じて下さい」
マリアの実力はフロリアーナも周知の事ではあるが、それでも一瞬躊躇った。
だが、ここでグズグスしてナサレノに国外に逃げられたらここまでの苦労が水泡に帰してしまう。
「マリア、すまぬ。ここは任せたぞ」
フロリアーナはマリアを信じて先に進む事を決断した。
フロリアーナの後を追おうとした警備兵をマリアが両手を広げて静止し、進路に立ちはだかった。
「俺たちの十人や二十人、一人で十分だと?」
宮殿警備隊はマリアを取り囲むとジリジリ間合いを詰めてきた。
(必ず追いつきます。どうかご無事で)
マリアはそう心の中で呟くと、大刀サラマンダーを分割して二刀流になった。
(かつて師であるミュラー将軍から言われたっけな。どんな剣の達人でも一斉に襲い掛かられたら余程の実力差がない限り四人まで倒すのが限度だと)
宮殿警備隊はアルベルト一世を始めとする王族の守衛を任されるため、カルドザルス騎士団ほどではないにせよ、相応の実力がある者が選抜された武力集団である。
三人、四人ならマリアの実力なら簡単に打ち倒せるが、十人となるとさすがのマリアも未知であった。
「くたばれ!」
警備兵が五人で一斉に襲いかかってきた。
マリアのサラマンダーが左右の腕から凄まじい剣速で警備兵を斬り裂く。
一人、二人と首筋を斬られ、四人目までを斬り倒したが、五人目の剣がマリアの右肩を僅かに切り裂き、マリアは右肩から出血した。
「ミュラー将軍の教えの通り、一斉に襲い掛かられたら四人までは何とかなっても五人目は厳しいな」
百戦錬磨のミリアードであるミュラーならではの言葉であった。
マリアの右肩が派手に出血したので、相手から見たら深傷を負わせたように見えたが、実は薄皮一枚切った程度であった。
残るは六人。
マリアは再びサラマンダーを両手に構えて今度は自分から斬りつけていった。
マリアの鋭い剣が警備兵を二人斬ったが、背後に回った二人が同時に斬りつけてきた。
(しまった!ここまでか。。)
さすがのマリアも死を覚悟したが、背後の二人の動きが止まり、その場に倒れた。
「マリア、間に合って良かった」
「レジーナ!」
カルドザルス騎士団と共に宮殿警備隊を鎮圧したレイラとレジーナは、後をヴィンセントとアレッシオに任せてフロリアーナとマリアを探しに向かっていた。
その矢先にレジーナがマリアの危機を見つけて助けに入ったのである。
「マリア、大丈夫か?」
「ああ。助かったよ」
マリアとレジーナは共に剣を構えると残る四人のうち三人を瞬時に撃ち倒し、最後の一人は悲鳴をあげて逃げていった
どんなに欲や金に目が眩んでも、命あっての物種である。
「レジーナ、来てくれたばかりで済まないが、私はフロリアーナ様をお助けしなくてはならない」
「わかっている。後は私に任せてフロリアーナ様を追ってくれ」
レジーナはそう言うと、スカーフを取り出してマリアの右肩に巻き付けた。
「簡易な応急処置だが、傷は浅いからこれで大丈夫だろう。さあ、行け!」
レジーナの声と共にマリアはフロリアーナの後を追いかけた。
「フロリアーナがいたぞ」
「王家の指輪を奪い取れば一生遊んで暮らせる金が手に入る」
警備隊は金に目が眩んだ人間の集まりであった。
「愚かな」
フロリアーナは呆れていた。
父であるアルベルト一世の頃より宮殿を守る警備隊がこんな程度だったと知り失望もあった。
「私が女王になったら、宮殿警備隊はカルドザルス騎士団を任命する事にしよう。お主たちは不要だ」
「そんな事は女王になってから言え」
斬りかかってきた警備兵をマリアが逆に斬り倒した。
「フロリアーナ様、ここは私が引き受けます。フロリアーナ様はナサレノを追って下さい。後から必ず追いつきます」
「しかし相手は十人。いくらお主でも。。」
「この程度の兵士の十人や二十人。私一人で十分でございます。私を信じて下さい」
マリアの実力はフロリアーナも周知の事ではあるが、それでも一瞬躊躇った。
だが、ここでグズグスしてナサレノに国外に逃げられたらここまでの苦労が水泡に帰してしまう。
「マリア、すまぬ。ここは任せたぞ」
フロリアーナはマリアを信じて先に進む事を決断した。
フロリアーナの後を追おうとした警備兵をマリアが両手を広げて静止し、進路に立ちはだかった。
「俺たちの十人や二十人、一人で十分だと?」
宮殿警備隊はマリアを取り囲むとジリジリ間合いを詰めてきた。
(必ず追いつきます。どうかご無事で)
マリアはそう心の中で呟くと、大刀サラマンダーを分割して二刀流になった。
(かつて師であるミュラー将軍から言われたっけな。どんな剣の達人でも一斉に襲い掛かられたら余程の実力差がない限り四人まで倒すのが限度だと)
宮殿警備隊はアルベルト一世を始めとする王族の守衛を任されるため、カルドザルス騎士団ほどではないにせよ、相応の実力がある者が選抜された武力集団である。
三人、四人ならマリアの実力なら簡単に打ち倒せるが、十人となるとさすがのマリアも未知であった。
「くたばれ!」
警備兵が五人で一斉に襲いかかってきた。
マリアのサラマンダーが左右の腕から凄まじい剣速で警備兵を斬り裂く。
一人、二人と首筋を斬られ、四人目までを斬り倒したが、五人目の剣がマリアの右肩を僅かに切り裂き、マリアは右肩から出血した。
「ミュラー将軍の教えの通り、一斉に襲い掛かられたら四人までは何とかなっても五人目は厳しいな」
百戦錬磨のミリアードであるミュラーならではの言葉であった。
マリアの右肩が派手に出血したので、相手から見たら深傷を負わせたように見えたが、実は薄皮一枚切った程度であった。
残るは六人。
マリアは再びサラマンダーを両手に構えて今度は自分から斬りつけていった。
マリアの鋭い剣が警備兵を二人斬ったが、背後に回った二人が同時に斬りつけてきた。
(しまった!ここまでか。。)
さすがのマリアも死を覚悟したが、背後の二人の動きが止まり、その場に倒れた。
「マリア、間に合って良かった」
「レジーナ!」
カルドザルス騎士団と共に宮殿警備隊を鎮圧したレイラとレジーナは、後をヴィンセントとアレッシオに任せてフロリアーナとマリアを探しに向かっていた。
その矢先にレジーナがマリアの危機を見つけて助けに入ったのである。
「マリア、大丈夫か?」
「ああ。助かったよ」
マリアとレジーナは共に剣を構えると残る四人のうち三人を瞬時に撃ち倒し、最後の一人は悲鳴をあげて逃げていった
どんなに欲や金に目が眩んでも、命あっての物種である。
「レジーナ、来てくれたばかりで済まないが、私はフロリアーナ様をお助けしなくてはならない」
「わかっている。後は私に任せてフロリアーナ様を追ってくれ」
レジーナはそう言うと、スカーフを取り出してマリアの右肩に巻き付けた。
「簡易な応急処置だが、傷は浅いからこれで大丈夫だろう。さあ、行け!」
レジーナの声と共にマリアはフロリアーナの後を追いかけた。
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