ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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両雄激突編

不安 後編

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「何やらブラウゼン要塞にいるレオニードっていう将がルンベルク要塞に攻撃をかけるかも知れないって噂が流れているよ」

「ルンベルク要塞に?あれだけの要害をどうやって陥落させるつもりなのかな?むしろ見てみたい気がする」

「ティファならどうやってルンベルク要塞を陥落させるんだ?」

「そうね、まともに正面から当たったところで無理だろうから奇略を使って奪い取ろうと考えてるよ」

「奪い取る?どうやって?」

「まあまあ、それは私たちがブラウゼンへ異動になってルンベルク要塞へ進撃って時になったらまた話すよ」

今やロビーとソフィアは信頼出来る仲間ではあったが、それでも機密事項をこの段階で迂闊に話す訳にはいかない。
二人もそれは心得ていた。

「わかった。ティファにはちゃんと考えている事があるんだろうから、ここでは聞かないでその時を楽しみにしているよ」

ロビーとソフィアは自分たちを捕獲した時のティファの奇想天外な戦術を知っているだけに、ティファならルンベルク要塞を攻略出来ると信じていた。
そうでなければ仲間になっていないし、再び山賊に戻り今頃はティファにやられてこの世にはいなかったかも知れないのだ。

「しかし、そのレオニードという将が何を考えてルンベルク進行を計画しているのかわからないな。オルジュにいた時からあまり良くない評価しか聞かなかった人だからな。力づくの攻撃で犠牲者を出すだけで終わらなければいいけど」

ティファは難攻不落を誇る要塞都市に無鉄砲な攻撃を仕掛けるのは味方の損害を増産するだけで無意味な事と考えていた。

「自分の手柄のために無謀な攻撃を仕掛けるんのだとすれば、そんな事のために犠牲になる兵士たちが気の毒でならない。ブラウゼンにはレイラとマリアがいる。二人に何事もなければいいんだけど。。」

そんなティファの不安は最悪の形で的中してしまう事となった。
首都オルジュからの依頼でレオニードの応援のためにベンタインに在中していたティファたちにも出撃の命令が下ったのだ。

「ティファニー殿にロズヴィータ殿、ソフィア殿。申し訳ないがこれも命令だ。ブラウゼンに出向して増員部隊として行ってきてくれ」

「県令、こんな無謀な攻撃が成功するとお思いですか?犠牲者を出すだけの出撃は止めるべきです」

「まだ戦ってもいないうちかは負けるとは限らないであろう。オルジュの上の連中もそう言う見解で止める事は出来ぬのだ。ここは自重して行ってくれ」

「自重すべき事が違うと思うのですが。。でもここでこれ以上県令と話しても状況は何も変わらないでしょうから行きます」

「すまぬな、私の力ではどうにもならないのだ。我慢してくれ」

ティファはそれには返答せずに一礼だけして県令室を足早に退室した。
ここの県令はもはやティファに頭が上がらない状態であった。

「ティファ、本当に行くのか?」

「うん、ロビーにもソフィアにも言ってなかったかな?ブラウゼンには私の妹とその友人がいるからね。妹だけを戦わせるわけにはいかない。でも何でみんなわかっていて止めないのかもさっきの県令の様子を見ていて何となく想像ついたよ」

「どう言う事?」

ソフィアがそう聞くとティファは自論と前置きした上で二人に話した。

「おそらくはそのレオニードという少将が止めても聞かないとわかっているんだろうね。もっと言えばその少将に反乱を起こされてブラウゼンを占拠されてしまったらこちらは容易には手も足も出なくなる。だから実際にやらせてみて痛い目見させるしかないって事だろうな。

そんな事のためにどれだけの犠牲者が出るか。。その責任はレオニード少将にあるとは言え私はどうもすっきりしない。でもこれ以上文句を言っていても状況が変わる訳じゃないから、私たちに出来る事は敗走となった場合に一人でも多くの兵士を帰還させる事くらいだよ」

「そうか、やっぱり出撃せざるを得ないのか」

「ロビー、ソフィア。私たちはとにかく犠牲を最小限に留めるために動こう。もちろん、勝機とみたら攻撃する事も十分あるからね」

「おお!思い切り暴れられるんだな」

「久しぶりの実戦で腕がなるな」

ロビーとソフィアは久しぶりの実戦という事で喜んでいたが、ティファはレオニードがどんな作戦でルンベルク要塞を攻めるのかを見る事にした。

(そもそもルンベルクほどの要害を攻撃するなら秘密裏に動かなければならないのに、すでに噂が広まっているだけでも失敗したに等しい。一体誰が噂を流しているんだろう。攻撃は秘密裏に行うのが鉄則なのに)

ティファがそう不安に感じていたのも束の間、二日後にブラウゼンへ到着するよう指令があり、ティファたちは不安を抱えたままベンタインから出発した。
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