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南プロシアン王国編
ヴィンセント帰順
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フロリアーナとマリアを先頭にしたタスタニア軍は宮殿の入り口まで進行していた。
入り口にはヴィンセントが立っており、後ろにはカルドザルス騎士団の騎士たちが控えていた。
「マリア、オルジュの宮殿での約束の返事をヴィンセントに聞いてくる。ここで待っていてくれ」
「大丈夫ですか?」
「案ずるな」
フロリアーナは馬から降りるとヴィンセントに歩み寄って行った。
「ヴィンセント、私はこうしてここまで戻ってきた。いつぞやの約束の事は覚えていような」
「無論」
ヴィンセントはそう言うとフロリアーナの前にひざまづいて臣下の礼を取った。
「これまでの数々のご無礼をお許し下さい。命令とはいえ私はあなたのお命を奪おうと致しました。本来なら万死の罪に値しますでありましょうが、せめてもの罪滅ぼしに国の再建をお手伝いさせて下さい」
「お主は無骨だからな。気にするな。これから私と共に国をより良くしていくために力を貸してくれ」
「有り難きお言葉。これよりヴィンセント以下カルドザルス騎士団はフロリアーナ様に忠誠を誓います」
ヴィンセントの声が響き渡り、後ろに控えていたカルドザルス騎士団百人の騎士たちも一斉にひざまづき、臣下の礼をとった。
「フロリアーナ様」
「アレッシオか」
「ご無事に戻られて嬉しく思います。私は先代アルベルト一世からあなたの事を託されておきながら、一人で何も出来ずナサレノに従うふりをして、何とか暴走を食い止めるだけが精一杯でした。この一連の責任は私にございます」
アレッシオはそう言うと短剣を出して自分喉に突き刺そうとした。
突然の事にヴィンセントも驚き、止めようとするが、それより一瞬早くマリアが反応して、アレッシオの短剣を大刀サラマンダーで弾き飛ばした。
「早まるな、アレッシオ。そもそも、この一連の原因は父上がナサレノに身分不相応な役職を与えた事から始まっているのだ。父上の残した負の遺産は娘である私が処理せねばなるまい」
地位と権力を手に入れた人間の暴走は歴史上にいくつもある。むしろ、そうならなかった方が奇跡的であるのかも知れない。
ナサレノも例外ではなかった。というよりナサレノの場合、アルベルト一世が亡くなると待ってましたとばかりにこの一連の反乱を起こしたのだから、フロリアーナとしては怒りこそあれ、情けをかけてやるつもりは毛頭なかった。
「アレッシオ、お主もヴィンセントと一緒に私に力を貸してくれ」
フロリアーナの言葉にアレッシオは平伏して答えた。
「このような役立たずでも使って頂けるのであれば、いくらでもお使い下さい」
アレッシオもフロリアーナへの忠誠を誓った。
「フロリアーナ様、私とヴィンセントはナサレノに自決用の短剣を渡しましたが、奴に一瞬の隙を突かれて隠し通路から逃走されてしまいました。この宮殿の外には逃げられぬよう出口はすべて塞いでおきましたが、いまだ行方が掴めません。不覚を取り申し訳ございません」
「父上が設置した隠し通路を使ったのであれば、出口は離宮に繋がっているはず。。」
フロリアーナはかつて父からいざという時のための隠し扉の場所と通路を通った出口を教えられていたので、ナサレノの行き先は検討がついていた。
「奴は母上が昔使っていた離宮に向かっている。ここまで来て決着も付けずに逃すものか」
フロリアーナはそう言うとマリアに目で合図をして、ナサレノと決着をつけるために離宮へと向かった。
「ヴィンセント、アレッシオ。ここの鎮圧は頼んだぞ。私はナサレノと決着をつけてくる」
「御意」
フロリアーナが帰国し、大半の民衆や兵士たちは歓迎していたが、宮殿警備隊はナサレノ直下の兵士で、ナサレノの命令に従順し、フロリアーナとタスタニア軍を倒すべく宮殿に配置され、既に数カ所で宮殿警備隊とタスタニア軍の戦いが始まっていた。
「アレッシオ。よからぬ事を考えるなと言ったはず。この国の再建にお主の力は必要なのだ。これまでの無礼はこれからの仕事で取り返せばいい」
「ああ。私が浅はかであった。死んでどうにもなるものではない。むしろ生き恥を晒してでもこれからの国作りに生涯を捧げる事にしよう」
アレッシオがそう答えるとヴィンセントも安心し、カルドザルス騎士団を率いて戦いに参戦した。
「俺たちカルドザルス騎士団はタスタニア軍と協力して宮殿警備隊を鎮圧してくる。お主はここでフロリアーナ様のご無事を祈り待っていろ」
入り口にはヴィンセントが立っており、後ろにはカルドザルス騎士団の騎士たちが控えていた。
「マリア、オルジュの宮殿での約束の返事をヴィンセントに聞いてくる。ここで待っていてくれ」
「大丈夫ですか?」
「案ずるな」
フロリアーナは馬から降りるとヴィンセントに歩み寄って行った。
「ヴィンセント、私はこうしてここまで戻ってきた。いつぞやの約束の事は覚えていような」
「無論」
ヴィンセントはそう言うとフロリアーナの前にひざまづいて臣下の礼を取った。
「これまでの数々のご無礼をお許し下さい。命令とはいえ私はあなたのお命を奪おうと致しました。本来なら万死の罪に値しますでありましょうが、せめてもの罪滅ぼしに国の再建をお手伝いさせて下さい」
「お主は無骨だからな。気にするな。これから私と共に国をより良くしていくために力を貸してくれ」
「有り難きお言葉。これよりヴィンセント以下カルドザルス騎士団はフロリアーナ様に忠誠を誓います」
ヴィンセントの声が響き渡り、後ろに控えていたカルドザルス騎士団百人の騎士たちも一斉にひざまづき、臣下の礼をとった。
「フロリアーナ様」
「アレッシオか」
「ご無事に戻られて嬉しく思います。私は先代アルベルト一世からあなたの事を託されておきながら、一人で何も出来ずナサレノに従うふりをして、何とか暴走を食い止めるだけが精一杯でした。この一連の責任は私にございます」
アレッシオはそう言うと短剣を出して自分喉に突き刺そうとした。
突然の事にヴィンセントも驚き、止めようとするが、それより一瞬早くマリアが反応して、アレッシオの短剣を大刀サラマンダーで弾き飛ばした。
「早まるな、アレッシオ。そもそも、この一連の原因は父上がナサレノに身分不相応な役職を与えた事から始まっているのだ。父上の残した負の遺産は娘である私が処理せねばなるまい」
地位と権力を手に入れた人間の暴走は歴史上にいくつもある。むしろ、そうならなかった方が奇跡的であるのかも知れない。
ナサレノも例外ではなかった。というよりナサレノの場合、アルベルト一世が亡くなると待ってましたとばかりにこの一連の反乱を起こしたのだから、フロリアーナとしては怒りこそあれ、情けをかけてやるつもりは毛頭なかった。
「アレッシオ、お主もヴィンセントと一緒に私に力を貸してくれ」
フロリアーナの言葉にアレッシオは平伏して答えた。
「このような役立たずでも使って頂けるのであれば、いくらでもお使い下さい」
アレッシオもフロリアーナへの忠誠を誓った。
「フロリアーナ様、私とヴィンセントはナサレノに自決用の短剣を渡しましたが、奴に一瞬の隙を突かれて隠し通路から逃走されてしまいました。この宮殿の外には逃げられぬよう出口はすべて塞いでおきましたが、いまだ行方が掴めません。不覚を取り申し訳ございません」
「父上が設置した隠し通路を使ったのであれば、出口は離宮に繋がっているはず。。」
フロリアーナはかつて父からいざという時のための隠し扉の場所と通路を通った出口を教えられていたので、ナサレノの行き先は検討がついていた。
「奴は母上が昔使っていた離宮に向かっている。ここまで来て決着も付けずに逃すものか」
フロリアーナはそう言うとマリアに目で合図をして、ナサレノと決着をつけるために離宮へと向かった。
「ヴィンセント、アレッシオ。ここの鎮圧は頼んだぞ。私はナサレノと決着をつけてくる」
「御意」
フロリアーナが帰国し、大半の民衆や兵士たちは歓迎していたが、宮殿警備隊はナサレノ直下の兵士で、ナサレノの命令に従順し、フロリアーナとタスタニア軍を倒すべく宮殿に配置され、既に数カ所で宮殿警備隊とタスタニア軍の戦いが始まっていた。
「アレッシオ。よからぬ事を考えるなと言ったはず。この国の再建にお主の力は必要なのだ。これまでの無礼はこれからの仕事で取り返せばいい」
「ああ。私が浅はかであった。死んでどうにもなるものではない。むしろ生き恥を晒してでもこれからの国作りに生涯を捧げる事にしよう」
アレッシオがそう答えるとヴィンセントも安心し、カルドザルス騎士団を率いて戦いに参戦した。
「俺たちカルドザルス騎士団はタスタニア軍と協力して宮殿警備隊を鎮圧してくる。お主はここでフロリアーナ様のご無事を祈り待っていろ」
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