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両雄激突編
予測
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「シャローラ久しぶりだね」
ティファとシャローラは士官学校の卒業後七ヶ月ぶりに再開し、抱き合って喜びお互いの健闘を称えた。
ティファは初対面のロビーとソフィアをシャローラに紹介したが、またもロビーが緊張していたので笑いに包まれた。
「ロビーさん、ソフィアさん。私はシャローラ・オルブライトも言います。よろしくお願いしますね」
シャローラの挨拶と仕草にソフィアがこっそりティファに耳打ちした。
(可愛らしくて優しそうな子だな)
(でしょ。シャローラは士官学校では凄いモテモテでね、ラブレターなんて一日平均五十通はデスクの上に置いてあったかな。全部興味ないって読まずに破り捨てたけど)
ティファとソフィアがそんなこそこそ話しをしていたが、マリアに咳払いをされてティファはバツの悪そうな表情を浮かべながらシャローラに現状を聞き出した。
「シャローラ、宮殿での仕事はどんな感じなの?」
「基本はパトリシアの補佐と、ザラメスで国の諜報機関が経営している店からの諜報活動の集約なんだ。色んな情報が錯綜する中から、これはと思うものを拾い上げて報告書を作るのもかなり大変なんだ。そんな時にティファの活躍を聞いたりすると自分も頑張らなきゃと思うんだけどね」
「私にはベンタインの兵士たちやここにいるロビーとソフィアが付いてくれているから」
そんな話しをしながら本題へと入っていった。
「ルンベルク要塞を指揮していたドレッセル少将がロマリア帝国皇帝の次男であるバスティアン卿と交代したと言う情報は既に入っているかな?」
シャローラに問いかけられてティファもその件に関しては知っていた。
「先任のドレッセル少将は、地位の高い貴族にありがちな気位が高くて挑発に乗りやすいって事で、ある意味ここのレオニード少将と同類だね。だから似た者同士の戦いで膠着状態なのかなって思っているんだけど。今のバスティアン卿も調べた限り大同小異ってところ」
「なるほど。レオニードも無能だけど相手も同レベルだからここを占領されずに済んでいるって事だよな。なんか妙に納得しちまったよ」
「ロビー、呼び捨てになってるよ」
ティファが指摘するもロビーは余程レオニードが嫌いらしくその後も呼び捨てにしていた。
「ルンベルク要塞の総兵力はおよそ五千人だという情報はほぼその通りと見て間違いないようだよ。実際に帝国の人口二十五万人から見ての可能総兵力は二万五千人ってところだね。徴兵制を敢行すればまた別の話しになるけど現状ではタスタニアと同じ志願制だから」
「そうか、五千人。。対城砦って考えるとやっぱりこの作戦は無謀と言うより他にないね」
ティファはため息混じりにそう言う。
「パトリシアも今回の件は釈然としないって言ってたけど、みんなそうだよね。レオニード少将以外は」
シャローラもまた釈然としないと洩らした。
「問題はこの攻撃の件が相当な範囲に情報が洩れてしまっている事だよね。攻めてくるとわかれば相手はどこかで待ち伏せしている事も十分に考えられる。バスティアン卿は皇室の人間だけにプライドが高いだろうしなおさらね。ただそうなれば対城砦戦よりはまだ対応出来るけど」
帝国に限らずタスタニアでもそうだが、貴族や騎士は気位が高く逃げたり守るだけという守勢を嫌う資質がある。
ティファにとっては戦術の一環でしかない逃げも貴族たちにしてみれば屈辱以外の何者でもないのだ。
付け入る隙があるとすればそこである。
ティファはシャローラと共に相手が待ち伏せしそうな場所を地図で調べてみた。
「ストラナ平野あたりかな。相手は倍の兵力。平野は数的優位な方が戦場として選択する可能性が高いからね」
ティファに与えられた兵力は五百人。おそらくは敗走の際にしんがりを務める事になろう。
「ティファ、相手は本当に城から出て待ち伏せしているのか?」
ソフィアがそう疑問を投げかける。
「その確率は高いと見ていい。何せこっちが攻め込む情報が筒抜けなんだもん。そこへ来て兵力は半分。プライドの高い将なら見くびられてると思って、城に篭ってガチガチに守るより徹底的に叩いてやろうと考えるだろうね。もちろん城に篭る事も考えられるから可能性は七分三分くらいと見ておかなきゃいけないけど」
「なるほど」
「城に籠られたらこっちの被害が大きくならないうちに退却。待ち伏せされたら味方を助けつつやはり被害を最小限にするために早めの戦線離脱。これが考えられる最善策かな。レオニード少将が玉砕覚悟の戦法を取らなければの話しだけど」
ティファはそれが懸念だと言うとレイラがそれに関しては大丈夫だと教えた。
「あの少将は戦場で自分が死ぬ覚悟がないからね。あくまでも部下をけしかけて自分は生き残ろうと考えているから玉砕なんて指示しないと思うよ。むしろ部下を盾にして自分だけ逃げるだろうから、私たちがしんがりを務めてもこれ幸いくらいにしか考えないよ」
ティファはレイラからそう聞いて気分が悪くなるのを感じていた。
「そう、部下を見殺しにしてでも自分だけ助かろうとするんだ。。一軍の将は一人でも多くの部下を助けなければならないのにね。まあ、それだから今回のような作戦を思いつくんだろうけど」
「ティファ、私たちは私たちに出来る事をやろう」
「そうだね。レイラ、マリア、ロビー、ソフィア、シャローラ。みんなが居てくれて心強いよ」
ティファは与えられた兵力で出来る事をやろうと決めた。
兵力は五百人だがレイラ、マリア、ロビー、ソフィアは一騎当千の実力者であり、人数以上の戦力であった。
それにシャローラの頭脳が加われば最悪でも犠牲者は最小限に留められるし、上手くいけば相手を敗走させる事も可能になるかも知れない。
しかしいくらティファでもこの戦いで生涯のライバルに出会う事になるとまでは予測不可能であった。
ティファとシャローラは士官学校の卒業後七ヶ月ぶりに再開し、抱き合って喜びお互いの健闘を称えた。
ティファは初対面のロビーとソフィアをシャローラに紹介したが、またもロビーが緊張していたので笑いに包まれた。
「ロビーさん、ソフィアさん。私はシャローラ・オルブライトも言います。よろしくお願いしますね」
シャローラの挨拶と仕草にソフィアがこっそりティファに耳打ちした。
(可愛らしくて優しそうな子だな)
(でしょ。シャローラは士官学校では凄いモテモテでね、ラブレターなんて一日平均五十通はデスクの上に置いてあったかな。全部興味ないって読まずに破り捨てたけど)
ティファとソフィアがそんなこそこそ話しをしていたが、マリアに咳払いをされてティファはバツの悪そうな表情を浮かべながらシャローラに現状を聞き出した。
「シャローラ、宮殿での仕事はどんな感じなの?」
「基本はパトリシアの補佐と、ザラメスで国の諜報機関が経営している店からの諜報活動の集約なんだ。色んな情報が錯綜する中から、これはと思うものを拾い上げて報告書を作るのもかなり大変なんだ。そんな時にティファの活躍を聞いたりすると自分も頑張らなきゃと思うんだけどね」
「私にはベンタインの兵士たちやここにいるロビーとソフィアが付いてくれているから」
そんな話しをしながら本題へと入っていった。
「ルンベルク要塞を指揮していたドレッセル少将がロマリア帝国皇帝の次男であるバスティアン卿と交代したと言う情報は既に入っているかな?」
シャローラに問いかけられてティファもその件に関しては知っていた。
「先任のドレッセル少将は、地位の高い貴族にありがちな気位が高くて挑発に乗りやすいって事で、ある意味ここのレオニード少将と同類だね。だから似た者同士の戦いで膠着状態なのかなって思っているんだけど。今のバスティアン卿も調べた限り大同小異ってところ」
「なるほど。レオニードも無能だけど相手も同レベルだからここを占領されずに済んでいるって事だよな。なんか妙に納得しちまったよ」
「ロビー、呼び捨てになってるよ」
ティファが指摘するもロビーは余程レオニードが嫌いらしくその後も呼び捨てにしていた。
「ルンベルク要塞の総兵力はおよそ五千人だという情報はほぼその通りと見て間違いないようだよ。実際に帝国の人口二十五万人から見ての可能総兵力は二万五千人ってところだね。徴兵制を敢行すればまた別の話しになるけど現状ではタスタニアと同じ志願制だから」
「そうか、五千人。。対城砦って考えるとやっぱりこの作戦は無謀と言うより他にないね」
ティファはため息混じりにそう言う。
「パトリシアも今回の件は釈然としないって言ってたけど、みんなそうだよね。レオニード少将以外は」
シャローラもまた釈然としないと洩らした。
「問題はこの攻撃の件が相当な範囲に情報が洩れてしまっている事だよね。攻めてくるとわかれば相手はどこかで待ち伏せしている事も十分に考えられる。バスティアン卿は皇室の人間だけにプライドが高いだろうしなおさらね。ただそうなれば対城砦戦よりはまだ対応出来るけど」
帝国に限らずタスタニアでもそうだが、貴族や騎士は気位が高く逃げたり守るだけという守勢を嫌う資質がある。
ティファにとっては戦術の一環でしかない逃げも貴族たちにしてみれば屈辱以外の何者でもないのだ。
付け入る隙があるとすればそこである。
ティファはシャローラと共に相手が待ち伏せしそうな場所を地図で調べてみた。
「ストラナ平野あたりかな。相手は倍の兵力。平野は数的優位な方が戦場として選択する可能性が高いからね」
ティファに与えられた兵力は五百人。おそらくは敗走の際にしんがりを務める事になろう。
「ティファ、相手は本当に城から出て待ち伏せしているのか?」
ソフィアがそう疑問を投げかける。
「その確率は高いと見ていい。何せこっちが攻め込む情報が筒抜けなんだもん。そこへ来て兵力は半分。プライドの高い将なら見くびられてると思って、城に篭ってガチガチに守るより徹底的に叩いてやろうと考えるだろうね。もちろん城に篭る事も考えられるから可能性は七分三分くらいと見ておかなきゃいけないけど」
「なるほど」
「城に籠られたらこっちの被害が大きくならないうちに退却。待ち伏せされたら味方を助けつつやはり被害を最小限にするために早めの戦線離脱。これが考えられる最善策かな。レオニード少将が玉砕覚悟の戦法を取らなければの話しだけど」
ティファはそれが懸念だと言うとレイラがそれに関しては大丈夫だと教えた。
「あの少将は戦場で自分が死ぬ覚悟がないからね。あくまでも部下をけしかけて自分は生き残ろうと考えているから玉砕なんて指示しないと思うよ。むしろ部下を盾にして自分だけ逃げるだろうから、私たちがしんがりを務めてもこれ幸いくらいにしか考えないよ」
ティファはレイラからそう聞いて気分が悪くなるのを感じていた。
「そう、部下を見殺しにしてでも自分だけ助かろうとするんだ。。一軍の将は一人でも多くの部下を助けなければならないのにね。まあ、それだから今回のような作戦を思いつくんだろうけど」
「ティファ、私たちは私たちに出来る事をやろう」
「そうだね。レイラ、マリア、ロビー、ソフィア、シャローラ。みんなが居てくれて心強いよ」
ティファは与えられた兵力で出来る事をやろうと決めた。
兵力は五百人だがレイラ、マリア、ロビー、ソフィアは一騎当千の実力者であり、人数以上の戦力であった。
それにシャローラの頭脳が加われば最悪でも犠牲者は最小限に留められるし、上手くいけば相手を敗走させる事も可能になるかも知れない。
しかしいくらティファでもこの戦いで生涯のライバルに出会う事になるとまでは予測不可能であった。
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