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南プロシアン王国編
戦艦建造へ
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タスタニア首都オルジュの宮殿王の間にシュミットをはじめ、宰相カール、パトリシア、シャローラ、ティファたちが集まっていた。
もちろんフロリアーナもマリア、レイラと共にこの場にいる。
「フロリアーナ王女。宰相ナサレノという人物から私宛に書簡が届きましてな。わかりやすく言えば、大人しく王女を渡せば何もなかった事にするが、渡さなかった場合には海軍を出撃させ、軍事的行動に出ると言ってきている」
フロリアーナは内心舌打ちをした。
もちろんナサレノにである。
「シュミット国王、ご迷惑おかけして申し訳ございません。ナサレノは今回の一連の首謀者でございます」
「私は構わぬが、海軍を動かして軍事的行動に出ると言ってきたからには、こちらも対応せねばならぬな」
シュミットはそう言ってパトリシアの方をチラリと見た。
「南プロシアンの反乱軍との戦いは海上戦になるでしょう。逆を言えば海上戦で徹底的に叩かない限りフロリアーナ様を狙い続けると予想されます。私たちはまず軍艦の建造が急務です」
パトリシアがそう説明すると、ティファがフロリアーナに質問した。
「フロリアーナ様、南プロシアン海軍の主力船は大型の三段櫂船ですか?」
「ああ。主力は大型三段櫂船だな。百隻はあるだろう。それに中型、小型船も合わせれば二百隻はゆうに超えると思う」
「さすがに海洋国家だけあって凄い数ですね」
「タスタニアはどのくらい軍船を保有しているのだ?」
フロリアーナの質問に今度はパトリシアが回答する。
「タスタニアは海軍が事実上ありません。一応海上偵察隊として中型船が五十隻に中型船二十隻です」
予想はしていたが、正直想像以下の海上戦力しか保有していない事にフロリアーナは厳しい表情を浮かべた。
「やはり海上戦は厳しそうだな」
「パトリシア、中型船を今から大量に建造するとどれくらい期間がかかる?」
今度はティファが質問した。
「仮に二百隻作ると仮定した場合、国中から材木と大工や職人を集めて作っても六ヶ月は必要だね」
「半年か。。そんな時間を反乱軍もロマリア帝国も与えてくれないだろう。せめて三ヶ月で建造するとなると半分の百隻ほどかな」
「それなら可能だと思うけど、中型船じゃせいぜい二十五人しか乗れないわよ」
「それでも百隻作れれば二千五百人の兵力になるよね」
「ティファ、何か考えがあるのね」
「大型の三段櫂船は人員は多く乗れるけど、小回りが効かないのが欠点。相手を旋回出来ないような狭い湾内まで誘き寄せれば、中型船中心でも勝負になる。
私はレイラとマリアの三人で三ヶ月の間に兵士たちを訓練して海上での戦いに出来る限り慣らしておくから、パトリシアは中型船を百隻建造してくれないかな」
「わかった。何とかするわ」
ティファは大型戦艦を作るより中型戦艦を建造して速度を最優先させた。
当時大砲がまだ無かった時代なので、船は兵士を運び、敵に体当たりして相手の船に乗り込み兵士同士の戦いで決着をつけるものであった。
そのために動きの軽い中型船をティファはパトリシアに依頼したのである。
幸いタスタニアの国土は森林地帯が大きく占めており、木材は大量に採取出来た。
パトリシアは早速タスタニア全域に緊急司令を発令し、大工や職人を集結させるよう手配した。
その人数は一万人を超えるため、オルジュの宮殿内に彼らの宿泊施設を準備し、船は組み立て式で出来上がり次第ポルダの湾岸に運ぶという形を取る事にした。
「この宮殿内はそれなりの広さはあるからね」
シャローラがそう言うとシュミット国王は苦笑いを浮かべた。
「お前たち。私が好きにやるが良いと言ったら、本当に自由にやりおって」
「私たちは国王の寛大なお心遣いに感謝しております」
パトリシアがそう言いながらお辞儀をすると、王妃フランカが王の間に入室して来た。
「いいじゃありませんか。これからこの国を担う若い子たちが生き生きと行動しているんですもの」
「フランカ様」
シャローラがフランカの名を呼ぶとティファ、レイラ、マリアの三人は一斉に膝をついて臣下の礼を取った。
「フロリアーナ王女、私は王妃のフランカと申します。どうぞよろしく申し上げます」
「フランカ様、お会いできて光栄でございます。この度はお恥ずかしながら私事で国を追われた私をお受け入れ頂き感謝致します」
「私たちはあなたが南プロシアンに戻って女王となられるまでお力添えするつもりです。何かあれば遠慮なくおっしゃって下さいね」
母を早くに亡くしたフロリアーナにとってフランカは母親のような存在であった。
これ以降、フランカとフロリアーナは実の母娘のような仲の良い関係となっていった。
その時である、マルコ伯爵が見つかったという連絡が入った。
もちろんフロリアーナもマリア、レイラと共にこの場にいる。
「フロリアーナ王女。宰相ナサレノという人物から私宛に書簡が届きましてな。わかりやすく言えば、大人しく王女を渡せば何もなかった事にするが、渡さなかった場合には海軍を出撃させ、軍事的行動に出ると言ってきている」
フロリアーナは内心舌打ちをした。
もちろんナサレノにである。
「シュミット国王、ご迷惑おかけして申し訳ございません。ナサレノは今回の一連の首謀者でございます」
「私は構わぬが、海軍を動かして軍事的行動に出ると言ってきたからには、こちらも対応せねばならぬな」
シュミットはそう言ってパトリシアの方をチラリと見た。
「南プロシアンの反乱軍との戦いは海上戦になるでしょう。逆を言えば海上戦で徹底的に叩かない限りフロリアーナ様を狙い続けると予想されます。私たちはまず軍艦の建造が急務です」
パトリシアがそう説明すると、ティファがフロリアーナに質問した。
「フロリアーナ様、南プロシアン海軍の主力船は大型の三段櫂船ですか?」
「ああ。主力は大型三段櫂船だな。百隻はあるだろう。それに中型、小型船も合わせれば二百隻はゆうに超えると思う」
「さすがに海洋国家だけあって凄い数ですね」
「タスタニアはどのくらい軍船を保有しているのだ?」
フロリアーナの質問に今度はパトリシアが回答する。
「タスタニアは海軍が事実上ありません。一応海上偵察隊として中型船が五十隻に中型船二十隻です」
予想はしていたが、正直想像以下の海上戦力しか保有していない事にフロリアーナは厳しい表情を浮かべた。
「やはり海上戦は厳しそうだな」
「パトリシア、中型船を今から大量に建造するとどれくらい期間がかかる?」
今度はティファが質問した。
「仮に二百隻作ると仮定した場合、国中から材木と大工や職人を集めて作っても六ヶ月は必要だね」
「半年か。。そんな時間を反乱軍もロマリア帝国も与えてくれないだろう。せめて三ヶ月で建造するとなると半分の百隻ほどかな」
「それなら可能だと思うけど、中型船じゃせいぜい二十五人しか乗れないわよ」
「それでも百隻作れれば二千五百人の兵力になるよね」
「ティファ、何か考えがあるのね」
「大型の三段櫂船は人員は多く乗れるけど、小回りが効かないのが欠点。相手を旋回出来ないような狭い湾内まで誘き寄せれば、中型船中心でも勝負になる。
私はレイラとマリアの三人で三ヶ月の間に兵士たちを訓練して海上での戦いに出来る限り慣らしておくから、パトリシアは中型船を百隻建造してくれないかな」
「わかった。何とかするわ」
ティファは大型戦艦を作るより中型戦艦を建造して速度を最優先させた。
当時大砲がまだ無かった時代なので、船は兵士を運び、敵に体当たりして相手の船に乗り込み兵士同士の戦いで決着をつけるものであった。
そのために動きの軽い中型船をティファはパトリシアに依頼したのである。
幸いタスタニアの国土は森林地帯が大きく占めており、木材は大量に採取出来た。
パトリシアは早速タスタニア全域に緊急司令を発令し、大工や職人を集結させるよう手配した。
その人数は一万人を超えるため、オルジュの宮殿内に彼らの宿泊施設を準備し、船は組み立て式で出来上がり次第ポルダの湾岸に運ぶという形を取る事にした。
「この宮殿内はそれなりの広さはあるからね」
シャローラがそう言うとシュミット国王は苦笑いを浮かべた。
「お前たち。私が好きにやるが良いと言ったら、本当に自由にやりおって」
「私たちは国王の寛大なお心遣いに感謝しております」
パトリシアがそう言いながらお辞儀をすると、王妃フランカが王の間に入室して来た。
「いいじゃありませんか。これからこの国を担う若い子たちが生き生きと行動しているんですもの」
「フランカ様」
シャローラがフランカの名を呼ぶとティファ、レイラ、マリアの三人は一斉に膝をついて臣下の礼を取った。
「フロリアーナ王女、私は王妃のフランカと申します。どうぞよろしく申し上げます」
「フランカ様、お会いできて光栄でございます。この度はお恥ずかしながら私事で国を追われた私をお受け入れ頂き感謝致します」
「私たちはあなたが南プロシアンに戻って女王となられるまでお力添えするつもりです。何かあれば遠慮なくおっしゃって下さいね」
母を早くに亡くしたフロリアーナにとってフランカは母親のような存在であった。
これ以降、フランカとフロリアーナは実の母娘のような仲の良い関係となっていった。
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