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ロマリア帝国事件編
ミリアム・ヴェルッティ
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一ヶ月前のキルス歴一〇九五年十月。
モニカはハーフェンにいる時からドナウゼンについて調べていた。
ここ最近ドナウゼンで日々人が消えて行くという事件の情報を入手していたからだ。
しかもいなくなるのはネープ民族の女性のみで、イアル民族や他の民族が行方不明になった事件は一つも見当たらなかった。
行方不明になった人たちがすべてギアラエ近隣で消息を絶っている。
「おかしいと思わぬか。行方不明になるのはネープ民族の女性ばかり。私はギアラエの鉱山と何らかの関連があると見ているのだが」
モニカがオスカーに相談するとオスカーもモニカの推測に同意した。
「推測の域でしかないが、何者かがネープ民族を拐っていったという可能性も十分にある」
「内密に捜査を進めようと思うのだが。ルーファスの息が掛かっているとなると厄介だな」
「いや、ルーファスは直接関与はしていまい。そういった鉱山都市があるという事を認知しているだけだ。やりたければ勝手にやれという態度だ。仮に殲滅させても知った事ではないという程度であろう。ここは調べてみるか」
「よし、私が調べよう」
こうしてモニカは十人の偵察隊をドナウゼンへ出向させ、ギアラエ鉱山都市の内情を調べる事となった。
ソレーヌが夢で見た幼馴染の友人。
ミリアム・ヴェルッティはザラメスで生活を送っていた。
(ソレーヌ、結局あなたは会いに来てくれなかった。。新しい村で新しい友達が出来たらもう私の事は忘れてしまったんだろうね)
ミリアムはソレーヌを恨んではいなかった。
むしろそれが当然だと思う事にして来た。
特別仲が良かった訳じゃないとはソレーヌの思い出であってミリアムはそうではなかった。
ミリアムにとってソレーヌは唯一の友達であったからだ。
ソレーヌが新しい村へと旅立ってからミリアムはまるで心にポッカリと穴があいてしまったようになり、しばらくは家の中で塞ぎ込む生活をしていた。
それから十年の月日が流れてソレーヌとの別れの寂しさからも解放され、家族と共に平穏に暮らしていたミリアムに悲劇が訪れた。
ミリアムの村は数人のユージット民族が住んでいるのを報告しなかったという理由だけで、ルーファス法による弾圧処置が行われた。
ミリアムはたまたま買い物を頼まれて家を留守にしていたので助かったが、両親を弾圧兵士たちに斬り殺されてしまった。
彼女も両親もユージット民族であったからだ。
厳密に言えば、父がユージット民族で母はネープ民族であった。
ミリアムには母のネープ民族の血が受け継がれているため青い瞳をしている。
ミリアムは家に入ろうとしたところを近くにいた人たちから止められて、処刑を終えて家から出てきた兵士と隊長を遠くから顔だけ確認し、特に兵士たちに気丈高で命令していた隊長の顔を凝視し、あいつの顔は絶対忘れないと復讐を誓った。
当時十五歳を少し超えたばかりの彼女は、それから三年ほどは両親と仲の良かった近所の夫婦の家で過ごしていたが、いつまでもお世話になっている訳にもいかず、夫婦にお礼と別れを告げて両親を処刑した人物への復讐を晴らすためザラメス自由都市へ移動した。
ザラメスはロマリア帝国とタスタニア王国の中間にある地域で、両国は有事の際にもここを通り抜け禁止、戦闘も禁止となっていた。
自由都市なのでロマリア帝国とタスタニア王国の一般人だけでなく兵士たちも武器の買い物のためにここを訪れるが、両国の兵士がたとえ街中で顔を合わせても一切の揉め事は禁止で、違反した場合は双方共に即処刑という厳しい規制があった。
そのため、いろんな人種や旅人が往来して一代商業都市として発展し、情報の飛び交う街としても有名であった。
ミリアムは居酒屋で働きながら、店に来る客から帝国各都市の在中軍に関する情報集めをおこ
なっていった。
その中にミリアムの村を襲い、両親を惨殺した役人が必ず居ると睨んだからである。
モニカはハーフェンにいる時からドナウゼンについて調べていた。
ここ最近ドナウゼンで日々人が消えて行くという事件の情報を入手していたからだ。
しかもいなくなるのはネープ民族の女性のみで、イアル民族や他の民族が行方不明になった事件は一つも見当たらなかった。
行方不明になった人たちがすべてギアラエ近隣で消息を絶っている。
「おかしいと思わぬか。行方不明になるのはネープ民族の女性ばかり。私はギアラエの鉱山と何らかの関連があると見ているのだが」
モニカがオスカーに相談するとオスカーもモニカの推測に同意した。
「推測の域でしかないが、何者かがネープ民族を拐っていったという可能性も十分にある」
「内密に捜査を進めようと思うのだが。ルーファスの息が掛かっているとなると厄介だな」
「いや、ルーファスは直接関与はしていまい。そういった鉱山都市があるという事を認知しているだけだ。やりたければ勝手にやれという態度だ。仮に殲滅させても知った事ではないという程度であろう。ここは調べてみるか」
「よし、私が調べよう」
こうしてモニカは十人の偵察隊をドナウゼンへ出向させ、ギアラエ鉱山都市の内情を調べる事となった。
ソレーヌが夢で見た幼馴染の友人。
ミリアム・ヴェルッティはザラメスで生活を送っていた。
(ソレーヌ、結局あなたは会いに来てくれなかった。。新しい村で新しい友達が出来たらもう私の事は忘れてしまったんだろうね)
ミリアムはソレーヌを恨んではいなかった。
むしろそれが当然だと思う事にして来た。
特別仲が良かった訳じゃないとはソレーヌの思い出であってミリアムはそうではなかった。
ミリアムにとってソレーヌは唯一の友達であったからだ。
ソレーヌが新しい村へと旅立ってからミリアムはまるで心にポッカリと穴があいてしまったようになり、しばらくは家の中で塞ぎ込む生活をしていた。
それから十年の月日が流れてソレーヌとの別れの寂しさからも解放され、家族と共に平穏に暮らしていたミリアムに悲劇が訪れた。
ミリアムの村は数人のユージット民族が住んでいるのを報告しなかったという理由だけで、ルーファス法による弾圧処置が行われた。
ミリアムはたまたま買い物を頼まれて家を留守にしていたので助かったが、両親を弾圧兵士たちに斬り殺されてしまった。
彼女も両親もユージット民族であったからだ。
厳密に言えば、父がユージット民族で母はネープ民族であった。
ミリアムには母のネープ民族の血が受け継がれているため青い瞳をしている。
ミリアムは家に入ろうとしたところを近くにいた人たちから止められて、処刑を終えて家から出てきた兵士と隊長を遠くから顔だけ確認し、特に兵士たちに気丈高で命令していた隊長の顔を凝視し、あいつの顔は絶対忘れないと復讐を誓った。
当時十五歳を少し超えたばかりの彼女は、それから三年ほどは両親と仲の良かった近所の夫婦の家で過ごしていたが、いつまでもお世話になっている訳にもいかず、夫婦にお礼と別れを告げて両親を処刑した人物への復讐を晴らすためザラメス自由都市へ移動した。
ザラメスはロマリア帝国とタスタニア王国の中間にある地域で、両国は有事の際にもここを通り抜け禁止、戦闘も禁止となっていた。
自由都市なのでロマリア帝国とタスタニア王国の一般人だけでなく兵士たちも武器の買い物のためにここを訪れるが、両国の兵士がたとえ街中で顔を合わせても一切の揉め事は禁止で、違反した場合は双方共に即処刑という厳しい規制があった。
そのため、いろんな人種や旅人が往来して一代商業都市として発展し、情報の飛び交う街としても有名であった。
ミリアムは居酒屋で働きながら、店に来る客から帝国各都市の在中軍に関する情報集めをおこ
なっていった。
その中にミリアムの村を襲い、両親を惨殺した役人が必ず居ると睨んだからである。
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