ギガンティア大陸戦記

葉月麗雄

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ロマリア帝国事件編

調査命令

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「お姫様から命令だとよ」

セリアが吐き捨てるように言うと他のメンバーはむしろどんな用件なのかに興味を示した。

「お姫様からの命令って事は出撃か?」

「ジュディ、残念だが今回は地味な役目だ。ドナウゼンにあるギアラエ鉱山都市に潜入しての内偵調査という事だ」

「内偵調査?鉱山の?」

「ドナウゼンでは最近ネープ民族の女性のみが謎の失踪をしている事件が多発していてな。モニカはギアラエが怪しいと睨んで先発隊として調査隊を送ったのだが、誰一人として報告も帰還もしなかったらしい」

セリアの説明を聞いてジュディを始めとするメンバーも慎重な面持ちになった。

「それは確かに不可解ね。モニカ様が不審に思うのもうなずける」

ユリアはモニカの命令に理解を示した。

「お姫様の使い勝手の良い駒として扱われるのは不本意ではあるが、命令となれば我々には拒否権はない。従うのみだが、問題は誰が行くだ。モニカからは内偵調査員は一名でいいとの事だ。もし討伐となれば我々フェルデン在中軍が動く事になるために、残りの者は待機だそうだ」

「フェルデン在中軍が?何故だ?ドナウゼンにも在中軍がいるだろう。管轄外じゃないか」

ジュディの疑問にセリアが答える。

「どうやら県令とドナウゼン在中軍は裏では癒着しているようでな。何か問題が起こってもドナウゼン在中軍は動かないという事らしい。そこでいざとなればモニカの権限で我々が動くという。だから捜査員は一名で、残りの者は出撃メンバーとして待機との御達しだ」

「在中軍が県令と連んでるなんて許せないな。。で、誰が行くんだ?」

ジュディに言われるまでもなく、誰が行くかはセリアも考えていた。

「内偵か。あくまでも一般市民として目立たず、なおかつ冷静に行動する慎重さが必要だな。私は目立ち過ぎる上に短気だから無理だな」

セリアがそう言うとジュディ、エミリア、ユリアも右に習った。

「ボクも無理。頭に来たら考えるより先に手が出そう」

「私も無理。背が高くて目立ち過ぎるから」

「私は言葉遣いで怪しまれるかな」

そこにオリビアが興味深そうに身を乗り出してきた。

「面白そう。私行ってもいいですよ」

それをセリアが制する。

「オリビアはダメだ。私たちはまだ君の実力がわからない。これは危険な任務だ。面白そうなどと興味本意で行かれては困る」

そう言われてオリビアはちょっとすねた仕草で仕方なく自重した。
オリビアは仲間に加わったばかりで実力も未知数だ。
性格は素直でいい子だが、実戦で戦っているところを見た事がないため、実力を測る事が出来ない。

何よりストロベリーブロンドにアイスブルーの瞳と容姿からして目立ちすぎる。
危険な任務につかせて大丈夫なのか判断出来ないメンバーを行かせる訳にはいかないというセリアの判断は妥当なところだ。
そうなったところで、五人が一斉にソレーヌの方を見た。

「ちょっと待って。私?どうしてそうなる?」

「冷静で目立ち過ぎず忍耐力もある。内偵捜査に一番適しているのは私たちの中ではどう見てもソレーヌしかいない」

セリアの言葉にソレーヌは頭を抱えてため息をついた。

「いや、私だって冷静さを欠く時もあるしだな。。」

そう言いながら周りを見渡したが、セリアは自分で言っている通り短気で目立つから無理。
ジュディも気さくで陽気だが、それは仲間や味方にであり、敵に対してはそれほど忍耐力がある方ではない。

エミリアは身長が高いため、目立ち過ぎる。
この時代の女性の平均身長は百五十五、六センチだったが、エミリアは一七五センチもある。
どう見ても騎士か兵士の体格であった。
ユリアはソレーヌを除けば一番適していると思うが、育ちの良さから言葉遣いで怪しまれる可能性がある。
あくまでも一般市民として潜り込むのだから。

オリビアはセリアの言う通り今回は対象外。
ナディアは言うまでもなく対象外。
そうなると、消去法でいっても自分しか残らない。
ソレーヌは諦めたのと半ばやけ気味で内偵調査員を引き受ける事にした。

「わかったよ。私が行けばいいんだろ。。何でこんな役回りが来るのかな」

「心配するな。必ず助けに行くから」

セリアがそう約束するがソレーヌは任務とは言え気乗りしなかった。

「みんな人ごとだと思ってないか?」

「そんな事ないよ。ソレーヌは大変だなって同情するよ」

「。。ジュディ、自分じゃなくて良かった感がありありと出てるぞ」

「あ、いや。これは失礼しました」

こうしてソレーヌが内偵捜査員としてギアラエ鉱山都市に乗り込む事となった。
イリーナは万一に備えて街の近くに待機し、ソレーヌからの報告を待つ事となった。
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