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南プロシアン王国編
二面攻防
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海軍にはロマリア帝国もタスタニアもほとんど力を入れていなかった。
もちろん海上戦を戦う事を想定していなかった訳ではないが、海軍はお金がかかる割に見返りが少ないからである。
造船には大量の資材と費用がかかり、船の漕ぎ手は熟練された訓練が必要であり、その育成にも時間を要した。
これだけ費用と時間をかけて作り上げた物がいざ戦いが始まれば数時間単位で撃沈されてしまい、苦労が文字通り水の泡となるからである。
さらに漕ぎ手は貴族ではなく市民か奴隷であった。
貴族社会のロマリア帝国は貴族の活躍の場のない海軍を毛嫌いしていて、この点に関してはタスタニアの方が柔軟であった。
このような理由からロマリア帝国とタスタニアにはこれまで海軍という形での軍は創設されず、海上偵察隊という小部隊が存在するのみで、実戦経験と言えば年に数回現れる海賊退治くらいであった。
話しを戻すとロマリア帝国には港町リスホルンがある。
この港町リスホルンに艦隊で攻め入り、上陸出来れば帝国首都ハーフェンは目と鼻の先である。
自国が海から攻められる可能性が出て来れば、皇帝ルーファスも枕を高くして眠る事が出来なくなるであろう。
戦略上重要な味方をつける事が出来るのは非常に大きいという事をシャローラは考えたのである。
「シャローラ、あなたの言う通り戦略上重要な事はわかったけど、ロマリア帝国と南プロシアンの反乱組織を同時に相手するにはどうするの?」
「南プロシアンをティファに任せようと思っているよ。ティファは陸上だけじゃなく海戦についても学んでるから、南プロシアンの反乱組織と海上の戦いになっても対抗出来る可能性は十分ある」
「あ。。」
パトリシアはティファの存在を忘れていたわけではなかったが、海上戦という未知の戦いにティファが対応出来るとまで知らなかったのだ。
「そしてその間のロマリア帝国は私が抑えておく。人員配置は調整するけど二手に分かれでも戦力が落ちない配置にしないとね」
ここまでの話しを聞いていたシュミットがフロリアーナを迎えに行くように指示を出した。
「シャローラ、お前の考えはわかった。確かに南プロシアンの海軍力を味方につける事が出来たならこれ以上ない援軍となる。
この件はフロリアーナ王女を向かい入れてから詳しく話すとして、まずは王女をお迎えに行ってくれ。いつまでもお待たせしては失礼だからな」
「御意」
パトリシアとシャローラは失礼のないよう正装に着替えてマリアと共にフロリアーナを迎えに向かった。
⭐︎⭐︎⭐︎
「フロリアーナ様、お待たせ致しました」
マリアが部屋に入るとフロリアーナは退屈そうに部屋の外を眺めていた。
「マリア、待ちくたびれたぞ」
フロリアーナは自分が一度信じるに足りる人物だと認めた相手には寛容であった。
知らぬ土地で一人で待たされて、刺客に狙われた身分では心細かったし不安もあったであろう。
しかしフロリアーナはマリアが必ず使者を連れて戻って来ると信じて待っていたのである。
「大変お待たせ致しまして申し訳ございません。フロリアーナ様、こちらの二人ですが、シュミット国王の側近でパトリシアとシャローラと申します」
マリアに紹介されてパトリシアとシャローラがそれぞれ挨拶した。
「フロリアーナ様、宮殿に入るのにそのお姿では差し支えがございましょう。まずはお風呂に入って頂いてこれにお着替え下さい」
パトリシアが渡した着替えをフロリアーナは受け取ると浴室に向かい、部屋を移動して着替えを始めた。
それから三十分ほど待ったであろうか。
「どうじゃ?似合うか?」
部屋から出てきたフロリアーナを見て三人は一様に感嘆した。
今まで追手の目を逃れるため、古着を着て汚れた姿をしていたが、正装してきちんと顔と髪を整えたフロリアーナは王女と呼ぶに相応しい容姿であった。
色白の肌は大理石のように美しく、年齢よりも少し年上に見える風貌。
気が強そうに見えて、どこか寂しげなその表情は若干十五歳にして背負うもの大きさがうかがえる。
「おお。。」
(なんと凛々しいのだ。眩ゆいばかりに輝いて見える。このお方は真に王女の気質をお持ちになっておられる)
マリアはさっきまで汚い服を着ていたフロリアーナとは見違える姿に目を見張った。
「フロリアーナ様、とてもお似合いですよ」
シャローラがそう言うとフロリアーナは嬉しそうに笑った。
「そうか。いい服を用意してくれた。礼を言うぞ」
「とんでもございません。王女様にお気に召すか不安でしたが、そう言って頂き安心致しました。では早速宮殿にご案内致します」
こうしてフロリアーナはパトリシアたちに連れられてオルジュの宮殿に入った。
もちろん海上戦を戦う事を想定していなかった訳ではないが、海軍はお金がかかる割に見返りが少ないからである。
造船には大量の資材と費用がかかり、船の漕ぎ手は熟練された訓練が必要であり、その育成にも時間を要した。
これだけ費用と時間をかけて作り上げた物がいざ戦いが始まれば数時間単位で撃沈されてしまい、苦労が文字通り水の泡となるからである。
さらに漕ぎ手は貴族ではなく市民か奴隷であった。
貴族社会のロマリア帝国は貴族の活躍の場のない海軍を毛嫌いしていて、この点に関してはタスタニアの方が柔軟であった。
このような理由からロマリア帝国とタスタニアにはこれまで海軍という形での軍は創設されず、海上偵察隊という小部隊が存在するのみで、実戦経験と言えば年に数回現れる海賊退治くらいであった。
話しを戻すとロマリア帝国には港町リスホルンがある。
この港町リスホルンに艦隊で攻め入り、上陸出来れば帝国首都ハーフェンは目と鼻の先である。
自国が海から攻められる可能性が出て来れば、皇帝ルーファスも枕を高くして眠る事が出来なくなるであろう。
戦略上重要な味方をつける事が出来るのは非常に大きいという事をシャローラは考えたのである。
「シャローラ、あなたの言う通り戦略上重要な事はわかったけど、ロマリア帝国と南プロシアンの反乱組織を同時に相手するにはどうするの?」
「南プロシアンをティファに任せようと思っているよ。ティファは陸上だけじゃなく海戦についても学んでるから、南プロシアンの反乱組織と海上の戦いになっても対抗出来る可能性は十分ある」
「あ。。」
パトリシアはティファの存在を忘れていたわけではなかったが、海上戦という未知の戦いにティファが対応出来るとまで知らなかったのだ。
「そしてその間のロマリア帝国は私が抑えておく。人員配置は調整するけど二手に分かれでも戦力が落ちない配置にしないとね」
ここまでの話しを聞いていたシュミットがフロリアーナを迎えに行くように指示を出した。
「シャローラ、お前の考えはわかった。確かに南プロシアンの海軍力を味方につける事が出来たならこれ以上ない援軍となる。
この件はフロリアーナ王女を向かい入れてから詳しく話すとして、まずは王女をお迎えに行ってくれ。いつまでもお待たせしては失礼だからな」
「御意」
パトリシアとシャローラは失礼のないよう正装に着替えてマリアと共にフロリアーナを迎えに向かった。
⭐︎⭐︎⭐︎
「フロリアーナ様、お待たせ致しました」
マリアが部屋に入るとフロリアーナは退屈そうに部屋の外を眺めていた。
「マリア、待ちくたびれたぞ」
フロリアーナは自分が一度信じるに足りる人物だと認めた相手には寛容であった。
知らぬ土地で一人で待たされて、刺客に狙われた身分では心細かったし不安もあったであろう。
しかしフロリアーナはマリアが必ず使者を連れて戻って来ると信じて待っていたのである。
「大変お待たせ致しまして申し訳ございません。フロリアーナ様、こちらの二人ですが、シュミット国王の側近でパトリシアとシャローラと申します」
マリアに紹介されてパトリシアとシャローラがそれぞれ挨拶した。
「フロリアーナ様、宮殿に入るのにそのお姿では差し支えがございましょう。まずはお風呂に入って頂いてこれにお着替え下さい」
パトリシアが渡した着替えをフロリアーナは受け取ると浴室に向かい、部屋を移動して着替えを始めた。
それから三十分ほど待ったであろうか。
「どうじゃ?似合うか?」
部屋から出てきたフロリアーナを見て三人は一様に感嘆した。
今まで追手の目を逃れるため、古着を着て汚れた姿をしていたが、正装してきちんと顔と髪を整えたフロリアーナは王女と呼ぶに相応しい容姿であった。
色白の肌は大理石のように美しく、年齢よりも少し年上に見える風貌。
気が強そうに見えて、どこか寂しげなその表情は若干十五歳にして背負うもの大きさがうかがえる。
「おお。。」
(なんと凛々しいのだ。眩ゆいばかりに輝いて見える。このお方は真に王女の気質をお持ちになっておられる)
マリアはさっきまで汚い服を着ていたフロリアーナとは見違える姿に目を見張った。
「フロリアーナ様、とてもお似合いですよ」
シャローラがそう言うとフロリアーナは嬉しそうに笑った。
「そうか。いい服を用意してくれた。礼を言うぞ」
「とんでもございません。王女様にお気に召すか不安でしたが、そう言って頂き安心致しました。では早速宮殿にご案内致します」
こうしてフロリアーナはパトリシアたちに連れられてオルジュの宮殿に入った。
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