ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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南プロシアン王国編

ティファ帰還

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翌日、ティファとレイラが首都オルジュに帰還した。
二人にとっては半年以上ぶりのオルジュである。

「久しぶりの帰省だ。家も長い間留守にしちゃってるけど大丈夫かな?」

ティファとレイラの実家はパトリシアが宮殿の使用人を派遣して日々掃除を行い、留守を守ってくれているので心配はなかったが、やはり長く空けている自分の家は気になるものである。

「家にも帰りたいところだけど、まずは宮殿に赴かないとね」

「私、宮殿に行くのは初めてだな。なんだか緊張して来た」

ティファもレイラも宮殿に行くのはこれが初めてであった。
オルジュの最深部、方角で言えば東側に位置する宮殿の近くまで行くとパトリシアが迎えに来ていてくれた。

「パトリシア!」

「ティファ、レイラ。お帰りなさい」

パトリシアとの再会もティファとレイラが軍配属が決まってこのオルジュを出発した時以来であった。

「二人とも元気そうでなによりだよ。久しぶりに帰ってきて疲れているところに申し訳ないけど、まずはシュミット国王にご挨拶して、それからフロリアーナ王女に会いに行きましょう」

「国王様に王女様かあ。緊張するな」

「シュミット国王もフローリカ王妃も気さくなお方だから、心配しないで。むしろフロリアーナ王女の方がやりづらいかもね」

「フロリアーナ王女はかなりきつい性格なの?」

「王女様に対して失礼を承知で言うと、よく言えばしっかり者。悪く言えば生意気ってところね。まあ会ってみればわかるよ」

ティファとレイラはパトリシアに連れられて初めて宮殿に入り、王の間へと案内された。

「宮殿って言うから豪華な宝石や装飾品が天井や壁に飾られているのかと思っていたけど、意外と質素なのね」

ティファは王の間に向かう途中の回廊の天井や壁に絵画も豪華な壺や装飾品もない事を意外に思った。

「シュミット国王は自身の尊厳を見せつけるような物は不必要だって考えだからね。宮殿は王家の住居として、臣下たちの職場として機能していればいいと言われて質素な作りにしてあるの。その分を各都市の補強や必要経費に回せるから。ただ来賓客用の迎賓館はそれなりには立派に作られているけどね」

「なるほどね。私は他国の王室に関してはわからないけど、シュミット国王のそのお考えは共感出来るな」

こうして王の間に入ったティファとレイラは生まれて初めて国王に謁見した。

「国王、この二人が私たちの仲間であり、リーダー的存在であるティファニー・オブ・エヴァンスとその妹のレイラ・オブ・エヴァンスです」

パトリシアに紹介されるとティファとレイラはシュミット国王の前でひざまづき、臣下の礼をとった。

「ティファニー・オブ・エヴァンスでございます。国王に初めてお会い出来、光栄でございます」

「レイラ・オブ・エヴァンスでございます。姉と同様に私も国王にお会い出来て光栄でございます」

「ティファニーにレイラ。お主たちの話しはパトリシアとシャローラからよく聞いている。この国の希望の星だとな」

「私如きに身に余るお言葉、恐縮でございます」

「この度はかなり厳しい条件となるが、南プロシアン王国と同盟を結べるのは我が国にとっても大きな意味がある。大役を務めてもらう事になるが、よろしく頼んだぞ」

「御意」

たったこれだけの短い対面ではあったが、ティファとレイラにはかなり長時間対面していたと感じたほど緊張の時間であった。

⭐︎⭐︎⭐︎

「めちゃくちゃ緊張した。まだ嫌な汗かいてるよ」

ティファは緊張から解放されてほっとひと息であった。

「でも二人とも堂々としていたよ。国王もいい印象を持ったんじゃないかな」

「それならいいんだけどね」

「緊張から解放されたところで、また緊張の連続で大変だろうけど、今度はフロリアーナ王女の居る迎賓館に案内するよ」

「国王様の次は王女様か。人生にそうない経験をしていると思えばいいのかな」

「ティファはいずれこの国を代表する人になると思っているよ。こんな事が毎日続くような日がいつか来るかも知れない。今日がそのスタートだと思えばいいんじゃない」

「パトリシアが私を評価してくれるのは嬉しいけど、そこまでは大袈裟だよ」

「私は本気でそう思ってるから」

パトリシアの言葉にティファは苦笑いするしかなかった。
パトリシアもティファがあまり褒められるのが好きじゃない事を思い出したのか、その後は他愛のない雑談をしながらフロリアーナのいる部屋へと向かった。
ティファはけなされるのは当然好きではないが、過剰に褒められるのも苦手であった。

あまり褒められるとどう対応していいのかわからないし、照れ臭いのが一番の理由であった。
国を代表すると言われても、ティファは軍に長くいるつもりはなかったし、国の中枢にいくつもりなど毛頭なかった。
この戦いが終わったら、一市民として生きていきたいと考えていたからである。
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