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南プロシアン王国編
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タスタニアの首都オルジュに戻ったマリアは早速パトリシアのいる宮殿へと向かった。
「ほう、これがタスタニアの首都オルジュか。古き良き街並みだな。我が南プロシアンを思い出す」
「お気に入り召されて光栄です」
「街ゆく人たちがみな表情が明るいな。ロマリア帝国と戦争中と聞いているが、この人たちの表情を見ていると国が豊かでシュミット国王はよく統治されているのがわかる」
「何故おわかりになるのですか?」
「人は裕福足りて礼節を知るのだ。貧しい者に礼節を説いたところで、その日の暮らしに精一杯でとてもそんな余裕はあるまい。ある程度の裕福な生活が出来て初めて礼儀というものは浸透するのだ。ここの人たちは気軽に挨拶もするし言葉使いもいい。それだけ生活が豊かだという事だよ」
「なるほど」
マリアはまだ十五歳というこの少女をあらためてさすがだと思った。
(道ゆく人たちの表情を見ただけでそこまでわかるとは、やはりこの方は王女様だな)
「フロリアーナ様、そのお姿で宮殿に入るのはさすがに難がございますので、着替えを用意させます。しばらく宿でお待ち下さい」
マリアはフロリアーナをひとまず宮殿近くの宿に案内した。
「ここは宮殿御用達の宿で、外来客も宿泊出来る施設でございます。私は宮殿に赴き着替えと国王の側近を呼んで参りますので、ご不便ではございましょうが、しばらくお待ち頂きたく存じます」
マリアはそう言うとフロリアーナを宿に残して宮殿に入った。
⭐︎⭐︎⭐︎
「南プロシアンの王女様が?」
マリアから事情を聞いてパトリシアも驚きを隠せなかった。
南プロシアンと言えばつい最近まで平和でこの世の楽園とまで言われていた国であった。
海に囲まれた海洋国家で、人々の暮らしも豊かであり、外敵がこの国を攻めようと思ったら船で洋上の戦いを挑まなければならなかった。
しかし南プロシアンの海軍はギガンティア大陸最強であり、攻撃を全て跳ね返す力を持っており、また陸地には緩衝地帯としてザラメス自由都市があるため、これまで外敵の侵略を受ける事なく発展、繁栄していった国家である。
「先王アルベルト一世が亡くなった途端に反乱が起こるなんて、先王の力がそれだけ偉大であったという事なのかな。。」
フロリアーナの父で先代の南プロシアン国王のアルベルト一世が病気により急死した件はタスタニアのみならず大陸全土に知れ渡っていた。
パトリシアとシャローラもこの件については周知の事ではあったが、それから数十日しか経っていないのに反乱が起きている事に二人は驚いた。
「パトリシア、王女は宿に待たせてあるので、まずは会ってみてくれないか」
「フロリアーナ王女がこのタスタニアまで来ているのであれば、すぐにお迎えに行かねばならないね。わかった。まずはシュミット国王にご報告してくる」
⭐︎⭐︎⭐︎
「フロリアーナ王女が我が国に来ていると言うのか?」
シュミットもパトリシアからの報告を聞いて南プロシアンの反乱と突然の王女の来国に驚いた。
「シャローラ、フロリアーナ王女が我が国に逃げて来られたという事は、我が国に助けを求めていると見て間違いないな」
「はい。相違ございません」
「しかし我が国は今、ロマリア帝国と交戦中だ。南プロシアン王国とまで戦う余力はないぞ」
「とは申しましても、王女様をこのまま反乱軍が制圧している南プロシアンに追い返す訳にも参りません。その身をしばらく我が国で保護するのが助けを求めてきた王女様に対する道義だと考えます」
「無論、王女の身は我が国で保護するが、それを黙って見ている反乱軍ではあるまい。今後どうするかだ」
「その件につきまして私の愚見を申し上げます。問題点についての解決策は後で説明しますが、まずはフロリアーナ王女を助けて南プロシアンに貸しを作る事を第一に優先させるべきだと言うのが私の考えです。
理由はここで南プロシアンを味方に付けられれば対ロマリア帝国との戦いに大きな味方が出来るという事でございます。
南プロシアンは強力な海軍を保有する海洋国家であり、味方にすればロマリア帝国を海から攻撃する事が可能となるのが何よりも大きなメリットです」
「確かに。。」
パトリシアもシャローラの説明に納得した。
「ほう、これがタスタニアの首都オルジュか。古き良き街並みだな。我が南プロシアンを思い出す」
「お気に入り召されて光栄です」
「街ゆく人たちがみな表情が明るいな。ロマリア帝国と戦争中と聞いているが、この人たちの表情を見ていると国が豊かでシュミット国王はよく統治されているのがわかる」
「何故おわかりになるのですか?」
「人は裕福足りて礼節を知るのだ。貧しい者に礼節を説いたところで、その日の暮らしに精一杯でとてもそんな余裕はあるまい。ある程度の裕福な生活が出来て初めて礼儀というものは浸透するのだ。ここの人たちは気軽に挨拶もするし言葉使いもいい。それだけ生活が豊かだという事だよ」
「なるほど」
マリアはまだ十五歳というこの少女をあらためてさすがだと思った。
(道ゆく人たちの表情を見ただけでそこまでわかるとは、やはりこの方は王女様だな)
「フロリアーナ様、そのお姿で宮殿に入るのはさすがに難がございますので、着替えを用意させます。しばらく宿でお待ち下さい」
マリアはフロリアーナをひとまず宮殿近くの宿に案内した。
「ここは宮殿御用達の宿で、外来客も宿泊出来る施設でございます。私は宮殿に赴き着替えと国王の側近を呼んで参りますので、ご不便ではございましょうが、しばらくお待ち頂きたく存じます」
マリアはそう言うとフロリアーナを宿に残して宮殿に入った。
⭐︎⭐︎⭐︎
「南プロシアンの王女様が?」
マリアから事情を聞いてパトリシアも驚きを隠せなかった。
南プロシアンと言えばつい最近まで平和でこの世の楽園とまで言われていた国であった。
海に囲まれた海洋国家で、人々の暮らしも豊かであり、外敵がこの国を攻めようと思ったら船で洋上の戦いを挑まなければならなかった。
しかし南プロシアンの海軍はギガンティア大陸最強であり、攻撃を全て跳ね返す力を持っており、また陸地には緩衝地帯としてザラメス自由都市があるため、これまで外敵の侵略を受ける事なく発展、繁栄していった国家である。
「先王アルベルト一世が亡くなった途端に反乱が起こるなんて、先王の力がそれだけ偉大であったという事なのかな。。」
フロリアーナの父で先代の南プロシアン国王のアルベルト一世が病気により急死した件はタスタニアのみならず大陸全土に知れ渡っていた。
パトリシアとシャローラもこの件については周知の事ではあったが、それから数十日しか経っていないのに反乱が起きている事に二人は驚いた。
「パトリシア、王女は宿に待たせてあるので、まずは会ってみてくれないか」
「フロリアーナ王女がこのタスタニアまで来ているのであれば、すぐにお迎えに行かねばならないね。わかった。まずはシュミット国王にご報告してくる」
⭐︎⭐︎⭐︎
「フロリアーナ王女が我が国に来ていると言うのか?」
シュミットもパトリシアからの報告を聞いて南プロシアンの反乱と突然の王女の来国に驚いた。
「シャローラ、フロリアーナ王女が我が国に逃げて来られたという事は、我が国に助けを求めていると見て間違いないな」
「はい。相違ございません」
「しかし我が国は今、ロマリア帝国と交戦中だ。南プロシアン王国とまで戦う余力はないぞ」
「とは申しましても、王女様をこのまま反乱軍が制圧している南プロシアンに追い返す訳にも参りません。その身をしばらく我が国で保護するのが助けを求めてきた王女様に対する道義だと考えます」
「無論、王女の身は我が国で保護するが、それを黙って見ている反乱軍ではあるまい。今後どうするかだ」
「その件につきまして私の愚見を申し上げます。問題点についての解決策は後で説明しますが、まずはフロリアーナ王女を助けて南プロシアンに貸しを作る事を第一に優先させるべきだと言うのが私の考えです。
理由はここで南プロシアンを味方に付けられれば対ロマリア帝国との戦いに大きな味方が出来るという事でございます。
南プロシアンは強力な海軍を保有する海洋国家であり、味方にすればロマリア帝国を海から攻撃する事が可能となるのが何よりも大きなメリットです」
「確かに。。」
パトリシアもシャローラの説明に納得した。
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