ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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ロマリア帝国事件編

ソレーヌ内偵調査 後編

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金の価値は一グラム十ギウス
ファビアンは首都ハーフェンに金の採掘量を低く見積り、上納した。
その差額分を自分の懐に入れていたのだ。
ギアラエ鉱山では採掘量は自己申告となっていたのと、ハーフェンから監査が入っても積まれている金をパッと見ただけで量がわかるはずもなく、すべてカランドロの申告を信用するしかなかった。

ファビアンはこのやり方で懐を肥やしていった。
そしてギアラエ近隣でネープ民族女性が不明になる事件はこの鉱山内でも話題になっている事を伝えた。

「実はこのギアラエ鉱山都市の中でもネープ民族女性がいなくなっているのです」

「それは本当か?」

「ええ。この数ヶ月の間に知っているネープ民族の女性はほとんどいなくなってしまいました。どこに行ったのか行方もわからず、誰に聞いてもわからないのです。住人の間でも気味が悪いって噂になっていたんです」

「どういう事だ。。」

ソレーヌの問いに女性は不確定情報だと前置きして答える。

「あくまでも噂ですが、何かの生贄にされているとか」

「何かの生贄?」

「噂にすぎませんので、何とも言えませんが、最近ではネープ民族以外の女性もいなくなっていますし。ファビアンはネープ民族女性に恨みがあるという話しも耳に入って来ています」

「奴は幼少期、ネープ民族の母親にかなり酷い目に遭わされたらしいからな。だからといって同情はしないが」

「その母に対する復讐でもやっているのでは?と噂にはなっていますが。。実際のところは誰も見た事がないので何とも言えません。確実に言えるのは若い女性が行方不明になっているという事だけです。そしてここで働く女性はみんなその事を知っています。次は自分の番かも知れないと。だから怯えているのです。下手に口に出せば処刑されてしまいますから」

ソレーヌはここの住人が何かに恐れている理由が判明した。

「生贄か。。顔見知りが日に日に理由もわからず減っていくとなればみんな恐怖に陥るはずだ。その噂の真相を調べないと」

街の人たちとて全員が騙されて働かされているわけではなかった。
一部の人間はおかしい事に気がつき、異論を唱えたが口封じのために始末される。
これを知っている他の人たちは処刑を恐れて口を閉ざす。
ソレーヌが異様に感じていた空気はこのためであった。

「ここが酷い環境だとわかっていて、それでも抜け出せないのですか?」

「ルーファス法です。ここから外に出れば私たちは重税を課せられ、払えなければ収容所生活です。ここは低賃金で労働環境もよくはありませんが、それでも自由なだけまだマシです」

「そうか。。」

ソレーヌは歯痒かった。
ここにいる人たちは、劣悪な環境だとわかっていても抜けられない事情があるのだ。

「すみませんが、これ以上話すと私の身にも危険が。。」

女性が怯えているのがわかったのでソレーヌはここで切り上げる事にした。

「すまなかったな。貴重な情報をありがとう」

ソレーヌが立ち去ろうとした時、女性がひと言声をかけてきた。

「あの。。もしファビアンの罪状や行方不明の女性たちの行方がわかったらここはどうなるのですか?」

「ファビアン以下幹部たちは全員捕らえられてそれなりの刑罰に服する事になるだろうし、ここは国の管轄となる。今いる人たちは全員解放となるだろうな」

「そうですか。.先程申し上げたようにここにいる人たちすべてが不満を言っている訳ではないのです。人によっては解放されるよりここにいた方がいいという人もいるでしょう。それを頭の片隅に入れて頂ければと思います」

女性の言葉にソレーヌは考え込んでしまった。

「難しい問題だな。しかし私は国の兵士ゆえ、上からの命令があればそれに従わなければにらない。解放された人たちの処遇はモニカ様に頼む事くらいしかしてやれぬ。すまないが。。」

「そうですか。全ての人を助けるのはやはり難しいのですね」

女性はそう言うと会釈してその場を立ち去った。

「解放された人たちの事は全てが解決してからだ。まずはネープ民族女性たちの行方を探っていくとしよう」
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