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第一章 士官学校時代編
オルジュ湖のコーヒハウス
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キルス歴一〇九五年も七月に入り、タスタニアに本格的な夏が到来した。
ティファはレジーナの誘いで卒業前最後の夏休みを過ごすため、オルジュ湖のほとりにある教会を訪れていた。
レジーナにこの教会の神父で孤児院の子供たちの面倒も見ているシスターアンジェラを紹介されてお互いに挨拶を交わした。
シスター・アンジェラもミュラー将軍と同じく元はロマリア帝国の人であったが、皇帝ルーファスの打ち立てた民族浄化法、いわゆる「ルーファス法」により家族を失い一人生き延びてこのタスタニアに行き着いたという経歴を持っていた。
アンジェラは教会のシスターとして布教活動をする一方で孤児院の母として孤児たちの面倒も見ていた。
さらにタスタニア正規軍の後見人としての顔も持っていた。
「初めまして。私はレジーナと同じ学校に通うティファニー・オブ・エヴァンスと申します。ティファって呼んでくれていいですよ」
「では早速ティファさんと呼ばせて頂きますね。ようこそお越し下さいました。私はこの教会のシスターでアンジェラ・メアリー・シャーウッドと申します。私もアンジェラと呼んて頂いていいですよ。どうぞよろしくお願い致します」
ここは教会の施設内に孤児院と宿泊施設もあって、レジーナとティファは夏の休息をここで楽しむ事にしたのだ。
レジーナがティファをここへ呼んだのは休暇をのんびり過ごせるのもあったが、自分が日頃から親交のあるシスターアンジェラを紹介したかったからで、二人が初めて顔合わせしたのもこの時であった。
ティファも士官学校を卒業すれば軍に配属されるため、レジーナはアンジェラと交友を結んだ方がいいとティファをアンジェラと会わせる事にしたのだ。
挨拶が終わるとレジーナが早速寝泊まりする部屋に案内してくれた。
教会の宿泊施設は部屋にはベットがあり、共同ではあるが風呂場やトイレも付いている立派な物であった。
教会は衛生面に非常に厳しかったため、洗面用具もちゃんと部屋に備えてあってティファにとっては快適と言っていい環境であった。
「何だか普段より贅沢してる感じ。部屋も広いし一人で占領しちゃっていいのかな」
ティファが笑いながらそう言うとレジーナも「ちょっとした贅沢だよね」と少しだが豪華な生活に嬉しそうであった。
広いと言っても現代でいう十五平方メートルほどであったが、それでもティファたちには十分過ぎるほどの広さであった。
「ティファ、シスターアンジェラはシスター以外にもタスタニア正規軍の後見人でもあるから今のうちから交友していくといいよ」
「そうなんだ。言っていいのかわからないけど、人を助けるのが仕事のシスターが人がたくさん死んでいく戦争を行う軍の後見人なんて相反する事をやっているのが不思議な感じ。それなりの理由があるんだろうけど」
「そうだよね、まあ人それぞれの事情があるんだろうから」
ティファの疑問にレジーナもそう答えるに留まった。
ティファより長い交友のあるレジーナもその辺の詳しい事情はアンジェラにあえて聞かないようにしていた。
アンジェラには家族を殺されて帝国から逃げ延びた過去があるのは周知の事であったからだ。
そんなある日のこと、レジーナはティファを誘ってオルジュ湖の街路樹を散策に出かける事にした。
夏のオルジュの街はカラッとしてはいるが暑さが厳しいのに対して、このオルジュ湖畔は日陰も多く涼しくて過ごしやすい気候であった。
同じオルジュでも都心部とこうも違うのかとティファはオルジュ湖畔の気候の良さに驚いた。
「風が涼しくて気持ちいいし、景色もいいね」
青空に湖の青と森林の緑のコントラストが鮮やかで彼方には山も見える。
湖畔にはタスタニア建国以前からの古い街があり、まるでお伽話の世界にでも入り込んだような魅力的な街並みと景色にティファはしばらく魅入っていた。
教会は街の一番奥に位置し、街と反対側には街路樹が湖畔に沿うように続いている。
二人は街路樹をしばらく歩いていると前方にある一軒の小屋が目に入った。
「レジーナあの小屋はなに?」
「小屋?本当だ、あんなところに小屋があったんだ。私こっちの方まで散策した事がなかったからな」
「ちょっと行ってみない?」
ティファに言われてレジーナもこの小屋が何の建物なのか調べてみようと二人で小屋へと向かった。
「普通の一軒家にも見えるけど、それにしてはちょっとおしゃれな感じもするね」
小屋の近くまで来てティファがそう言っていると小屋のドアが開いて中から女性が出てきた。
女性は外の掃除をするために出てきたようであったがティファたちの姿を見つけると声を掛けてきた。
「すみません、まだ開店準備中なんです。。」
「開店準備中?ここは何かのお店なんですか?」
「はい。コーヒーハウスです」
「コーヒーハウス!こんな眺めのいい場所でコーヒー飲んだらとても優雅な気分になれそう」
「出来たのはつい最近ですか?」
レジーナもここにコーヒーハウスがあったのは初めて知ったのでいつ頃から出来たのかを店主に聞いてみた。
「ここにお店を建てたのは二年ほど前です。コーヒーハウスって社交や情報交換の場で人混みの中で飲食するイメージですけど、私は訪れた人が落ち着いて時間を忘れくつろげる空間を提供したかったんです。それでここにお店を建てました」
店主の言葉を聞いて一人でゆっくり気ままにコーヒーが飲めるコーヒーハウスを探し求めていたティファは心が踊った。
「素晴らしいですね、私、こういう落ち着いた雰囲気でコーヒーが飲める場所を探し求めていたんです」
「そうだったのですか。せっかくいらしたのですからちょっと寄っていきませんか?まだ開店準備中ですけどコーヒーくらい出せますよ」
「本当に?いいんですか?」
「ええ。どうぞ、お入り下さい」
店主はにっこり笑いながらティファたちをお店に案内した。
店は天井が高く外から見たより広く感じる作りになっていた。木の温もりも感じられ、窓から湖が見える落ち着いた雰囲気だった
「オルジュの街のコーヒーハウスと全然違う」
ティファはすっかりこのお店が気に入ってしまった
「ここでは地元オルジュで取れた小麦粉や野菜を使った料理を提供しています、コーヒーだけじゃなく紅茶もありますし東洋のお茶も仕入れているんですよ」
女性はそういうとティファたちにテーブルの上で直接コーヒーをカップに注いでくれた。
「こんなに落ち着いてコーヒーが飲めるなんて街中じゃ考えられない。私ここがとても気に入りました。これからもお邪魔してよろしいですか?」
「もちろん。いつでもお気軽にお越しくださいね」
「私、ティファニー・オブ・エヴァンスと言います。オルジュの街のはずれにある家に妹と二人で暮らしています。いまは騎士学校で学んでいて夏季休みなので学友のレジーナとこの先の教会に宿泊してのんびりと休暇を楽しんでいます」
「私はレジーナ・フォン・ブライミュラーといいます。教会のシスターとは昔からの知り合いで、その縁もあって教会の孤児たちに剣術を教えています」
「私はエリカ・フォン・シュトラウプと言います。私はザラメスで商売するつもりでお店を建てる場所を探していたのですが、たまたま来たこの湖を見て一目で気に入りここにお店を建てることに決めたんです」
「素敵です。これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あ、そうそう、教会の孤児院の子供たちが二人よくここに来てくれるんですよ」
エリカがそう言うとレジーナは心当たりがあるのかピンと来たようであった。
「エリカさん、もしかしてその二人ってリディアとカリナですか?」
「ええ、そうです。二人ともここが気に入ってくれているみたいで頻繁に来てくれてますよ」
「レジーナ知ってるの?」
「ええ、シスターから頼まれて剣術と槍術の指導をしてる子たちだから。まあおてんばというか好奇心旺盛というか、元気なのはいいんだけど門限破りの常習犯でシスターも頭を抱えている子たちでね」
「面白い。その子たちに会ってみたいな」
「あの二人がこの店に来るならタイミングがよければ会うかも知れないね」
後にタスタニア正規軍に加わり、将来タスタニア軍の中心的存在となっていくリディアとカリナの二人であったが、このオルジュのコーヒーハウスではティファと顔を会わせる機会はなく、出会いは互いに軍に配属されてからであった。
「また是非いらして下さいね」
「ありがとうございます。開店前にお邪魔してすみませんでした」
お店を出たティファは教会の帰路レジーナにお礼を言った
「レジーナ今日はありがとう。おかけで素敵なお店を見つけられたよ」
「散策をしていいお店見つけて良かったね」
ティファは探し求めていたコーヒハウスが見つかった喜びも大きく、ここの店主であるエリカともこの日以来友人として親交を深めていった。
ティファはレジーナの誘いで卒業前最後の夏休みを過ごすため、オルジュ湖のほとりにある教会を訪れていた。
レジーナにこの教会の神父で孤児院の子供たちの面倒も見ているシスターアンジェラを紹介されてお互いに挨拶を交わした。
シスター・アンジェラもミュラー将軍と同じく元はロマリア帝国の人であったが、皇帝ルーファスの打ち立てた民族浄化法、いわゆる「ルーファス法」により家族を失い一人生き延びてこのタスタニアに行き着いたという経歴を持っていた。
アンジェラは教会のシスターとして布教活動をする一方で孤児院の母として孤児たちの面倒も見ていた。
さらにタスタニア正規軍の後見人としての顔も持っていた。
「初めまして。私はレジーナと同じ学校に通うティファニー・オブ・エヴァンスと申します。ティファって呼んでくれていいですよ」
「では早速ティファさんと呼ばせて頂きますね。ようこそお越し下さいました。私はこの教会のシスターでアンジェラ・メアリー・シャーウッドと申します。私もアンジェラと呼んて頂いていいですよ。どうぞよろしくお願い致します」
ここは教会の施設内に孤児院と宿泊施設もあって、レジーナとティファは夏の休息をここで楽しむ事にしたのだ。
レジーナがティファをここへ呼んだのは休暇をのんびり過ごせるのもあったが、自分が日頃から親交のあるシスターアンジェラを紹介したかったからで、二人が初めて顔合わせしたのもこの時であった。
ティファも士官学校を卒業すれば軍に配属されるため、レジーナはアンジェラと交友を結んだ方がいいとティファをアンジェラと会わせる事にしたのだ。
挨拶が終わるとレジーナが早速寝泊まりする部屋に案内してくれた。
教会の宿泊施設は部屋にはベットがあり、共同ではあるが風呂場やトイレも付いている立派な物であった。
教会は衛生面に非常に厳しかったため、洗面用具もちゃんと部屋に備えてあってティファにとっては快適と言っていい環境であった。
「何だか普段より贅沢してる感じ。部屋も広いし一人で占領しちゃっていいのかな」
ティファが笑いながらそう言うとレジーナも「ちょっとした贅沢だよね」と少しだが豪華な生活に嬉しそうであった。
広いと言っても現代でいう十五平方メートルほどであったが、それでもティファたちには十分過ぎるほどの広さであった。
「ティファ、シスターアンジェラはシスター以外にもタスタニア正規軍の後見人でもあるから今のうちから交友していくといいよ」
「そうなんだ。言っていいのかわからないけど、人を助けるのが仕事のシスターが人がたくさん死んでいく戦争を行う軍の後見人なんて相反する事をやっているのが不思議な感じ。それなりの理由があるんだろうけど」
「そうだよね、まあ人それぞれの事情があるんだろうから」
ティファの疑問にレジーナもそう答えるに留まった。
ティファより長い交友のあるレジーナもその辺の詳しい事情はアンジェラにあえて聞かないようにしていた。
アンジェラには家族を殺されて帝国から逃げ延びた過去があるのは周知の事であったからだ。
そんなある日のこと、レジーナはティファを誘ってオルジュ湖の街路樹を散策に出かける事にした。
夏のオルジュの街はカラッとしてはいるが暑さが厳しいのに対して、このオルジュ湖畔は日陰も多く涼しくて過ごしやすい気候であった。
同じオルジュでも都心部とこうも違うのかとティファはオルジュ湖畔の気候の良さに驚いた。
「風が涼しくて気持ちいいし、景色もいいね」
青空に湖の青と森林の緑のコントラストが鮮やかで彼方には山も見える。
湖畔にはタスタニア建国以前からの古い街があり、まるでお伽話の世界にでも入り込んだような魅力的な街並みと景色にティファはしばらく魅入っていた。
教会は街の一番奥に位置し、街と反対側には街路樹が湖畔に沿うように続いている。
二人は街路樹をしばらく歩いていると前方にある一軒の小屋が目に入った。
「レジーナあの小屋はなに?」
「小屋?本当だ、あんなところに小屋があったんだ。私こっちの方まで散策した事がなかったからな」
「ちょっと行ってみない?」
ティファに言われてレジーナもこの小屋が何の建物なのか調べてみようと二人で小屋へと向かった。
「普通の一軒家にも見えるけど、それにしてはちょっとおしゃれな感じもするね」
小屋の近くまで来てティファがそう言っていると小屋のドアが開いて中から女性が出てきた。
女性は外の掃除をするために出てきたようであったがティファたちの姿を見つけると声を掛けてきた。
「すみません、まだ開店準備中なんです。。」
「開店準備中?ここは何かのお店なんですか?」
「はい。コーヒーハウスです」
「コーヒーハウス!こんな眺めのいい場所でコーヒー飲んだらとても優雅な気分になれそう」
「出来たのはつい最近ですか?」
レジーナもここにコーヒーハウスがあったのは初めて知ったのでいつ頃から出来たのかを店主に聞いてみた。
「ここにお店を建てたのは二年ほど前です。コーヒーハウスって社交や情報交換の場で人混みの中で飲食するイメージですけど、私は訪れた人が落ち着いて時間を忘れくつろげる空間を提供したかったんです。それでここにお店を建てました」
店主の言葉を聞いて一人でゆっくり気ままにコーヒーが飲めるコーヒーハウスを探し求めていたティファは心が踊った。
「素晴らしいですね、私、こういう落ち着いた雰囲気でコーヒーが飲める場所を探し求めていたんです」
「そうだったのですか。せっかくいらしたのですからちょっと寄っていきませんか?まだ開店準備中ですけどコーヒーくらい出せますよ」
「本当に?いいんですか?」
「ええ。どうぞ、お入り下さい」
店主はにっこり笑いながらティファたちをお店に案内した。
店は天井が高く外から見たより広く感じる作りになっていた。木の温もりも感じられ、窓から湖が見える落ち着いた雰囲気だった
「オルジュの街のコーヒーハウスと全然違う」
ティファはすっかりこのお店が気に入ってしまった
「ここでは地元オルジュで取れた小麦粉や野菜を使った料理を提供しています、コーヒーだけじゃなく紅茶もありますし東洋のお茶も仕入れているんですよ」
女性はそういうとティファたちにテーブルの上で直接コーヒーをカップに注いでくれた。
「こんなに落ち着いてコーヒーが飲めるなんて街中じゃ考えられない。私ここがとても気に入りました。これからもお邪魔してよろしいですか?」
「もちろん。いつでもお気軽にお越しくださいね」
「私、ティファニー・オブ・エヴァンスと言います。オルジュの街のはずれにある家に妹と二人で暮らしています。いまは騎士学校で学んでいて夏季休みなので学友のレジーナとこの先の教会に宿泊してのんびりと休暇を楽しんでいます」
「私はレジーナ・フォン・ブライミュラーといいます。教会のシスターとは昔からの知り合いで、その縁もあって教会の孤児たちに剣術を教えています」
「私はエリカ・フォン・シュトラウプと言います。私はザラメスで商売するつもりでお店を建てる場所を探していたのですが、たまたま来たこの湖を見て一目で気に入りここにお店を建てることに決めたんです」
「素敵です。これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あ、そうそう、教会の孤児院の子供たちが二人よくここに来てくれるんですよ」
エリカがそう言うとレジーナは心当たりがあるのかピンと来たようであった。
「エリカさん、もしかしてその二人ってリディアとカリナですか?」
「ええ、そうです。二人ともここが気に入ってくれているみたいで頻繁に来てくれてますよ」
「レジーナ知ってるの?」
「ええ、シスターから頼まれて剣術と槍術の指導をしてる子たちだから。まあおてんばというか好奇心旺盛というか、元気なのはいいんだけど門限破りの常習犯でシスターも頭を抱えている子たちでね」
「面白い。その子たちに会ってみたいな」
「あの二人がこの店に来るならタイミングがよければ会うかも知れないね」
後にタスタニア正規軍に加わり、将来タスタニア軍の中心的存在となっていくリディアとカリナの二人であったが、このオルジュのコーヒーハウスではティファと顔を会わせる機会はなく、出会いは互いに軍に配属されてからであった。
「また是非いらして下さいね」
「ありがとうございます。開店前にお邪魔してすみませんでした」
お店を出たティファは教会の帰路レジーナにお礼を言った
「レジーナ今日はありがとう。おかけで素敵なお店を見つけられたよ」
「散策をしていいお店見つけて良かったね」
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