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第一章 士官学校時代編
幼少期の追憶 前編
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ティファが十歳の頃であった。
ミュラー将軍は妹のレイラと一緒にティファにも剣を教えようと手解きで教えんだが、ある日ため息混じりに母親であるエミリーにこう漏らした。
「エミリーさん、誠に言いにくいがティファニーは剣の才能に関してはほぼ無いと言わざるを得ませんな。。これ以上教え込んだところで自分一人の身を守るレベルにすら到達は叶わないでしょう」
エミリーはミュラーの言葉に苦笑してこう答えた。
「ティファニーは小さな頃から本を読んで聞かせるのが好きな子だったので、剣よりも学問を学んだ方が性に合っているのかも知れませんね。まあ、見込みのないという事を早めにわかって良かったと思いましょう」
エミリーはティファを呼び寄せた。
「ティファニー、あなたには剣の才能はないとミュラー将軍から指摘されました。これ以上やっても無意味な剣術を学ぶ必要はないから、剣はレイラに任せてあなたは自分の好きな学問を学びなさい」
ティファニーは母にそう言われて目を輝かせた。
「お母さんいいの?やった!これで嫌な剣の稽古をしなくて済む」
エミリーは呆気に取られた。
てっきりダメ出しされて泣きわめくと思い、どうやって諌めようかと考えていたのに本人はその気も知らず大喜びである。
「ティファニーには最初から剣術は向いてなかったようね。それを見抜けなかった私も悪かった」
エミリーはミュラーにある事を相談し、ミュラーは後日その返答をエミリーに返した。
「エミリーさん、宰相から許可が降りました。今日から早速オルジュにある国立図書館に自由に出入り出来ます」
「将軍、お手数をお掛け致しました」
「いや、この方がティファニーにとっていいならお安い御用ですよ」
ティファはミュラーに連れられてオルジュの図書館に入ると、そこは正確に数えられた事はないが一万数千にもおよぶ本が山ほど積まれた巨大な宮殿であった。
本以外にも事件や日常的な出来事をまとめた見聞書のような物もあり、その壮大な景観にティファは目を輝かせていた。
「ティファニー、ここにある本をいくらでも好きなだけ読むといい。わからないことがあればわしが教える」
「ミュラー将軍。ありがとうございます」
ティファは山のように積まれた本を一つ取っては読み、時には朝から夕方エミリーに促されるまで図書館に篭って本を読みまくった。
これが後にタスタニアの中心となっていった戦術家ティファニー・オブ・エヴァンスの出発点であった。
この時からティファには一つの疑問があった。
「平和を望むなら戦争を理解しなければならない」
この矛盾点である。
軍事力とは相手の脅威に対して対抗するための武器であり、戦争とは平和を手に入れるための手段である。
戦わずに平和を手にした国など歴史上存在しない。
この教訓に対してティファが思うのは「私とて一兵卒だから戦わずして話し合いで平和が手に入るなんて夢物語は口にするような事はない。だけど戦えば戦争は血と死の恐怖が入り乱れた地獄絵図。戦わずして済むなら絶対戦争は避けた方がいいに決まっている」という事であった。
そのためには国を守れる程度の軍事力は必要である。
「これを人間の身体に例えると、健康を維持するには病気の事を知っておかなければならないって自己解釈で考えてみているけど」
あくまでもティファの考え方だが、健康を維持するためには病気がどんなものかを知り、病気にならないような身体作りをする。
それでも病気にかかってしまったら、少しでも早く治す対策を行う。
病気が延々と続けば体力が奪われて最後は死に至ってしまう。
人間の身体と国家を同じように考えるのは極論だとわかっているが、平和を維持するためには戦争がどんなものかを知り、まずは相手に攻めいられない国力と軍事力を持ち戦争にならないための政治を行う。それでも戦わざるを得なくなった場合は和平の道を探りながら戦いを行いつつなるべく早期に決着をつける。
長引けば国は疲弊し戦力は削られていく。
ティファはそう考えていたのである。
そしていまタスタニアは戦わざるを得ない状況下で四年近く戦争を続けている。
弊害は明らかに出てきていて、兵を統率する将が決定的に不足している。
国の歴史も浅く人口もロマリア帝国の二十五万人に対してタスタニアはようやく十五万人に届こうかというところであった。
動員出来る兵力もロマリア帝国が二万人に対してタスタニアは志願兵を徴兵しても一万人が限界であった。
もちろん国家総動員で徴兵制を行えば成人男子のほとんどを兵士として動員出来るであろうが、両国とも現状そこまでおこなっていない。
だがこのまま戦いが長引けば資源や食糧が互角でも兵力差でタスタニアは徐々に追い込まれていくであろう。
ミュラー将軍は妹のレイラと一緒にティファにも剣を教えようと手解きで教えんだが、ある日ため息混じりに母親であるエミリーにこう漏らした。
「エミリーさん、誠に言いにくいがティファニーは剣の才能に関してはほぼ無いと言わざるを得ませんな。。これ以上教え込んだところで自分一人の身を守るレベルにすら到達は叶わないでしょう」
エミリーはミュラーの言葉に苦笑してこう答えた。
「ティファニーは小さな頃から本を読んで聞かせるのが好きな子だったので、剣よりも学問を学んだ方が性に合っているのかも知れませんね。まあ、見込みのないという事を早めにわかって良かったと思いましょう」
エミリーはティファを呼び寄せた。
「ティファニー、あなたには剣の才能はないとミュラー将軍から指摘されました。これ以上やっても無意味な剣術を学ぶ必要はないから、剣はレイラに任せてあなたは自分の好きな学問を学びなさい」
ティファニーは母にそう言われて目を輝かせた。
「お母さんいいの?やった!これで嫌な剣の稽古をしなくて済む」
エミリーは呆気に取られた。
てっきりダメ出しされて泣きわめくと思い、どうやって諌めようかと考えていたのに本人はその気も知らず大喜びである。
「ティファニーには最初から剣術は向いてなかったようね。それを見抜けなかった私も悪かった」
エミリーはミュラーにある事を相談し、ミュラーは後日その返答をエミリーに返した。
「エミリーさん、宰相から許可が降りました。今日から早速オルジュにある国立図書館に自由に出入り出来ます」
「将軍、お手数をお掛け致しました」
「いや、この方がティファニーにとっていいならお安い御用ですよ」
ティファはミュラーに連れられてオルジュの図書館に入ると、そこは正確に数えられた事はないが一万数千にもおよぶ本が山ほど積まれた巨大な宮殿であった。
本以外にも事件や日常的な出来事をまとめた見聞書のような物もあり、その壮大な景観にティファは目を輝かせていた。
「ティファニー、ここにある本をいくらでも好きなだけ読むといい。わからないことがあればわしが教える」
「ミュラー将軍。ありがとうございます」
ティファは山のように積まれた本を一つ取っては読み、時には朝から夕方エミリーに促されるまで図書館に篭って本を読みまくった。
これが後にタスタニアの中心となっていった戦術家ティファニー・オブ・エヴァンスの出発点であった。
この時からティファには一つの疑問があった。
「平和を望むなら戦争を理解しなければならない」
この矛盾点である。
軍事力とは相手の脅威に対して対抗するための武器であり、戦争とは平和を手に入れるための手段である。
戦わずに平和を手にした国など歴史上存在しない。
この教訓に対してティファが思うのは「私とて一兵卒だから戦わずして話し合いで平和が手に入るなんて夢物語は口にするような事はない。だけど戦えば戦争は血と死の恐怖が入り乱れた地獄絵図。戦わずして済むなら絶対戦争は避けた方がいいに決まっている」という事であった。
そのためには国を守れる程度の軍事力は必要である。
「これを人間の身体に例えると、健康を維持するには病気の事を知っておかなければならないって自己解釈で考えてみているけど」
あくまでもティファの考え方だが、健康を維持するためには病気がどんなものかを知り、病気にならないような身体作りをする。
それでも病気にかかってしまったら、少しでも早く治す対策を行う。
病気が延々と続けば体力が奪われて最後は死に至ってしまう。
人間の身体と国家を同じように考えるのは極論だとわかっているが、平和を維持するためには戦争がどんなものかを知り、まずは相手に攻めいられない国力と軍事力を持ち戦争にならないための政治を行う。それでも戦わざるを得なくなった場合は和平の道を探りながら戦いを行いつつなるべく早期に決着をつける。
長引けば国は疲弊し戦力は削られていく。
ティファはそう考えていたのである。
そしていまタスタニアは戦わざるを得ない状況下で四年近く戦争を続けている。
弊害は明らかに出てきていて、兵を統率する将が決定的に不足している。
国の歴史も浅く人口もロマリア帝国の二十五万人に対してタスタニアはようやく十五万人に届こうかというところであった。
動員出来る兵力もロマリア帝国が二万人に対してタスタニアは志願兵を徴兵しても一万人が限界であった。
もちろん国家総動員で徴兵制を行えば成人男子のほとんどを兵士として動員出来るであろうが、両国とも現状そこまでおこなっていない。
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