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南プロシアン王国編
シャローラの提案
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「レイラ、久しぶりだな」
「ロビー。それにソフィア。久しぶりに会ったのにまたすぐ別れとは寂しいけど、ティファは無事にちゃんと返すから」
「レイラがいてくれたら安心だよ」
ロビーとソフィアは前回の出撃以来、三ヶ月と少しぶりにレイラと再会した。
レイラもブラウゼンから首都オルジュへ帰還するのだが、その途中でティファと合流するためにベンタインに立ち寄ったのだ。
「あの嫌な野郎はまだ生きてるのか?」
ロビーが言う嫌な野郎とは当然レオニードの事である。
「残念ながらね。兵の鍛錬もろくにせず、毎日のように小隊長クラスを呼び出しては、ルンベルク要塞攻略についての打ち合わせだ」
「具体的な攻略法は出たの?」
「いや、奴がミスなくソツなく攻撃すればいいって言いだして、どうやってミスなくソツなく攻撃するんですか?って聞いたら、それを考えるのがお前たち兵士の役目だ!だとさ。そんな打ち合わせ時間の無駄だから、私とマリアはサボって小隊長以外の兵士たちの鍛錬をやっているけど」
「相変わらずだな。悪い意味で期待を裏切らない奴」
ロビーがそう言ったところでティファがようやく現れた。
「レイラ、お待たせ。県令に挨拶していたら遅くなっちゃってごめんよ」
「いいよ。久しぶりにロビーとソフィアに会えたし愚痴も聞いてもらえたし」
「レイラもあの少将の下で大変だよね」
「私とマリアにはほとんど口出ししないから、勝手にやってるけど、いざ戦闘となったら信用出来ないし、しちゃいけない人物だからね」
レオニードはレイラとマリアの武力がわかった途端、二人に口出ししなくなった。
レイラたちは自分の思うように動けるようになり、二人で相談しながら兵士たちの鍛錬を行えてたので、それほど苦労はなかった。
とは言え、可能な限り顔を合わせたくない相手である事に変わりはないが。
「何にせよ、しばらくあの問題児と離れられて良かったじゃない」
「子供ならまだ可愛げもあるけど、見た目は大人、頭脳は子供だからね」
どこかで聞いた言葉と真逆である。
「ロビー、ソフィア。じゃあ行ってくるよ」
「ティファ、元気でな」
「なるべく早く帰って来てくれよ」
「早く終わると良いけどな。とにかく出来る限りやってくる」
ティファはそう言ってロビーとソフィアにしばしの別れを告げると馬に乗り、レイラと共に首都オルジュへと向かった。
その頃オルジュの宮殿ではシャローラがシュミット国王にある提案を持ち出していた。
ロマリア帝国を撹乱させるための作戦である。
「フロリアーナ様を助けて南プロシアン王国の内紛に介入するとなると、ロマリア帝国の動きを止めなくてはなりません。しかしブラウゼンを守るレオニード少将は愚将で悪評の高い人物。
ブラウゼンの城壁の防御力がある程度計算出来ると言っても、中を守る人間が信頼出来ないのでは心許ないというものです。
そこで、皇帝ルーファスが猜疑心が強く身内と言えども信用していない点を突くのです」
「具体的に申してみよ」
「はい。ルンベルク要塞を守るルーファスの次男バスティアンに謀反の疑惑があると言う噂をばら撒くのです。猜疑心の強いルーファスはこれを放置しないでしょう。
おそらく真意の確認をするか、一気に討伐する可能性もございます。いずれにせよ、バスティアンの動きをしばらくの間封じ込める事が出来るでしょう。私たちはその間に体制を整えて遅延戦闘の準備を行うのです」
「なるほど」
「バスティアンが疑惑を払拭するなり、新たな将がルンベルクに派兵されてブラウゼンに進撃した時にはレオニード少将に出撃してもらいましょう」
「レオニードを出撃させるのか?彼奴は前回無謀な進行作戦で大失敗したばかりであろう」
「今回に関しましては時間稼ぎのために必要なのです。勝敗は関係ありません、少しの時間でも帝国軍を足止めするための盾になってもらいます」
「レオニードを捨て石すると申すか」
シュミットは少し驚いた様子ではあったが、レオニード粛清の件については宰相カールからも提案が出ていた。
「前回の無謀な出撃でもおわかりのように、レオニード少将が居てはティファの才能がまったく活かされません。この先もあの人物が将としていればルンベルク要塞侵攻どころか兵士の犠牲をいたずらに増やすだけでございます。
であれば犠牲は最小限に済ませた方がいいでしょう。そして南プロシアン反乱軍を鎮圧後、ティファが新たな将となり、ロマリア帝国進撃を本格的に開始致します」
「うーむ」
シュミットはしばらく考えていたがシャローラの言う通り、このままレオニードをブラウゼンに置いていても戦いのたびに犠牲を出すだけなのは明白であった。
降格や強制送還に応じる人物でもなく、下手に反乱を起こされるのであれば、この帝国軍との戦いに乗じてレオニードを捨て石にし、軍の陣容を変えるいい機会であった。
「シャローラ、この件はお前の思う通りにやってみろ。必要な費用はここから出すがいい。明細などは要らぬ。お前が必要なだけ使ってよいぞ」
シュミットはそう言うと、部下に大量の金貨が入った「宝箱」を持って来させた。
おそらく一箱に金貨千枚は入っているであろう箱が三箱運び出された。
金貨三千枚と言えば、この時のレートが金貨一枚十ギウスであったので、三万ギウス
一般人の平均月給が五ギウスという時代に三万ギウスはいかに途方もない金額がおわかりであろう。
シャローラはこれを明細不要で必要なだけ使っていいという破格の裁可を受けたのだ。
もちろん、そう言われてもシャローラはきっちり使用した用途全てに明細を作成して後日提出したが。
「多大なご裁可を頂きありがとうございます。私の持てる力の限りを尽くします」
シャローラは初めて自身が立案して実行する任務を遂行するために、すぐさま行動に移った。
普段は可愛らしい表情の女性であるが、決断して動くとなれば迷いなく、そして時に今回のような非情な采配も下す。
それがシャローラという人物であった。
シャローラは早速シュミットから受け取った金貨を使い、ザラメス自由都市に間者を向かわせてバスティアンが謀反を企んでいるという噂をばら撒かせた。
「ロビー。それにソフィア。久しぶりに会ったのにまたすぐ別れとは寂しいけど、ティファは無事にちゃんと返すから」
「レイラがいてくれたら安心だよ」
ロビーとソフィアは前回の出撃以来、三ヶ月と少しぶりにレイラと再会した。
レイラもブラウゼンから首都オルジュへ帰還するのだが、その途中でティファと合流するためにベンタインに立ち寄ったのだ。
「あの嫌な野郎はまだ生きてるのか?」
ロビーが言う嫌な野郎とは当然レオニードの事である。
「残念ながらね。兵の鍛錬もろくにせず、毎日のように小隊長クラスを呼び出しては、ルンベルク要塞攻略についての打ち合わせだ」
「具体的な攻略法は出たの?」
「いや、奴がミスなくソツなく攻撃すればいいって言いだして、どうやってミスなくソツなく攻撃するんですか?って聞いたら、それを考えるのがお前たち兵士の役目だ!だとさ。そんな打ち合わせ時間の無駄だから、私とマリアはサボって小隊長以外の兵士たちの鍛錬をやっているけど」
「相変わらずだな。悪い意味で期待を裏切らない奴」
ロビーがそう言ったところでティファがようやく現れた。
「レイラ、お待たせ。県令に挨拶していたら遅くなっちゃってごめんよ」
「いいよ。久しぶりにロビーとソフィアに会えたし愚痴も聞いてもらえたし」
「レイラもあの少将の下で大変だよね」
「私とマリアにはほとんど口出ししないから、勝手にやってるけど、いざ戦闘となったら信用出来ないし、しちゃいけない人物だからね」
レオニードはレイラとマリアの武力がわかった途端、二人に口出ししなくなった。
レイラたちは自分の思うように動けるようになり、二人で相談しながら兵士たちの鍛錬を行えてたので、それほど苦労はなかった。
とは言え、可能な限り顔を合わせたくない相手である事に変わりはないが。
「何にせよ、しばらくあの問題児と離れられて良かったじゃない」
「子供ならまだ可愛げもあるけど、見た目は大人、頭脳は子供だからね」
どこかで聞いた言葉と真逆である。
「ロビー、ソフィア。じゃあ行ってくるよ」
「ティファ、元気でな」
「なるべく早く帰って来てくれよ」
「早く終わると良いけどな。とにかく出来る限りやってくる」
ティファはそう言ってロビーとソフィアにしばしの別れを告げると馬に乗り、レイラと共に首都オルジュへと向かった。
その頃オルジュの宮殿ではシャローラがシュミット国王にある提案を持ち出していた。
ロマリア帝国を撹乱させるための作戦である。
「フロリアーナ様を助けて南プロシアン王国の内紛に介入するとなると、ロマリア帝国の動きを止めなくてはなりません。しかしブラウゼンを守るレオニード少将は愚将で悪評の高い人物。
ブラウゼンの城壁の防御力がある程度計算出来ると言っても、中を守る人間が信頼出来ないのでは心許ないというものです。
そこで、皇帝ルーファスが猜疑心が強く身内と言えども信用していない点を突くのです」
「具体的に申してみよ」
「はい。ルンベルク要塞を守るルーファスの次男バスティアンに謀反の疑惑があると言う噂をばら撒くのです。猜疑心の強いルーファスはこれを放置しないでしょう。
おそらく真意の確認をするか、一気に討伐する可能性もございます。いずれにせよ、バスティアンの動きをしばらくの間封じ込める事が出来るでしょう。私たちはその間に体制を整えて遅延戦闘の準備を行うのです」
「なるほど」
「バスティアンが疑惑を払拭するなり、新たな将がルンベルクに派兵されてブラウゼンに進撃した時にはレオニード少将に出撃してもらいましょう」
「レオニードを出撃させるのか?彼奴は前回無謀な進行作戦で大失敗したばかりであろう」
「今回に関しましては時間稼ぎのために必要なのです。勝敗は関係ありません、少しの時間でも帝国軍を足止めするための盾になってもらいます」
「レオニードを捨て石すると申すか」
シュミットは少し驚いた様子ではあったが、レオニード粛清の件については宰相カールからも提案が出ていた。
「前回の無謀な出撃でもおわかりのように、レオニード少将が居てはティファの才能がまったく活かされません。この先もあの人物が将としていればルンベルク要塞侵攻どころか兵士の犠牲をいたずらに増やすだけでございます。
であれば犠牲は最小限に済ませた方がいいでしょう。そして南プロシアン反乱軍を鎮圧後、ティファが新たな将となり、ロマリア帝国進撃を本格的に開始致します」
「うーむ」
シュミットはしばらく考えていたがシャローラの言う通り、このままレオニードをブラウゼンに置いていても戦いのたびに犠牲を出すだけなのは明白であった。
降格や強制送還に応じる人物でもなく、下手に反乱を起こされるのであれば、この帝国軍との戦いに乗じてレオニードを捨て石にし、軍の陣容を変えるいい機会であった。
「シャローラ、この件はお前の思う通りにやってみろ。必要な費用はここから出すがいい。明細などは要らぬ。お前が必要なだけ使ってよいぞ」
シュミットはそう言うと、部下に大量の金貨が入った「宝箱」を持って来させた。
おそらく一箱に金貨千枚は入っているであろう箱が三箱運び出された。
金貨三千枚と言えば、この時のレートが金貨一枚十ギウスであったので、三万ギウス
一般人の平均月給が五ギウスという時代に三万ギウスはいかに途方もない金額がおわかりであろう。
シャローラはこれを明細不要で必要なだけ使っていいという破格の裁可を受けたのだ。
もちろん、そう言われてもシャローラはきっちり使用した用途全てに明細を作成して後日提出したが。
「多大なご裁可を頂きありがとうございます。私の持てる力の限りを尽くします」
シャローラは初めて自身が立案して実行する任務を遂行するために、すぐさま行動に移った。
普段は可愛らしい表情の女性であるが、決断して動くとなれば迷いなく、そして時に今回のような非情な采配も下す。
それがシャローラという人物であった。
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