ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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南プロシアン王国編

新たな刺客 前編

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「ねえ、なんだか王女様の表情が浮かないというか不機嫌だった気がするんだけど。私、何かまずい事でも言ったかな?」

ティファはフロリアーナが微妙な表情だったのが見て気になってパトリシアに確認してみた。

「いや、何も失礼な事は言ってなかったよ。多分ティファが見た目普通の女性だったからそれに驚いたのかもね」

「え?普通の女性じゃいけないの?」

「ティファの事を私たちのリーダー的存在って紹介したから、さぞかしマリアとレイラを足し合わせたくらいのいかつい顔した騎士でも来ると思ってたんじゃないかな」

「ちょっと待ってくれ。私とレイラを足したらいかつい顔ってどういう事だ?」

パトリシアの例えにマリアは否定し、レイラは苦笑いした。

「いやいや、悪い意味じゃないよ。それだけ全身から殺気の様なものが伝わってくる人を想像してたんだろうなって事」

パトリシアも苦笑いしながらマリアとレイラに弁解するように言い直した。

「失礼な事で機嫌を損ねたんじゃないならいいけど。私は騎士でもないし武力もないから、そっちで期待されても添えませんとしか言えないよね」

「まあ、実際に南プロシアンの反乱軍と戦えばティファの凄さがわかると思うけどね。あの王女様、人を見る目は確かだから」

シャローラにそう言われてティファもようやく安心したようであった。
その夜、ティファとシャローラは久しぶりの再会を懐かしむ暇もなく、今後の展開について話し合った。

「シャローラ、あなたの計画を聞かせてくれるかな」

「もちろん。私の計画をティファがどう思うか聞いてみたかったんだ」

シャローラはザラメスに間者を放ってルンベルク要塞を守る皇太子バスティアンが謀反を企んでいるという噂をばら撒いて動揺を起こさせ、ロマリア帝国が動けないようにする第一作戦をティファに話した。

ただし、レオニードの粛清に関しては、この段階でティファには話さないでおこうと考えていた。
裏の仕事にティファを関わらせたくないのが一番であったからだ。
シャローラは既に軍の中の汚れ役を自ら受ける覚悟でいた。

一方マリアはフロリアーナの護衛をしていた。
護衛と言っても話し相手や身の回りの世話も行っていて、すっかりフロリアーナ付きの騎士のようであった。

「フロリアーナ様、そろそろおやすみになられては?」

「お主たちに働かせておいて私一人だけ先に寝るというわけにもいかぬだろう。私は私なりに今後の対応を考えねばならないのでな。マリア、気を使わせてすまぬな」

そこまでフロリアーナが言い終えたか終えない時にマリアは殺気を感じた。

「レイラ!」

マリアが叫ぶと廊下で見張りをしていたレイラがドアを開けた。

「マリア、お前も感じたか?」

「ああ。フロリアーナ様、早速新手の刺客が来たようです」

「ナサレノの奴、こういう手配だけは素早いな。私が生きている限り、奴は枕を高くして眠れないだろうからな」

「ここは私たちがお守り致します。フロリアーナ様は私たちから離れぬように」

マリアとレイラは刺客がタスタニアの国内、それも首都オルジュまで堂々と侵入してくる事に驚いていた。
しかしよく考えれば、南プロシアン王国はタスタニアの南に位置する国で、海から船で進行し、タスタニア最南端の港街、ポルダに着岸して侵入してきたなら首都オルジュはすぐ隣町である。

そこまでくれば、昼間のうちに旅人に混じって城内へ侵入する事は容易いであろう。
ロマリア帝国との戦いで、ブラウゼンやベンタインの防御を強くしていた反面、海側の防備が甘く、裏を突かれた形になってしまったのだ。
マリアとレイラが剣を抜き戦闘態勢にはいると、外から窓が打ち破られて刺客が二人部屋内に侵入してきた。

「二階の窓から侵入してくるとは無礼な奴だな」

「フロリアーナをこちらに渡してもらおうか」

「それに私たちが、かしこまりましたと言って素直に応じるとでも思っているのか?」

マリアがそう言い終えたと同時に二人の騎士は斬りかかってきたが、マリアとレイラに一撃で仕留められた。

「マリア、油断するな。まだ伝わってくる殺気が全く減っていない」

マリアとレイラはすでに達人の領域に近づきつつあった。
伝わってくる殺気の度合いでどれだけの人数の相手がいるのかもわかるし、暗闇で襲われても的確に相手を斬る事が出来るまでになっていた。
しかしこの時の殺気はどれだけの人数がいるのかわからないほど凄まじいものであった。

「マリア、レイラ。気をつけろ。我が国最強の騎士の集まり、カルドザルス騎士団だ」

フロリアーナが叫ぶと同時に第二陣の刺客が部屋に入ってきた。
今度は一人である。

「ほう、新興国のタスタニアにこれほどの騎士がいるとはな」

入ってきた男はまだ若いが鋭い目つきに凄まじいまでの殺気を放っていた。
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