ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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両雄激突編

崩壊 後編

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この様子を見ていたセリアは思わす声を上げた。

「なんだ?あの後方から迂回してきた部隊は。明らかに本隊より強力ではないか」

セリアの声を聞きソレーヌも前方を再度確認した。

「追撃にかかり縦に伸びたバスティアン卿の部隊を迂回して側面から攻撃を仕掛けるとはなかなかやるな」

ソレーヌもティファの戦い方に関心を示した。

「エミリア、ジュディ、ユリア、オリビア。ないと思っていた私たちの出番が来たようだな。あの後方から来た部隊はしんがりであろうが、このままではバスティアンが危ない。救出に向かうぞ」

「おお!出番だな」

ジュディが待ってましたとばかりに槍を構えて馬を走らせた。

「みんな油断するな。あの相手はドナウゼン在中軍よりも手強い。まずはバスティアン救出を最優先にしよう」

「了解」

セリアの掛け声にみんなが応答する。
いくらセリアがフリードリヒ家嫌いと言っても戦場で上官を見殺しにする訳にはいかない。
バスティアンはマリアとの一騎討ちから離脱して寸断されて混乱した部隊を立て直そうと部隊の後方にまわって号令し、縦陣から再び横陣に変更しようと兵を動かした。

しかしこの際に配置につこうとした帝国軍兵士たちは弓矢に次々と撃たれていった。
それでもバスティアン率いる帝国軍は四千人以上残っており五百人のティファの部隊より数で圧倒的に有利であった。
ティファはあくまでも味方を逃すためのしんがりであるため、レイラとマリアの両翼を前に出す短い鈎型陣を敷いた。

「かかれ!」

バスティアンが号令し両翼部隊が帝国軍よりはるかに短いティファの部隊を左右側面から突こうと進撃を開始する。
それを見たティファは戦わずに退却を開始した。

「口ほどにもない奴らめ!逃すな追え」

バスティアンは退却するティファの部隊を追撃したが、これを見ていたセリアは思わず「危ない」と声を上げた。

「バスティアンは誘い込まれている」

セリアの危惧したとおり、ティファはおよそ一キロほど逃げたところで撤退をやめて反撃に転じた。
そしてティファの合図と共に伏兵として待ち構えていたシャローラとロビー、ソフィアの部隊が左右から帝国軍の先頭部隊に襲い掛かった。

「やはり。。平野で不利なはずの相手が陣を敷くときは何かあると追撃は慎重に行わなければならぬ」

セリアは急ぎ馬を走らせてバスティアン部隊の後方に追いついた。

「相手はしんがり。味方を逃すための間だけ戦っているに過ぎない。我らが退却すれば相手も退却するだろう」

セリアは待ち伏せして徹底的に叩くはずの相手によもやの反撃を受けて犠牲を多く出すのを防ぐために、ここは退却が最善と考えた。

「バスティアンが聞く耳持つかはわからぬが、進言はせねばならぬ」

セリアはティファの攻撃によって足止めされているバスティアンの部隊に合流するため、単身で馬を迂回させて前に進み、追いついたところでバスティアンに進言する。

「バスティアン卿、退却して下さい。これ以上無駄な戦いで犠牲者を出すのは無意味です」

「退却だと。我らの方が圧倒的に数的優位なのにか?」

「相手は逃げると見せかけて我々を誘い込み、寸断しながら兵力を削りに来ています。あの部隊は味方を逃すためのしんがり。我らが退却すれば相手も退却致します。

すでに敵の本隊は敗走しており、敵を撃退するという目的は達成しています。ここでしんがり相手に犠牲者を出すのは無意味です。これ以上の犠牲者を出なさいようここで退却のご決断を」

セリアの進言は正しかったのだが、バスティアンはなかなか決断がつかなかった。やはり貴族のプライドが邪魔をしていたのである。

「バスティアン卿、しんがりは我らが努めます。ルンベルク要塞に帰還して下さい」

セリアが再度撤退を促すとバスティアンはようやう渋々ながら承知した。

「わかった。お主の言う通り、しんがり相手にこれ以上無駄な戦いで陛下からお預かりしている兵の犠牲を増やしては陛下に対して申し訳が立たぬ。俺は全軍撤退させるからしんがりを頼んだぞ」

この辺はバスティアンもまかりなりにも皇族であり、少将であった。
皇帝ルーファスから預かった兵を無闇に犠牲にする事を避け、全軍に撤退を指示して後はセリアたちに任せる事にしたのである。

「ありがとうございます。あとはお任せ下さい」

セリアはそう言うと前を向き、ティファの部隊に対抗するために両翼から攻めてくるロビーとソフィアにソレーヌとユリアを、前方のレイラとマリアにエミリアとジュディを向かわせてセリア自身は中央を守りティファと対峙する形となった。

「なかなか面白い相手にお会いできたようだ。一つお手並拝見といこうか」
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