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南プロシアン王国編
高みの見物
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「タスタニアがついに造船を完成させて艦隊を出撃させました」
アレッシオの報告にナサレノは含み笑いを浮かべた。
「ほう。ようやくお出ましか。陸の戦いでは分が悪いが海戦なら我々が圧倒的に有利だ。これでフロリアーナも海の藻屑と消える」
ナサレノの言葉にアレッシオは何の反応も示さずに報告を続けた。
「タスタニアの海軍は新設されたばかりで、船の漕ぎ手もまだ未熟なため、陸地に沿うように進んでくるに違いありません。我々は相手の進行ルートを容易に特定出来ます」
「そうか。不慣れな海をわざわざ渡ってこちらにお越しいただく事もあるまい。ザラメスの湾岸で葬って差し上げろ」
ナサレノはそう言った後で「待て」とアレッシオに声をかけた。
「他に何か御用でも?」
「俺も一緒に出撃するぞ」
ナサレノの言葉にアレッシオは僅かに眉をしかめた。
「タスタニア艦隊を撃破し、フロリアーナが海の藻屑となるところをこの目で見ずして安心してこの国を支配出来ぬわ」
「では主力艦アスガルドにご乗船下さい」
アレッシオはナサレノに気がつかれないようため息をついた。
アレッシオの手配は迅速で、わずか半日で南プロシアン艦隊二百隻がタスタニア艦隊を迎え撃つため出撃した。
ナサレノは主力艦アスガルドの艦首に座席とワインを用意させて高みの見物を決め込んでいた。
「アレッシオ。ここで我が海軍が勝利するのをワインを飲みながら鑑賞するとしようぞ」
アレッシオはそれに返答はせず、頭を下げるだけであった。
アレッシオの読み通り、タスタニア海軍は新設間もなく、漕ぎ手の熟練度も南プロシアンとは比較にならない点から、海岸線に沿って進行して来た。
その数三段櫂船でおよそ百隻、中型船五十隻であった。
対する南プロシアン海軍は大型三段櫂船二百隻に中型船も百隻であった。
数だけでもタスタニアの二倍である。
ナサレノは戦う前から勝利を確信しているが、アレッシオは決して楽観していなかった。
前回の戦いでは、湾岸線を完璧に防御されて港街ポルダを制圧する事が出来なかった。
今回も何が秘策があるのではないかと考えていたのだ。
(おそらく相手は自分たちの進行ルートをこちらが読んでいる事も承知の上で湾岸線に沿って進行して来ているのだろう。何が罠があるかも知れぬな。しかしそこまでナサレノに教えてやる事もあるまい)
これが先王アルベルト一世であったらどうであったろう。
おそらくこちらの読み通りに進行してくるタスタニア軍を見て何かおかしいと気づき、兵士たちに注意を促すであろう。
何より兵士たちを戦わせておいて、自分はこんな場所に陣取って酒盛りをするなど決してやらなかった。
この男を先王と比較するなど金と金メッキを比べるような物。
そう思っていても自分一人の力ではどうする事も出来ず、アレッシオは歯痒い気持ちで戦況を見つめていた。
タスタニア艦隊が出撃から二日後の七月十二日の朝、ザラメスと南プロシアンの国境付近のサウジレジア海洋という地域で両艦隊は対峙する事となった。
「さすがに壮観だな」
目の前に広がる広大な海を埋め尽くすかのような南プロシアン艦隊の二百隻を超える敵船を見てティファはため息をついた。
南プロシアン海軍が三段櫂船二百隻に対してタスタニアは三段櫂船百隻に中型船五十隻であった。
南プロシアン艦隊がほぼ横陣形であったのに対して、タスタニア艦隊は先頭のティファの第一艦隊が中央、二列の横陣で第二艦隊左翼のレイラが前列、第三艦隊右翼のレジーナがやや後列となっていた。
タスタニア艦隊の右翼側はザラメスの浅瀬の湾岸であり、南プロシアン艦隊の大型三段櫂船はこの浅瀬で速度を出せないのと旋回が厳しくなる。
これにより右側面の弱点を消した事になる。
午前十一時に後世の歴史に「サウジレジア海戦」と名付けられた戦いが始まった。
アレッシオの報告にナサレノは含み笑いを浮かべた。
「ほう。ようやくお出ましか。陸の戦いでは分が悪いが海戦なら我々が圧倒的に有利だ。これでフロリアーナも海の藻屑と消える」
ナサレノの言葉にアレッシオは何の反応も示さずに報告を続けた。
「タスタニアの海軍は新設されたばかりで、船の漕ぎ手もまだ未熟なため、陸地に沿うように進んでくるに違いありません。我々は相手の進行ルートを容易に特定出来ます」
「そうか。不慣れな海をわざわざ渡ってこちらにお越しいただく事もあるまい。ザラメスの湾岸で葬って差し上げろ」
ナサレノはそう言った後で「待て」とアレッシオに声をかけた。
「他に何か御用でも?」
「俺も一緒に出撃するぞ」
ナサレノの言葉にアレッシオは僅かに眉をしかめた。
「タスタニア艦隊を撃破し、フロリアーナが海の藻屑となるところをこの目で見ずして安心してこの国を支配出来ぬわ」
「では主力艦アスガルドにご乗船下さい」
アレッシオはナサレノに気がつかれないようため息をついた。
アレッシオの手配は迅速で、わずか半日で南プロシアン艦隊二百隻がタスタニア艦隊を迎え撃つため出撃した。
ナサレノは主力艦アスガルドの艦首に座席とワインを用意させて高みの見物を決め込んでいた。
「アレッシオ。ここで我が海軍が勝利するのをワインを飲みながら鑑賞するとしようぞ」
アレッシオはそれに返答はせず、頭を下げるだけであった。
アレッシオの読み通り、タスタニア海軍は新設間もなく、漕ぎ手の熟練度も南プロシアンとは比較にならない点から、海岸線に沿って進行して来た。
その数三段櫂船でおよそ百隻、中型船五十隻であった。
対する南プロシアン海軍は大型三段櫂船二百隻に中型船も百隻であった。
数だけでもタスタニアの二倍である。
ナサレノは戦う前から勝利を確信しているが、アレッシオは決して楽観していなかった。
前回の戦いでは、湾岸線を完璧に防御されて港街ポルダを制圧する事が出来なかった。
今回も何が秘策があるのではないかと考えていたのだ。
(おそらく相手は自分たちの進行ルートをこちらが読んでいる事も承知の上で湾岸線に沿って進行して来ているのだろう。何が罠があるかも知れぬな。しかしそこまでナサレノに教えてやる事もあるまい)
これが先王アルベルト一世であったらどうであったろう。
おそらくこちらの読み通りに進行してくるタスタニア軍を見て何かおかしいと気づき、兵士たちに注意を促すであろう。
何より兵士たちを戦わせておいて、自分はこんな場所に陣取って酒盛りをするなど決してやらなかった。
この男を先王と比較するなど金と金メッキを比べるような物。
そう思っていても自分一人の力ではどうする事も出来ず、アレッシオは歯痒い気持ちで戦況を見つめていた。
タスタニア艦隊が出撃から二日後の七月十二日の朝、ザラメスと南プロシアンの国境付近のサウジレジア海洋という地域で両艦隊は対峙する事となった。
「さすがに壮観だな」
目の前に広がる広大な海を埋め尽くすかのような南プロシアン艦隊の二百隻を超える敵船を見てティファはため息をついた。
南プロシアン海軍が三段櫂船二百隻に対してタスタニアは三段櫂船百隻に中型船五十隻であった。
南プロシアン艦隊がほぼ横陣形であったのに対して、タスタニア艦隊は先頭のティファの第一艦隊が中央、二列の横陣で第二艦隊左翼のレイラが前列、第三艦隊右翼のレジーナがやや後列となっていた。
タスタニア艦隊の右翼側はザラメスの浅瀬の湾岸であり、南プロシアン艦隊の大型三段櫂船はこの浅瀬で速度を出せないのと旋回が厳しくなる。
これにより右側面の弱点を消した事になる。
午前十一時に後世の歴史に「サウジレジア海戦」と名付けられた戦いが始まった。
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