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ロマリア帝国事件編
激闘
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一方でミリアムを救いに行ったソレーヌは悲痛の声をあげていた。
「ミリアムー!」
「ソ。。レーヌ。。」
ソレーヌはミリアムに急ぎ駆け寄ったが、両手両足に釘を打ち付けられたミリアムは出血もあり相当に体力を消耗していた。
「待ってろ!必ず助けてやる」
ソレーヌは打ち付けられた釘ごとミリアムの身体を台からゆっくりと引き剥がした。
「ミリアム、少しの間辛抱してくれ」
釘が掌から外れると血が溢れ出るため、ソレーヌは釘をそのままにして素早く布で止血する。ミリアムを台の上からおろし、抱き抱えて急ぎ小屋の外に出た。
「県令に敵を近づけるな」
どこからともなくその声が聞こえてくると残る県令親衛隊たちは次々と群がるようにセリアたちに向かって行った。
「邪魔するな」
セリアの前にユリアが出て、向かってくる隊員たちを斬り倒して行くが、相手も必死である。
そう簡単にはファビアンのそばに近寄らせてくれなかった。
「県令、ここは私にお任せを」
既に腕の止血を終えたカランドロがファビアンを助けるべくユリアに向かっていった。
彼はユリアの実力を知らなかった。
カランドロはこれまで抵抗しない労働者や生贄たちしか相手にした事はなく、剣の腕前はせいぜい中の上くらいである。
そんな中途半端な実力で腕に怪我を負った状態でユリアに向かっていった末路も予想通りであった。
カランドロは華奢なユリアを見てほくそ笑んだが、ユリアは意に介さず二、三号ほど打ち合うと剣速を上げて一撃の元に葬った。
打ち合ったのは相手の力を測るためであったが、大した事ないとわかると一気に勝負を付けたのだ。
「私を見た目で見下してたみたいだけど、その前に自分の実力をもう少し知っておくべきだったわね」
ユリアは遺体となったカランドロに手遅れの助言を言うとファビアンを追って街の中央へ向かった。
都市内のドナウゼン在中軍兵士たちは徐々に制圧されていた。
一部の兵士たちがまだ抵抗しているが、鍛え抜かれているセリアたちフェルデン在中軍に敵うはずもなく、大半が鎮圧された。
ジュディとエミリアもあらかたの親衛隊員を倒してひと息ついた。
「どうやら勝敗は決したようだな」
ジュディの言葉に県令親衛隊の隊長と思われる男も敗北を認めた。
ジュディとエミリアはここでの戦いに見切りを付け、囚われている労働者たちの捜索に向かおうとした時、隊長の口から思いがけない事を聞いた。
「一つだけ忠告しておく。県令のファビアンを捕らえてもまだこの一件は終わりではない。もう一人黒幕がいる。そいつを抑えなければ生贄と呼ばれる人たちは助からないだろう」
「なんだって?それは誰だ?」
「ファビアンの娘だ。だが私も名前まではわからぬ。一度だけ剣を交えた事があるが、かなりの実力者であった。おそらくお主たちに匹敵するくらいのな」
「娘って事は女?そんな奴がここにいるのか?」
「そいつは突然姿を現した。そしてここにいるのは確かなのだが、最初の一度以来我々の前に姿を見せた事はない。父親のファビアンですら逆らえないほどの奴だ。せいぜい気をつけるがいい」
隊長はそう言うと刀を捨てて投降していった。
「。。奴の言った事も気になるが、まずは囚われている人たちの救出だ」
ジュディとエミリアは囚われている労働者たちの捜索に向かった。
「セリアこっちは制圧したよ」
「ユリア、ご苦労だった。リーは自らの過ちを悟って新たな主人を求めて青騎士たちと共に去っていったそうだ。残るはファビアンと僅かな側近だけだ」
残ったファビアンを取り巻く三十人程の兵士は討伐軍に取り囲まれた。
「残るはお前だけだ。ファビアン、お前を捕獲する。多くの労働者を過酷な労働に従事させた事と、金の横領。ネープ民族を生贄にした容疑だ」
セリアがそう言うとファビアンは恥も外聞も捨てて命乞いを始めた。
「私が何をしたと言うのだ?私はルーファス法に苦しんでいる者たちを救ってやったのだ。金にしても一部計測の誤りがあったのは認めるし、労働者に少しばかりの労働は課したかも知れぬが、その金で多くの人に働く場を与えて救ったのだ。その功績は讃えられこそすれ、逮捕されるような覚えはない。それとも私が人を殺していたと言う証拠でもあるのか?」
「人殺し?私は生贄にしたとしか言っていないが、人を殺していたのか?」
「う。。」
ファビアンは口を滑らせた事を後悔したが、後悔先立たずであった。
セリアに心に怒りが沸々と沸いてきた。
「多くの人が救われただと。。ふざけるな!ならば何故我々が出撃しているのだ?お前のために犠牲になった数多くの人たちがいるからだろう。その首につけている飾りだけでも数万ギウスは下るまい。
お前のやっている事はルーファスと同じだ。他民族を貶めて残虐行為を行って良いなどという理屈がまかり通るなら、そんな世の中はこの私が叩き壊してやる。お前はそのための見せしめだ。こいつらを全員縄に縛りつけろ」
セリアの命令で抵抗する生き残りの兵士たちをファビアンもろとも全員縄に縛りつけられた。
ファビアンと兵士たちは見せしめのため一頭の馬に五名ずつ、計六頭の馬にそれぞれ数珠繋ぎにされて全員首都バーフェンまで大通りを連行とした。
背中には罪状を書き記した紙を貼られ、ハーフェンまでの道中は人々の注目を浴び、辱めを受ける事となる。
後はハーフェンが処刑なり刑罰を与えるだろう。
だが、ファビアンは最後に不敵な笑いを浮かべた。
「これで終わりではない。まだ一人残っている。あの悪魔のような女がな。。」
「ミリアムー!」
「ソ。。レーヌ。。」
ソレーヌはミリアムに急ぎ駆け寄ったが、両手両足に釘を打ち付けられたミリアムは出血もあり相当に体力を消耗していた。
「待ってろ!必ず助けてやる」
ソレーヌは打ち付けられた釘ごとミリアムの身体を台からゆっくりと引き剥がした。
「ミリアム、少しの間辛抱してくれ」
釘が掌から外れると血が溢れ出るため、ソレーヌは釘をそのままにして素早く布で止血する。ミリアムを台の上からおろし、抱き抱えて急ぎ小屋の外に出た。
「県令に敵を近づけるな」
どこからともなくその声が聞こえてくると残る県令親衛隊たちは次々と群がるようにセリアたちに向かって行った。
「邪魔するな」
セリアの前にユリアが出て、向かってくる隊員たちを斬り倒して行くが、相手も必死である。
そう簡単にはファビアンのそばに近寄らせてくれなかった。
「県令、ここは私にお任せを」
既に腕の止血を終えたカランドロがファビアンを助けるべくユリアに向かっていった。
彼はユリアの実力を知らなかった。
カランドロはこれまで抵抗しない労働者や生贄たちしか相手にした事はなく、剣の腕前はせいぜい中の上くらいである。
そんな中途半端な実力で腕に怪我を負った状態でユリアに向かっていった末路も予想通りであった。
カランドロは華奢なユリアを見てほくそ笑んだが、ユリアは意に介さず二、三号ほど打ち合うと剣速を上げて一撃の元に葬った。
打ち合ったのは相手の力を測るためであったが、大した事ないとわかると一気に勝負を付けたのだ。
「私を見た目で見下してたみたいだけど、その前に自分の実力をもう少し知っておくべきだったわね」
ユリアは遺体となったカランドロに手遅れの助言を言うとファビアンを追って街の中央へ向かった。
都市内のドナウゼン在中軍兵士たちは徐々に制圧されていた。
一部の兵士たちがまだ抵抗しているが、鍛え抜かれているセリアたちフェルデン在中軍に敵うはずもなく、大半が鎮圧された。
ジュディとエミリアもあらかたの親衛隊員を倒してひと息ついた。
「どうやら勝敗は決したようだな」
ジュディの言葉に県令親衛隊の隊長と思われる男も敗北を認めた。
ジュディとエミリアはここでの戦いに見切りを付け、囚われている労働者たちの捜索に向かおうとした時、隊長の口から思いがけない事を聞いた。
「一つだけ忠告しておく。県令のファビアンを捕らえてもまだこの一件は終わりではない。もう一人黒幕がいる。そいつを抑えなければ生贄と呼ばれる人たちは助からないだろう」
「なんだって?それは誰だ?」
「ファビアンの娘だ。だが私も名前まではわからぬ。一度だけ剣を交えた事があるが、かなりの実力者であった。おそらくお主たちに匹敵するくらいのな」
「娘って事は女?そんな奴がここにいるのか?」
「そいつは突然姿を現した。そしてここにいるのは確かなのだが、最初の一度以来我々の前に姿を見せた事はない。父親のファビアンですら逆らえないほどの奴だ。せいぜい気をつけるがいい」
隊長はそう言うと刀を捨てて投降していった。
「。。奴の言った事も気になるが、まずは囚われている人たちの救出だ」
ジュディとエミリアは囚われている労働者たちの捜索に向かった。
「セリアこっちは制圧したよ」
「ユリア、ご苦労だった。リーは自らの過ちを悟って新たな主人を求めて青騎士たちと共に去っていったそうだ。残るはファビアンと僅かな側近だけだ」
残ったファビアンを取り巻く三十人程の兵士は討伐軍に取り囲まれた。
「残るはお前だけだ。ファビアン、お前を捕獲する。多くの労働者を過酷な労働に従事させた事と、金の横領。ネープ民族を生贄にした容疑だ」
セリアがそう言うとファビアンは恥も外聞も捨てて命乞いを始めた。
「私が何をしたと言うのだ?私はルーファス法に苦しんでいる者たちを救ってやったのだ。金にしても一部計測の誤りがあったのは認めるし、労働者に少しばかりの労働は課したかも知れぬが、その金で多くの人に働く場を与えて救ったのだ。その功績は讃えられこそすれ、逮捕されるような覚えはない。それとも私が人を殺していたと言う証拠でもあるのか?」
「人殺し?私は生贄にしたとしか言っていないが、人を殺していたのか?」
「う。。」
ファビアンは口を滑らせた事を後悔したが、後悔先立たずであった。
セリアに心に怒りが沸々と沸いてきた。
「多くの人が救われただと。。ふざけるな!ならば何故我々が出撃しているのだ?お前のために犠牲になった数多くの人たちがいるからだろう。その首につけている飾りだけでも数万ギウスは下るまい。
お前のやっている事はルーファスと同じだ。他民族を貶めて残虐行為を行って良いなどという理屈がまかり通るなら、そんな世の中はこの私が叩き壊してやる。お前はそのための見せしめだ。こいつらを全員縄に縛りつけろ」
セリアの命令で抵抗する生き残りの兵士たちをファビアンもろとも全員縄に縛りつけられた。
ファビアンと兵士たちは見せしめのため一頭の馬に五名ずつ、計六頭の馬にそれぞれ数珠繋ぎにされて全員首都バーフェンまで大通りを連行とした。
背中には罪状を書き記した紙を貼られ、ハーフェンまでの道中は人々の注目を浴び、辱めを受ける事となる。
後はハーフェンが処刑なり刑罰を与えるだろう。
だが、ファビアンは最後に不敵な笑いを浮かべた。
「これで終わりではない。まだ一人残っている。あの悪魔のような女がな。。」
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