ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

文字の大きさ
上 下
95 / 118
南プロシアン王国編

南プロシアンvsタスタニア 中編

しおりを挟む
ポルタ湾からほど近い丘陵地帯に両軍の兵士が対峙する事となった。
タスタニア軍から見て左側が丘陵地帯、右側には川が流れており、狭く騎兵部隊の機動力をフルに活かせない地形であり、ティファは兵力差をカバーするためにここを戦いの場所に選んだのだった。

タスタニア軍二千五百人に対して南プロシアン軍は五千人弱。

(いくら陸戦ではタスタニアが有利と言っても、二倍の戦力差で戦えるのか。。)

フロリアーナは内心不安を感じてはいたが、ティファの表情はいたって冷静であった。

「あれは、フロリアーナ王女。。」

タスタニア軍と対面したエンリコの視線の先にフロリアーナが映った。

「まずい。兵士たちがフロリアーナ王女の顔を見たら士気が落ちる可能性がある」

一方のフロリアーナからもエンリコの姿が見えていた。

「あれはエンリコ。父上の側で戦っていた側近の一人であったが、彼までナサレノの指揮下に加わったのか」

フロリアーナは今の自分にはマルコ伯爵以外に味方がいない孤立した状況だと言う事をあらためて思い知らされた。

「エンリコは責められまい。それだけ今の私には力が無いという事だ」

それを見ていたティファが横で声を掛けた。

「フロリアーナ様。あなたは一人ではありません。私たちが付いております。人は孤立している中でも応援してくれる人がいれば耐えられるものです。

今は一時的にナサレノに付いている者たちも、本心からではなく状況下で仕方のない事なのでしょう。あなたが国に戻るのを待っている人たちがいると信じて戦いましょう」

「。。そうだな」

ティファにそう言われて、フロリアーナも今は余計な事は考えずに国に戻る事に集中しようと気持ちを切り替えた。

「おい、見ろ!あれはフロリアーナ王女ではないか?」

「我々はフロリアーナ様と戦うのか?」

エンリコの予想通り、フロリアーナ王女の顔を見て動揺する兵士たちが次々と現れ、それは全兵士に伝染するように伝わっていった。
これを見たエンリコは兵士たちの士気が落ちる前に早めに決着を付けようと一斉に突撃を開始させた。

通常であれば両軍が激しく衝突。。となるところだが、そうはならなかった。
ティファが中央部隊を戦いながら緩やかに後ろに後退させていったからである。
それとは対照的にレイラの左翼は凄まじい勢いで敵右翼に攻撃を仕掛けていく。

全体の兵力では、南プロシアン軍が倍以上であったが、このレイラの左翼だけは相手右翼の倍の厚さであった。
ティファはこの左翼だけに千人を配置して早期突破を狙っていた。
レイラはこれが初の実戦であったが、その武力はこの戦場にいた兵士の中で抜きん出でいた。

目にも止まらない速くて鋭い斬撃が相手兵士を次々と打ち倒していき、鮮血の霧が戦場を覆い、相手はその下に倒れる事となった。
その鬼神の如き強さに南プロシアンの兵士たちは恐怖に駆られて一人、また一人と逃げ出していった。
戦闘開始から十数分しか経過していなかったが、南プロシアン軍の右翼は瓦解されてしまった。

レイラは勝敗が決したのを確認すると、すぐさま南プロシアン軍の後方へと回り込んで行った。
しかし、この時エンリコを始めとする南プロシアン軍は目の前の中央突破に集中していたため、自軍右翼が瓦解した事に気がついていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

健太と美咲

廣瀬純一
ファンタジー
小学生の健太と美咲の体が入れ替わる話

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

処理中です...