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第一章 士官学校時代編
幼少期の追憶 後編
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戦争の終わらせ方をどうするかを考えた場合、和平交渉での解決というのは戦線が膠着状態になっている現状においては可能性はほとんどないと言っていい。
状況を打破する「何か」が無ければ厳しいとティファは考えていた。
やはりある程度の進撃と相手国土の占拠。
戦術的な勝利の積み重ねで有利な状況に持っていっての和平交渉。
現状これが一番の近道である事がもどかしい思いも当然ある。
だが急がば回れというように、遠回りに見えてもその道が一番近道なのだ。
ティファは現状ロマリア帝国とタスタニアの国土比は商業自治区であるザラメスを除くと五対三であるが、もしルンベルク要塞都市をタスタニアが占領する事が出来たら四対四と対等になる。和平の道が開けるとしたら最低限この対等条件にならないと厳しいと考えていた。
「ティファもやっぱりそう考えていたんだね。そう、まずはルンベルク要塞陥落させて、皇帝ルーファスが和平の席に着くかなんだけど。あの悪皇帝が和平交渉に応じるとは思えないって国王も考えていらっしゃるからルンベルクからさらにもう一つか二つ先の都市まで奪取出来ないと終戦は厳しいと思うな」
パトリシアは口には出さなかったが、現状打破の切り札となるのかティファだと考えていた。
そう遠くない将来ティファが前線で戦うようになったら自分は全力でそれをバックアップつもりであった。
「ティファ今日は楽しかった。ありがとう。ベンタインで頑張ってね。またいつか会えるといいね」
「こちらこそ、久しぶりに会えて嬉しかった、明日から頑張れるよ。パトリシアも元気でね」
久しぶりの再会を楽しく過ごしてティファは家路に着いた。
一方のパトリシアはティファと別れた後、オルジュの教会にある人物と会いにやってきた。
シスターアンジェラことアンジェラ・メアリー・シャーウッドである。
普段は教会の神父としてシスターアンジェラの名前で通っている。
「こんばんは。シスター居る?」
「パトリシアさん、こんばんは。はい。おりますのでいま呼んできますね」
そう言ってパトリシアを出迎えてくれたのはいつものようにジェニファーであった
ジェニファー・フォン・バイヤーはリディアとカリナに次ぐ年長者で他の年少の子達のお姉さん役でもあった。
来客応対も出来るしっかり者であったので、アンジェラもついつい用を頼んでしまう賢い子だ。
そのジェニファーに呼ばれてアンジェラが出てきた。
「これは、パトリシアさん。今日はどんな御用で?」
「いや、特に用と言うほどでもないんだけど、近くに来たからティファの事だけお願いにと思ってね。明日からベンタインに出向になったんだ。そう遠くないうちに正規軍に加入すると思うからティファが加入したら影で援助してあげて」
「かしこまりました。ティファさんが正式に軍に加入された際にはお力添えを約束致しましょう」
シスター・アンジェラは神父としての表向きの顔とタスタニア正規軍に有望な兵士を送り込む仲介役としての顔も持っていた。
彼女は両親を幼くして亡くしていたが、元はロマリア帝国の出身で皇帝ルーファスの悪政によって放浪のすえタスタニアにたどり着いた人であったから、タスタニアに恩義を感じロマリア帝国を倒す事を悲願としている人物であった。
「パトリシアさん、私も紹介したい教え子がいるのですが」
「アンジェラの教え子なら喜んで会うよ」
「マリア、こちらへ」
マリアと呼ばれた女性騎士はキリッと引き締まった表情にまだ若いが雰囲気のある人物で、パトリシアはひと目みて「この子は出来る」と直感した。
「マリア、パトリシアさんに自己紹介を」
「マリア・フォン・エアハルトと申します。どうぞよろしく申し上げます」
「私はパトリシア・フォン・シュトリツェル。こちらこそよろしくお願いします」
「マリアは帝国出身のミュラー将軍の弟子でもあり剣の実力は私が保証するわ。今はこの教会が主宰している学校の生徒として騎士の修行中だけど、この子もいずれブラウゼンに行く事になるから、ティファさんの補佐役についてもらっても構わないですか?」
パトリシアはこのマリアという子がひと目見て気に入ったので異存はなかった。
(ミュラー将軍の弟子?そう言えばティファの妹のレイラも将軍の弟子だったわね)
「マリアさんはミュラー将軍のお弟子さんだったの?じゃあレイラも知っているかな?」
「はい、レイラは同じ師を持つ騎士同士で、切磋琢磨しお互い認め合っている仲です」
「ならティファも知っているのね。ブラウゼンでティファの補佐をよろしくね」
「ティファとは私も以前より一緒に仕事がしたいと思っておりましたので願ってもいない事で感謝します」
マリアはティファやレイラが通っている騎士学校とは別のアンジェラが主催する学校の生徒であったが、レイラとは同門のよきライバルとして腕を磨きあった仲であった。
口数も少なく普段はあまり集団行動を取らない孤高のタイプで、常に礼儀正しく任務を確実にこなすだけでなく自らの判断で動ける柔軟さも兼ね備え、武力も桁外れの強さであったので、後年はティファの信用も厚く戦場においては常に先鋒を任されるタスタニアを代表する騎士となっていった。
状況を打破する「何か」が無ければ厳しいとティファは考えていた。
やはりある程度の進撃と相手国土の占拠。
戦術的な勝利の積み重ねで有利な状況に持っていっての和平交渉。
現状これが一番の近道である事がもどかしい思いも当然ある。
だが急がば回れというように、遠回りに見えてもその道が一番近道なのだ。
ティファは現状ロマリア帝国とタスタニアの国土比は商業自治区であるザラメスを除くと五対三であるが、もしルンベルク要塞都市をタスタニアが占領する事が出来たら四対四と対等になる。和平の道が開けるとしたら最低限この対等条件にならないと厳しいと考えていた。
「ティファもやっぱりそう考えていたんだね。そう、まずはルンベルク要塞陥落させて、皇帝ルーファスが和平の席に着くかなんだけど。あの悪皇帝が和平交渉に応じるとは思えないって国王も考えていらっしゃるからルンベルクからさらにもう一つか二つ先の都市まで奪取出来ないと終戦は厳しいと思うな」
パトリシアは口には出さなかったが、現状打破の切り札となるのかティファだと考えていた。
そう遠くない将来ティファが前線で戦うようになったら自分は全力でそれをバックアップつもりであった。
「ティファ今日は楽しかった。ありがとう。ベンタインで頑張ってね。またいつか会えるといいね」
「こちらこそ、久しぶりに会えて嬉しかった、明日から頑張れるよ。パトリシアも元気でね」
久しぶりの再会を楽しく過ごしてティファは家路に着いた。
一方のパトリシアはティファと別れた後、オルジュの教会にある人物と会いにやってきた。
シスターアンジェラことアンジェラ・メアリー・シャーウッドである。
普段は教会の神父としてシスターアンジェラの名前で通っている。
「こんばんは。シスター居る?」
「パトリシアさん、こんばんは。はい。おりますのでいま呼んできますね」
そう言ってパトリシアを出迎えてくれたのはいつものようにジェニファーであった
ジェニファー・フォン・バイヤーはリディアとカリナに次ぐ年長者で他の年少の子達のお姉さん役でもあった。
来客応対も出来るしっかり者であったので、アンジェラもついつい用を頼んでしまう賢い子だ。
そのジェニファーに呼ばれてアンジェラが出てきた。
「これは、パトリシアさん。今日はどんな御用で?」
「いや、特に用と言うほどでもないんだけど、近くに来たからティファの事だけお願いにと思ってね。明日からベンタインに出向になったんだ。そう遠くないうちに正規軍に加入すると思うからティファが加入したら影で援助してあげて」
「かしこまりました。ティファさんが正式に軍に加入された際にはお力添えを約束致しましょう」
シスター・アンジェラは神父としての表向きの顔とタスタニア正規軍に有望な兵士を送り込む仲介役としての顔も持っていた。
彼女は両親を幼くして亡くしていたが、元はロマリア帝国の出身で皇帝ルーファスの悪政によって放浪のすえタスタニアにたどり着いた人であったから、タスタニアに恩義を感じロマリア帝国を倒す事を悲願としている人物であった。
「パトリシアさん、私も紹介したい教え子がいるのですが」
「アンジェラの教え子なら喜んで会うよ」
「マリア、こちらへ」
マリアと呼ばれた女性騎士はキリッと引き締まった表情にまだ若いが雰囲気のある人物で、パトリシアはひと目みて「この子は出来る」と直感した。
「マリア、パトリシアさんに自己紹介を」
「マリア・フォン・エアハルトと申します。どうぞよろしく申し上げます」
「私はパトリシア・フォン・シュトリツェル。こちらこそよろしくお願いします」
「マリアは帝国出身のミュラー将軍の弟子でもあり剣の実力は私が保証するわ。今はこの教会が主宰している学校の生徒として騎士の修行中だけど、この子もいずれブラウゼンに行く事になるから、ティファさんの補佐役についてもらっても構わないですか?」
パトリシアはこのマリアという子がひと目見て気に入ったので異存はなかった。
(ミュラー将軍の弟子?そう言えばティファの妹のレイラも将軍の弟子だったわね)
「マリアさんはミュラー将軍のお弟子さんだったの?じゃあレイラも知っているかな?」
「はい、レイラは同じ師を持つ騎士同士で、切磋琢磨しお互い認め合っている仲です」
「ならティファも知っているのね。ブラウゼンでティファの補佐をよろしくね」
「ティファとは私も以前より一緒に仕事がしたいと思っておりましたので願ってもいない事で感謝します」
マリアはティファやレイラが通っている騎士学校とは別のアンジェラが主催する学校の生徒であったが、レイラとは同門のよきライバルとして腕を磨きあった仲であった。
口数も少なく普段はあまり集団行動を取らない孤高のタイプで、常に礼儀正しく任務を確実にこなすだけでなく自らの判断で動ける柔軟さも兼ね備え、武力も桁外れの強さであったので、後年はティファの信用も厚く戦場においては常に先鋒を任されるタスタニアを代表する騎士となっていった。
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