ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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南プロシアン王国編

オルジュからの通知

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「フロリアーナ様、どうぞこちらへ」

パトリシアに案内されてフロリアーナは来賓館へと向かった。

「パトリシア、シャローラ、そしてマリア。お主たち三人には感謝する」

「フロリアーナ様、身にあまる光栄でございますが、お礼の言葉は全てが万事解決するまで取っておいて下さい」

「そうか。。そうだな。まだ全てがこれからだ。タスタニアにはロマリア帝国と戦っている最中にお手数お掛けする事になるが、よろしく頼む」

パトリシアにそう言われてフロリアーナは全てはこれからだと気を引き締めた。
シャローラはマリアに当面フロリアーナの側で仕えるよう頼んだ。

「マリア、あなたにはフロリアーナ様がこのタスタニアにいる間のひと通りの世話をお願いする事になるよ」

「えっ!私がか?宮殿から誰か使いの者は来ないのか?」

「フロリアーナ様は命を狙われている身。護衛も兼ねてとなるとマリアが一番適任だと言うのが私の考えだけど、何か不都合はあるの?」

「不都合はないが。。そうか、敵の刺客からお守りするためとあらば、私がお仕えするしかないな」

マリアはやっとこの王女様から解放されると思いきや、ずっと仕えてくれと言われて一瞬気が遠くなりかけた。
しかしシャローラの考えには納得したようで、フロリアーナがタスタニア国内にいる間は彼女に仕える事となった。

「マリア。私に仕えるのは不服か?私はお主が一番いいのだがな」

「不服だなんて、とんでもごさいません。光栄な事ですので、恐れながら務めさせて頂きます」

「お主は表情が堅いくていかん。私だからいいが、これが男性だったら一緒に居て息苦しくてかなわんぞ。お主も騎士とは言え女性なのだから、もう少し笑顔を見せんと嫁の貰い手がなくなるぞ」

フロリアーナにそう言われて「はあ」としか返答出来ないマリアを見てパトリシアとシャローラは苦笑するしかなかった。
フロリアーナは刺客に追われて逃げてきた疲れもあったのか、食事を済ませた後早めに休むようマリアに促されてベットに入るとすぐに眠りについてしまった。

「お気の毒に。余程お疲れであったのだろうな」

「いくら王女様と言ってもまだ十五歳。気の休まる日がなかったんだろうな」

「マリア、シャローラ。これからが大変だよ。まずティファとレイラをオルジュに呼び、南プロシアンの反乱軍と戦う間、ロマリア帝国を牽制しなければならない。それと造船ね。材料と職人を集めなくてはならないけど、それは私が手配する。合わせて海上で何とか戦える状態に兵士たちを訓練しなければならないけど、これについてはティファとレイラ、マリアに任せようと思っている」

パトリシアは後方支援や裏方の仕事がメインで兵士たちを鍛錬する事は出来ない。
それはティファとレイラ、マリアに任せた方が適任である。
こうした各自の特技を活かして役割分担が出来るのが彼女たちの強みであった。

「ベンタインにいるティファとブラウゼンにいるレイラを呼び戻さなきゃ。ティファと入れ替えで私がベンタインに行く。まずはロマリア帝国に内紛の種を蒔いてこちらに進撃出来ないようにしなきゃ」

「シャローラ、よろしく頼むね」

パトリシアはティファとレイラを呼び戻すために手紙を書き、シャローラは自ら立案した作戦を正式に発動する事となった。

⭐︎⭐︎⭐︎

ベンタインに在中のティファにパトリシアからの手紙が伝書鳩によって届けられたのは、フロリアーナがタスタニアに亡命した翌日の午前中であった。
ティファは手紙の内容を読んで驚くと同時にパトリシアとシャローラの考えにも理解を示した。

「ロビー、ソフィア。ちょっといいかな」

「ティファ、何かあったのか?」

「うん。かなり重大な案件で、首都オルジュに戻る事になったんだ」

「え?ティファここからいなくなっちゃうのか?」

「二人とも落ち着いて聞いてね」

ティファがパトリシアからの手紙を読むと、ロビーとソフィアもこれが重要な一件だという事が理解出来たようだ。

「パトリシアとシャローラは私の同僚なんだけど、二人がこの南プロシアンから亡命してきたフロリアーナ王女を助けて反乱軍を制圧する事を決断したのは、海軍の援軍が得られるというのがそれほど大きいって事だよ」

「そうだよな。二ヶ国で陸と海から攻撃出来るメリットは大きいな。しかしロマリア帝国がそれを黙って見ているとは思えないけど、大丈夫なのか?」

「シャローラに秘策があるみたい。おそらくロマリア帝国内に内乱の火種を撒いてしばらく動けないように足止めしつつ遅延戦闘をするんだと思う」

「ティファがしばらくいなくなるのは寂しいけど、その間こっちは私たちが守るからさ」

「ソフィア、ありがとう。私がいない間二人でこのベンタインをよろしく頼むね」

「もちろん」

「任せて」

二人はティファの留守を守ると約束してくれた。

(この二人を味方につけて本当に良かった)

ティファはあらためてロビーとソフィアが味方になってくれて良かったと思うのであった。
ロビーもソフィアも諸事情から山賊になったとはいえ、元々は従順で気の優しい性格である。
ロビーはやや男っぽいが、二人とも自分を認めてくれたティファに絶大な信頼を寄せていた。
だだティファは時々それが怖くなる事があった。

(今は上手くいっているから二人はこうしてついて来てくれているけど、もし私が戦場で敗れたり判断を誤った時に二人はどうするだろうか?)

自分は脆く危うい一枚岩の上に立っているのではないか。そんな気分であった。
一歩間違えて転落すれば、それまでの周りの自分への信頼は一変するかも知れない。
しかし今はそんな事考えていているより、やらなければならない事が沢山ある。

「その時はその時!」

ティファは自分にそう言い聞かせていた。

「私とブラウゼンからレイラも召集が掛かっているけと、代わりにシャローラがここにくるから、二人はシャローラの指揮下で動いてもらう事になる。私がいない間こっちをよろしく頼むよ」

こうしてティファは南プロシアンとフロリアーナ王女へ協力するために、ブラウゼンに在中している妹のレイラと共に首都オルジュへ向かう事となった。
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