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第二章 巣立ち編
逆手に取るか見破るか
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一方でソフィアがこの情報を掴む。
「本当にブラウゼンに病人が増えているのか?」
ソフィアは前回の一件から情報を鵜呑みにせずに十分に解析するようになっていた。
「自分の情報網をフルに活用して、真意のほどを暴いてやる」
ティファは山賊たち、強いて言えばソフィアの情報網が商人と旅人が主である事を掴んでいた。
ならばこちらは軍をフル活用して、病人が増えているという偽情報をばら撒く。
ソフィアは次々と入ってくる情報からどれご本当なのかを選別していたが、ある日を境にその傾向が変化していった。
「ブラウゼンで病人が増えているなんて嘘ですよ。そう噂を流して山賊が罠に嵌められて出て来ないうちに輸送部隊を無事にブラウゼンへ到着させるようにしているんです」
「それは確かな情報なんだろうな?」
「もちろんですとも。初めのうちこそ偽情報のためか街に出歩く人を減らしたりしてましたが、いつまでも偽の命令では人々を抑えきれなかったようで、今ではみんな普通に出歩いています。お疑いならブラウゼンに人を差し向けて確認して頂いてもいいですよ」
自信満々に言う商人の言葉にソフィアは確認のため部下を三人ほど旅人に変装させて潜り込ませた。
その結果、ブラウゼンは平常そのもの。
病気が蔓延しているような様子はまったくないとの報告であった。
これを聞いたソフィアはついに本情報を掴んだぞとぐっと拳を握りしめた。
「よし。相手の偽情報を見破ったぞ。危うく騙されて相手の思う壺になってたところだった」
ソフィアは自身の情報情網から次の出発日も掴んでいた。
「次は十一月二日にアンダーラインから出発する予定だそうですよ」
「またアンダーラインか。囮部隊じゃないだろうな?」
「迂回路に囮部隊を向けるという情報もあります」
ソフィアはどちらが本当の情報なのかを模索していた。
二度同じ手を使うのか、それとも今回は本当にアンダーラインから来るのか。
「兵を二分して両方とも襲えばいいんじゃないか?」
ロビーがそう進言したが、三十人しかいない人員で二分したら十五人になってしまう。
相手は輸送部隊とはいえ五十人。
人数的にも心許ないし一歩間違えたら各個撃破されてしまう。
ソフィアは商人たちに金品をばら撒いて、さらに詳しく調べた者には追加で礼を出すという事までして必死に情報収集を行った。
「今度は騙されるものか。正攻法で来るか、逆手に取って来るか。二つに一つだ」
念には念を入れ、十数人もの商人や旅人からの情報を確認したが、結果はアンダーラインから本隊を出すという当初の情報通りだった。
相手に情報収集に優れた人物がいるなら、自分の情報網を駆使してこちらの意図を見破ろうとする。
その結果それが本当とわかったら襲ってくる可能性は高い。
何故なら山賊たちは生きるために食糧を確保しなければならないから。
略奪頼りに生活してるなら襲って来るか降伏するかしか彼らに生きる道はない。
「そこで素直に降伏してくれれば楽でいいんだけどね」
「その可能性はまずないでしょうな」
輸送部隊隊長の言葉にティファもうなずく。
山賊退治のためにティファが立てた作戦はおおよそ次の四点であった。
一、積み荷に兵を潜ませておいて、山賊が出たと同時に伏せていた兵を繰り出す。
二、迂回路に回った囮部隊は丘陵地帯を越えて後方に回り込み、山賊たちの退路をふさぎ、本隊と連携して挟撃する。
三、囮部隊に丘陵越えと同時に平野部にも兵を潜ませる。
これは少人数で構わない。旗を立ててここに伏兵が潜んでいると見せかければ山賊たちは三方向から囲まれたと思い込む。
四、最後の手段でオルジュ湖に飛び込んで逃げる事を予測し、ボートを数隻準備してそれに対応出来るようにしておく。
ひと通りを輸送部隊と警備兵士たちに説明し終えると、輸送部隊の積み荷の中に兵士たちを潜伏させてアンダーラインと迂回路の両方から二手に別れて出発させた。
山賊たちがアンダーラインを通る部隊を本隊と目処を付けて襲撃して来たところに、迂回路部隊が丘陵越えをしてアンダーラインの襲撃予想時点の背後に回る。
これで山賊たちを挟撃する作戦であった。
ベンタインから見て右側はオルジュ湖。
前後と丘陵地帯を包囲するように挟撃されたら、オルジュ湖を泳いで逃げる以外に逃げ場はない。
そう、泳いで逃げる以外は。
「この状況、まるでハンニバルのトラシメヌス河畔の戦いの再現みたい。何か不思議な気分だな」
ティファはまるで自分が過去の歴史の中にいるような感覚であった。
偶然だが、このオルジュ湖畔の地形はハンニバルのトラシメヌス河畔の戦いの地形と類似していた。
しかし状況はまったく真逆。
歴史では湖畔を進行するローマ軍に身を潜めていたハンニバルのカルタゴ兵が包囲網を敷くように襲いかかり、三万人のローマ軍兵士たちは三時間足らずでこの世から消え失せた。
今回はアンダーラインを進行するベンタインの輸送部隊に身を伏せている山賊が襲いかかろうとしている。
ローマ軍はハンニバルが兵を潜めている事をまったく予想すらしてなかった。
夜に湖の対岸に見えたカルタゴ陣営の篝火を見て、ローマ軍はカルタゴ軍は遥か前方にいると錯覚させられ、追撃してくるように誘き寄せられた。
さらに霧のために視界が悪かった。
これらが重なって対応出来ず全滅した。
だが、ティファたちは相手が身を潜めているのも攻めて来るのもわかっている。
視界も良好である。
「正攻法でいくか逆手に取るか二つに一つ。でもそれは輸送部隊の話し。山賊退治に兵を動かすのは正攻法だよ」
「本当にブラウゼンに病人が増えているのか?」
ソフィアは前回の一件から情報を鵜呑みにせずに十分に解析するようになっていた。
「自分の情報網をフルに活用して、真意のほどを暴いてやる」
ティファは山賊たち、強いて言えばソフィアの情報網が商人と旅人が主である事を掴んでいた。
ならばこちらは軍をフル活用して、病人が増えているという偽情報をばら撒く。
ソフィアは次々と入ってくる情報からどれご本当なのかを選別していたが、ある日を境にその傾向が変化していった。
「ブラウゼンで病人が増えているなんて嘘ですよ。そう噂を流して山賊が罠に嵌められて出て来ないうちに輸送部隊を無事にブラウゼンへ到着させるようにしているんです」
「それは確かな情報なんだろうな?」
「もちろんですとも。初めのうちこそ偽情報のためか街に出歩く人を減らしたりしてましたが、いつまでも偽の命令では人々を抑えきれなかったようで、今ではみんな普通に出歩いています。お疑いならブラウゼンに人を差し向けて確認して頂いてもいいですよ」
自信満々に言う商人の言葉にソフィアは確認のため部下を三人ほど旅人に変装させて潜り込ませた。
その結果、ブラウゼンは平常そのもの。
病気が蔓延しているような様子はまったくないとの報告であった。
これを聞いたソフィアはついに本情報を掴んだぞとぐっと拳を握りしめた。
「よし。相手の偽情報を見破ったぞ。危うく騙されて相手の思う壺になってたところだった」
ソフィアは自身の情報情網から次の出発日も掴んでいた。
「次は十一月二日にアンダーラインから出発する予定だそうですよ」
「またアンダーラインか。囮部隊じゃないだろうな?」
「迂回路に囮部隊を向けるという情報もあります」
ソフィアはどちらが本当の情報なのかを模索していた。
二度同じ手を使うのか、それとも今回は本当にアンダーラインから来るのか。
「兵を二分して両方とも襲えばいいんじゃないか?」
ロビーがそう進言したが、三十人しかいない人員で二分したら十五人になってしまう。
相手は輸送部隊とはいえ五十人。
人数的にも心許ないし一歩間違えたら各個撃破されてしまう。
ソフィアは商人たちに金品をばら撒いて、さらに詳しく調べた者には追加で礼を出すという事までして必死に情報収集を行った。
「今度は騙されるものか。正攻法で来るか、逆手に取って来るか。二つに一つだ」
念には念を入れ、十数人もの商人や旅人からの情報を確認したが、結果はアンダーラインから本隊を出すという当初の情報通りだった。
相手に情報収集に優れた人物がいるなら、自分の情報網を駆使してこちらの意図を見破ろうとする。
その結果それが本当とわかったら襲ってくる可能性は高い。
何故なら山賊たちは生きるために食糧を確保しなければならないから。
略奪頼りに生活してるなら襲って来るか降伏するかしか彼らに生きる道はない。
「そこで素直に降伏してくれれば楽でいいんだけどね」
「その可能性はまずないでしょうな」
輸送部隊隊長の言葉にティファもうなずく。
山賊退治のためにティファが立てた作戦はおおよそ次の四点であった。
一、積み荷に兵を潜ませておいて、山賊が出たと同時に伏せていた兵を繰り出す。
二、迂回路に回った囮部隊は丘陵地帯を越えて後方に回り込み、山賊たちの退路をふさぎ、本隊と連携して挟撃する。
三、囮部隊に丘陵越えと同時に平野部にも兵を潜ませる。
これは少人数で構わない。旗を立ててここに伏兵が潜んでいると見せかければ山賊たちは三方向から囲まれたと思い込む。
四、最後の手段でオルジュ湖に飛び込んで逃げる事を予測し、ボートを数隻準備してそれに対応出来るようにしておく。
ひと通りを輸送部隊と警備兵士たちに説明し終えると、輸送部隊の積み荷の中に兵士たちを潜伏させてアンダーラインと迂回路の両方から二手に別れて出発させた。
山賊たちがアンダーラインを通る部隊を本隊と目処を付けて襲撃して来たところに、迂回路部隊が丘陵越えをしてアンダーラインの襲撃予想時点の背後に回る。
これで山賊たちを挟撃する作戦であった。
ベンタインから見て右側はオルジュ湖。
前後と丘陵地帯を包囲するように挟撃されたら、オルジュ湖を泳いで逃げる以外に逃げ場はない。
そう、泳いで逃げる以外は。
「この状況、まるでハンニバルのトラシメヌス河畔の戦いの再現みたい。何か不思議な気分だな」
ティファはまるで自分が過去の歴史の中にいるような感覚であった。
偶然だが、このオルジュ湖畔の地形はハンニバルのトラシメヌス河畔の戦いの地形と類似していた。
しかし状況はまったく真逆。
歴史では湖畔を進行するローマ軍に身を潜めていたハンニバルのカルタゴ兵が包囲網を敷くように襲いかかり、三万人のローマ軍兵士たちは三時間足らずでこの世から消え失せた。
今回はアンダーラインを進行するベンタインの輸送部隊に身を伏せている山賊が襲いかかろうとしている。
ローマ軍はハンニバルが兵を潜めている事をまったく予想すらしてなかった。
夜に湖の対岸に見えたカルタゴ陣営の篝火を見て、ローマ軍はカルタゴ軍は遥か前方にいると錯覚させられ、追撃してくるように誘き寄せられた。
さらに霧のために視界が悪かった。
これらが重なって対応出来ず全滅した。
だが、ティファたちは相手が身を潜めているのも攻めて来るのもわかっている。
視界も良好である。
「正攻法でいくか逆手に取るか二つに一つ。でもそれは輸送部隊の話し。山賊退治に兵を動かすのは正攻法だよ」
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